伝承館は何を伝承するのか~みなさんの声⑪

福島県内に昨年オープンした「東日本大震災・原子力災害伝承館」(伝承館)の「あるべき姿」を考えていきます。企画の狙いについては前の記事「企画のはじめに」をお読みください。

 議論の材料として、館内の展示フロアに掲示されている「文章」をアップした上で、みなさんから広くご意見の投稿を募集し、議論してきました。展示文章とみなさんの声は以下のページにまとめていますので、ご覧ください。

→ 伝承館は何を伝承するのか(展示資料の記録一覧)

先日「ほかの施設に学ぶ」編第2回でA.Sさんの「ふるさと田子倉館」についての投稿掲載後、それに応答するような文章を、F.Kさんが寄せてくださいました。「みなさんの声」第11回としてご紹介します。


【F.Kさんからいただいたコメント】

題名: それは過ぎ去らない。

只見川に林立するダムが、戦後の電源開発のために建設されたこと、そしてそれが原子力発電所建設の前史となっていることはよく知られています。

震災と原発事故が起きた同じ2011年の夏に、只見川は氾濫し、奥会津の人々にとって大切な生活路線である只見線を一部流してしまいました。

僕が大学を卒業して初めて赴任した学校は奥会津の金山町にありました。最初にその地を訪れた時、驚きました。3月の下旬でしたが、道路脇には2m近い積雪が残っていました。国道と鉄道がともに只見川という大きな川のほとりに通っていました。只見川にはダムが林立して、川は青黒くゆったりと流れていました。

そこの教員になって仕事をしていたある日、何人かの教員が、「三条部落」が今年なくなったようだ、そう話していました。部落(集落)がなくなる、ということを観念的に理解はできます。自分が働き住む町が、高齢化率は30%を超えていて、日本全体の高齢化を先取りしている。でも実感はできなかった。

雪がとけてから、ミカグラ山という登山口に行く途中にあるという三条部落に行ってみました。立派な家が何軒か残っています。

でも、人影はありません。ただ、移転して行った先から通ってくるのでしょうか、畑には野菜や花作りのために耕された形跡がありました。

この町をはじめ奥会津に人がいなくなったらどうなるんだろうと考えました。僕が働いている高校は1学年2クラスで60人もいませんでした。高校を卒業する時には、ほぼ全員が町を出て行きます。町には働く場所がないからです。以前は働く場所があったそうです。正確に言えば、「以前」というのはダム建設が始まってからということなんです。只見線が敷設されたのも、国道が整備されたのもダム建設のためだった。

ダムによって、只見川流域の暮らしは大きく変わってしまったそうです。「田子倉館」やブナミュージアムに行くとそれがわかります。そしてそれが、とてつもなく豊かでかけがえのないものだったか。ダムは人々に現金収入を伴う仕事をもたらしました。多くの人々が奥会津に入って来ました。

その「繁栄」は長くは続きませんでした。それを長引かせるために多くのダムが作られました。しかし発電は原子力発電にシフトして行きます。奥会津から水が引くように人々が離れて行きます。

そのことを予想した人々もいました。そういう人々は、自分たちの生活の場、生業の元である只見川や森林資源をカネと引き換えにすることに反対しました。村や町は分断されました。そうですね。原発建設で起こったことが、その10年以上前に起こっていたのです。

数年前に、仲間とともにダムに沈む前の田子倉に住んでおられた方からお話を聴き、それをもとに勉強会をしようと只見にうかがったのです。でも、その企画は直前になってキャンセルされました。それはもっともな事だと感じました。ダム建設をめぐる分断の中で負った傷はまだ乾いてはいないのだと思いました。

僕たちの勉強会は、震災と原発事故以降の僕たちの生き方を問うことを目的としていますが、それは僕たちが原発のある社会を選ぶことで捨ててしまったもう一つの生き方を見出すことでもあります。


【ウネリウネラから一言】

「それは過ぎ去らない。」という題名が、綴られていることの重さを背負っているように感じました。

ダム建設をめぐる分断の中で負った傷はまだ乾いてはいないのだと思いました。

という言葉から立ち去ることができません。「どうすればいいのだろう」「自分たちにできることが何かあるのだろうか」そうした問いがいつも頭の中をぐるぐる回っています。F.Kさんたちが取り組んでこられた「もう一つの生き方を見出す」営みに、私たちも連なっていきたいという思いです。

F.Kさん、切実な投稿をありがとうございました。


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