【新潟市水道局職員自死事件】内部調査の実態は?

 新潟市水道局に勤めていた男性職員(当時38歳)が、2007年5月に自ら命を絶ちました。上司(A係長)からのいじめ・ハラスメントがあったと指摘されています。この事件の続報です。

 自死から4年後の2011年、男性の死は公務災害(仕事が理由での死亡)が認められました。地方公務員災害補償基金の新潟市支部審査会という公的な機関によって、「A係長の言動は著しく理不尽な『ひどいいじめ』であった」と認められたのです。しかし、新潟市水道局は翌12年9月、幹部職員たちによる「内部調査」で「いじめはなかった」と断定し、遺族への損害賠償を拒否。裁判に発展しています。

 事件のポイントの一つは、「内部調査の実態」です。幹部職員はどのような調査をしたのか? 悪質な隠蔽はなかったのか? ウネリウネラは当時の様子を知る手がかりとなる資料を入手しました。紹介します。


事件の経緯

2011年11月男性の自死が公務災害と認められる
2012年 3月男性の遺族が水道局に損害賠償を請求
   8月水道局、遺族に対して公務災害の認定に使われた資料の提出を要求
資料請求の理由を「円満に解決するため」と説明
   9月水道局、いじめについての内部調査を実施
  11月水道局、遺族側に「賠償には応じられない」と回答
2015年 9月遺族が損害賠償を求めて新潟市(水道局)を提訴

 遺族側から公務災害認定の資料を入手した水道局は、直後の2012年9月に内部調査を開始。公務災害認定時に「いじめ・ハラスメントがあった」という陳述書を出した職員(ここでは「Zさん」と呼びます)に対して、聞き取り調査を行いました。そして、Zさんの証言内容が「変遷」「後退」していることを有力な手がかりとして、「いじめはなかった」と断定しました。

※このあたりについては前回までの文章を読んでください。
 【新潟市水道局職員自死事件】裁判は山場へ


「内部調査の実態」手がかりとなる資料

 今回ウネリウネラが入手したのは、Zさんが受けた内部調査の様子を伝える資料です。

 タイトルは「局による調査会の内容について~Zさんからの報告」。資料の作成者は当時の労組役員でした。労組役員が調査を受けた後のZさんから聞いた内容が書かれていました。

日時:2012年9月21日午前10時(1時間以上)

場所:水道局研修センター会議室

局側出席者:経営企画室長、事業所長(秋葉地区)、総務課課長補佐、総務課職員係

【内部調査の概要】(Zさんから労組役員への報告)

・はじめに課長補佐から、この調査が遺族からの損害賠償請求の検討のためであること、この聞き取り調査で話した内容によって不利益を受けることはないこと、が話された。

・当時の状況について尋ねられたが、ほぼ陳述書に書かれた内容と同じことを言った。

・A係長の言動に関わって答えると、経営企画室長、事業所長は「普通、そんなことは言わないだろう?」と否定するような言い方をした。課長補佐も「そうですね」と言っていた。しかし、それ以上に私(Z)が答えた内容の、真偽を確かめるような追求は無かった

・私(Z)は、「A係長と二人で車での移動中に、言葉でいじめ続けられた」と亡くなった男性から聞いたことがあると答えた。

・最後に、経営企画室長が「Zはいじめがあったと思うか?」と尋ねた。私は少し考えたが、「あったと思います」と答えた。

【Zさんの感想】

・局側は、A係長の言動について、大勢の前で大きな声で罵倒するとか、怒鳴るとかいうことはないという前提で聞き取ろうとしていたと思う普通の言葉であっても、表現しづらい恐怖心を徹底的に与えるということについて理解ができないようだった

・経営企画室長は、私(Z)もわりと知っている人なので、最初は淡々と事務的にすすめるような言動だったが、時間が経つにつれていつもの口調(先輩後輩という感覚?)になった。しかし、調査自体は、たいへん居心地の悪い場所だった

・調査後、会議室の外で課長補佐と話をした。課長補佐は「自分も遺族の思いにできるだけ沿った解決がしたいと思っている。そのために面倒をかけて申し訳ない」と話していた。

【Zさんから報告を受けた労組役員の所感】

・Zさんはよく頑張ってくれたと思うが、相当嫌な思いをしたようだ。なお、局側も「犯人探し」と取られないよう、少し注意していたようにも感じられる


資料から何を読み取るか?

 資料の紹介は以上です。皆さんはどのように感じましたか? ウネリウネラが気づいた点をいくつか書きます。

・資料を読む限り、水道局幹部は少なくとも、明らかに威圧的な態度で聞きとりを行ったのではなさそうだ。でも、Zさんが「たいへん居心地の悪い場所だった」と言っている通り、複数の幹部職員に呼び出され、話を聞かれること自体が相当なプレッシャーになったのは明らかだろう。そうしたプレッシャーの結果、Zさんの証言が「変遷」「後退」した可能性はないか?

・また、Zさんの証言は本当に「変遷」「後退」したのだろうか? Zさんは労組に対し、「公務災害認定時に提出した陳述書とほぼ同じ内容のことを言った」と話している。一方、水道局側が内部調査後にまとめた報告書は<Zの証言は、(陳述書の内容と)明らかに整合に欠ける部分がある>と書いている。これはどういうことか? 「聴取した側」と「された側」の認識が食い違っている。 もしも<整合に欠ける>ならば、そのままにしてはいけない。「話していることが違うんだけど、どうしたんですか?」と再質問し、陳述書の内容と内部調査への回答と、どちらが真実に近いかを確かめなくてはいけない。だが、Zさんの「真偽を確かめるような追及はなかった」との報告と考え合わせると、水道局側はそこまでしていない。

・水道局幹部はやはり、A係長の言動について、ある程度の「予断」をもって調べていたのではないだろうか。事業所長の「普通、そんなことは言わないだろう?」という否定的な発言は、それを裏付けていないか? 資料によると、Zさんは「いじめはあったと思います」と明言している。一方、「水道局幹部から真偽を確かめるような追及はなかった」と言っている。これは、「いじめ・ハラスメントの有無を調べる」という調査目的の重大さから考えると、ずいぶん不十分な調査ではないだろうか?


 以上です。限られた内容の資料のため、うかつなことは書けません。でも少なくとも、「水道局は内部調査で『いじめ・ハラスメントはなかった』と断定すべきではなかった」というウネリウネラの意見は変わりません。

 今後も事件をウォッチしていきたいと思います。

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