福島県内に今秋オープンした「東日本大震災・原子力災害伝承館」(伝承館)の「あるべき姿」を考えていきます。企画の狙いについては前の記事「企画のはじめに」をお読みください。

 議論の材料として、館内の展示フロアに掲示されている「文章」をアップしてきました。以下のページにまとめていますので、ご覧ください。

→ 伝承館は何を伝承するのか(展示資料の記録一覧)

 ブログ読者の方からいただいたご意見、ご指摘を紹介しています。三回目は、福島県内の高校教員、渡部純さんのコメントを紹介します。

 渡部さんはいわゆる「SPEEDI」の扱いをめぐる文章(展示資料の記録⑤)について、感想を寄せてくれました。

 ぜひお読みください!


【渡部純さんからいただいたコメント】

題名: 福島県の責任を明確に

メッセージ本文:

 私が伝承館を見学して最も衝撃を受けた展示内容は、SPEEDIの情報廃棄ミスに関する責任否認です。

 当時、SPEEDIの情報を県民に広く通知してもらえれば、われわれは不必要な被ばくを防げました。

 少なくとも屋外での避難所運営を注意したり、中学生を高校入試合格発表の確認に外出させたりすることは控えさせられたのではないでしょうか。

 そのミスについて展示内容は、次のように記述されていました。

「当時、SPEEDIによる予測結果は、国やオフサイトセンターにおいて住民避難等の防護措置の判断に活用されることになっていましたが、県災害対策本部では、SPEEDI結果の取り扱いを明確に定めたものはなく、その情報を共有することができませんでした」

「2014年、原子力規制委員会は福島第一原発の事故を教訓として、原子力災害発生時に、いつどの程度の放射性物質の放出があるか等を把握すること及び気象予測の持つ不確かさを排除することはいずれも不可能であることから、緊急時における避難や一次移転等の防護措置の判断にあたって、SPEEDIによる計算結果は使用しないとの見解を示しました」

 これらの記述が言い訳に終始し、まったくあのミスを反省するものとは言えないことは明白です。

 というのも、これらに含まれるメッセージとは、端的にいえば「当時の県にはSPEEDIに関する行政上の『取扱説明書』がなかったから致し方なかったのです」とか、「結局、SPEEDIが用いられても意味はなかったし、その後、原子力規制委員会もそのことを認めたから結果オーライなのです」というものでしょう。

 被災者を馬鹿にするにもほどがあると思います。

 何のための教訓の伝承館なのか。

 たしかに、あの混乱時に対処しきれなかったことは多々あれど、「あのミスを二度と繰り返さない」という県の姿勢があれば、安易にこうした記述を提示できるものではないでしょう。

 伝承館が県の責任を否認し、「言い訳」に終始するメッセージの発信の場にならないことを願うばかりです。


【ウネリウネラから一言】

 SPEEDIとは、原発事故のときの風向きと風の強さから、どの方角にどのくらい放射性物質が拡散するかを予測するシステムのことです。

 3・11前までは、このSPEEDIによるデータを参考にして避難指示区域を決めることが想定されていました。しかし、実際の福島原発事故では機能しませんでした。

 伝承館のパネル展示の各文章を比べてみると、SPEEDIについての説明は、文字数としてはとても多いほうだということが分かります。700字以上あり、パーツ別で言えば最多の文字数です。

 しかし、それだけのスペースを使っておきながら、文章の中身はとても曖昧です。<情報を共有することができませんでした>と書いてありますが、これだけで何が起きたか分かるでしょうか?

 福島県は2012年6月にSPEEDIの取り扱いについての検証結果を発表しています。→SPEEDI電子メールデータ削除問題 – 福島県ホームページ (fukushima.lg.jp)

 この公表内容を見るだけでも、国が電子メールで送っていた86通のSPEEDI試算結果のうち、福島県がデータを保管したものが21通しかなかったことが分かります。残りの65通のSPEEDIデータは福島県が消去してしまっていました。

 <情報を共有することができませんでした>という伝承館の記述には、<福島県が国から受信していたSPEEDIデータの大半を消去していました>と書き加えるべきではないでしょうか。

 そして、なぜデータを消去したのか。職員の単純なミスなのか。それ以上の理由はないのか。検証結果を示すべきではないでしょうか。

 仮に今後はSPEEDIを使わなかったとしても(使うべきケースは十分あり得ると思いますが)、危機にあたって重要なデータを消去してしまうような組織体であること自体が心配なように思います。

 福島原発事故のときにSPEEDIのデータが避難に活用できたかどうかは議論のあるところかもしれません。それならば、そこに対する国や県の見解をきちんと伝承館で示すべきですし、少なくとも大事なメールを消去したことに関しても、頬かむりすべきではないと思います。

 渡部さん、ありがとうございました!


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 以下のフォームよりご意見をお寄せください。必要事項を明記し、紺色の「送信」ボタンで投稿完了です。

※各エリアの展示文章はこちらの一覧にまとめています。→「伝承館は何を伝承するのか」

※フォームでの送信がうまくいかない場合や長い論考などはuneriunera@gmail.comへお願いします。コメント欄などもお気軽にご活用ください。

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