伝承館は何を伝承するのか~みなさんの声④

福島

 福島県内に今秋オープンした「東日本大震災・原子力災害伝承館」(伝承館)の「あるべき姿」を考えていきます。企画の狙いについては前の記事「企画のはじめに」をお読みください。

 議論の材料として、館内の展示フロアに掲示されている「文章」をアップしてきました。以下のページにまとめていますので、ご覧ください。

→ 伝承館は何を伝承するのか(展示資料の記録一覧)

 ブログ読者の方からいただいたご意見、ご指摘を紹介しています。四回目は、福島市在住の50代、A.Sさんのコメントを紹介します。

 A.Sさんは実際に伝承館を訪れた時の感想を文章にして送ってくれました。ぜひお読みください!


【A.Sさんからいただいたコメント】

題名: 自分のペースで見学したいなあ

秋口に伝承館を訪れました。震災・原子力災害の記憶をとどめるアーカイブ施設は是非とも必要であり、開館したことに肯定的な気持ちで向かいました。

 しかし、見学後もやもやが残りました。まあこんなもんだろうと自分を押さえ込むも、払拭できませんでしたので、本企画の趣旨には沿ってないと自覚しつつも、以下、自分なりのもやもやポイントを投稿させて頂きます。

 入館料大人600円。そもそもお金を取って見せる施設だろうか、維持費を徴収するにしても高すぎるなあともやもや。きっと見学後は料金に納得できることを期待しつつ展示室へ進みました。しかし、すぐには入れてもらえません。オープニングから順路が決まっているため、次の見学開始時刻まで待たなければならないのです。ハナから自分のペースで見学できない仕組みに、またも、もやもや。ここには、ひとかたならぬ思いを持って訪れる人も少なくないでしょう。その中には、自分の時間で自分の呼吸で展示物と対したいと思う人もいるのではないだろうかなどと思ってますと、やがて、入室の時刻となりました。扉の向こうには、広い吹き抜けのスペースがあり、前方には大きなスクリーンがありました。案内に従ってベンチに腰掛けますと、映像と音声が始まりました。ナレーションの言葉の端々に引っかかりを感じながらも、西田敏行の語りに何だか昔話を聞いたみたいな気分になりました。もやもやしながら映像が終わり、移動を促されました。螺旋状の展示スペースへ進み、そこで展示物をじっくり見ていましたら、気づくと、どんどん集団に遅れる事態となっています。気が急いて、ここでも自分のペースでは見られませんでした。結局、ここから先の展示は全てが、映像的なものが既に始まっているなどの半端な状態での見学となってしまいました。特に残念だったのは、語り部さんのお話を最初から聞けなかったことです。ブースにたどり着いたときは、語り部さんの話はだいぶ進んでいました。始まりの時間を知っていればと思いましたが、後の祭りでした。

 以上が、とりあえずのもやもやポイントです。料金を払って意図されたとおりに展示物を見させられる、寄り道、道草はダメですよと見張られながら見学したというような印象です。

何だか、伝承館から受け取る個人の思いまでも“自分勝手はダメですよ。意図したとおりに思ってください。”といわれているような感じがしました。


【ウネリウネラから一言】

 展示資料の詳細ではなく、施設を見学したときの全体的な感想を書いてくださいました。もちろん、「本企画の趣旨には沿ってない」ことは全くありません。バッチリ沿っております。ありがとうございます。

 文章を拝見し、「そうだった、そうだった」と手を打つ思いでした。入館時の違和感ですね。入館料を払ってスッと入ろうとすると、職員の方に制止されます。オープニング映像を見なければいけないためで、長い時はそれが始まるまで15分ほど待つことになります。私たちも「なんか変だ」と思いました。

<特に残念だったのは、語り部さんのお話を最初から聞けなかったことです>

→語り部さんの「講演」については、そもそも伝承館のホームページにタイムスケジュールが掲載されていないんですよね。A.Sさんのように、「聞きたいけど聞けなかった」という人がたくさんいると思います。

 もちろん、毎日いつ来ても語り部の講演が聞ける、という「便利さ」自体がおかしいとも思います。そのうえで、実施するのであれば、施設側はきちんと時間や本日の講演者のプロフィールを公開し、できる限り参加者を集めて、実施すべきだと思いますが、いかがでしょうか?(当然ですが、必ず語り部のプロフィールを紹介せよ、という意味ではありません)

<意図されたとおりに展示物を見させられる、寄り道、道草はダメですよと見張られながら見学したというような印象です>

→このご指摘も分かる気がします。展示は5エリアに分かれていて、①災害の始まり、②原発事故直後の対応、③県民の想い、④長期化する原子力災害の影響、⑤復興への挑戦、と流れます。

 時系列と言えば時系列なのかもしれませんが、なんとなくモヤモヤします。決まった結論を持ち帰らせたいのかなあと、考えてしまいます。

 A.Sさん、ありがとうございました!


皆さまからのコメント、大募集中です!

 これまで4人の方のコメントを紹介させていただきました。厳しいご意見が多かったように思いますし、ウネリウネラもそれに同調するコメントをつけてしまいましたが、なにもご批判だけを募集しているわけではありません。

 「こういうところがよかった」とか、「ここが勉強になった」というコメントも大歓迎です!

 多くの方からご意見をいただき、議論を深めたいと思います。短い投稿、ひと言コメントも歓迎です。もちろん、匿名・ペンネームでもOKです。掲載中の投稿を読んでの感想なども、ぜひお寄せください。投稿、お待ちしています。

 以下のフォームよりご意見をお寄せください。必要事項を明記し、紺色の「送信」ボタンで投稿完了です。

※各エリアの展示文章はこちらの一覧にまとめています。→「伝承館は何を伝承するのか」

※フォームでの送信がうまくいかない場合や長い論考などはuneriunera@gmail.comへお願いします。コメント欄などもお気軽にご活用ください。

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    コメント

    1. […] 先日「ほかの施設に学ぶ」編として、白河のアウシュヴィッツ平和博物館について書きました。今回は「みなさんの声」編第4回にご登場いただいたA.Sさんから、再び興味深い投稿を寄せていただきました。「ほかの施設に学ぶ」第2回としてご紹介したいと思います。 […]

    2. […] 先日「ほかの施設に学ぶ」編第2回でA.Sさんの「ふるさと田子倉館」についての投稿掲載後、それに応答するような文章を、F.Kさんが寄せてくださいました。「みなさんの声」第11回としてご紹介します。 […]

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