福島復興再生基本方針へのパブコメ

報道

先ほどブログにこんな文章をアップしました↓

【お知らせ】福島復興再生基本方針のパブコメ募集期間が短すぎる件
みなさん、「福島復興再生基本方針」というものをご存じでしょうか。 政府、復興庁が作っています。2012年に最初のバージョンができ、17年に改定がありました。今まさに2度目の改定を行っている段階です。復興庁が「方針案」をつくり、パブリックコメ...

「こんな短い募集期間のパブコメがある」というのは、市民団体「みんなのデータサイト」の方から教えてもらいました。

「みんなのデータサイト」とは、食品や土の中にある放射性物質の量を測っている団体です。なぜ、この団体がウネリウネラに知らせてくれたかというと、「福島復興再生基本方針」の改訂に危機感を抱いているからです。

福島復興再生基本方針(案)に見え隠れするもの

復興庁がパブコメを募集している「方針案」には、以下のような文言があります。

発災から 10 年が経ち、様々な知見やデータが蓄積されたことを踏まえ、食品等に関する規制等について、科学的・合理的な見地から検証する。あわせて、その検証結果等について、消費者の理解を深めるため、分かりやすい形で情報発信・リスクコミュニケーションを進める。

この文章だけだとよく分かりません。でも、いま同時並行で動いている自民党の動きを知ると、ここで書かれていることの意味が分かります。インターネットで検索したNHKニュースから引用します。

自民党のプロジェクトチームは、野生のきのこなど、現在も広く出荷が制限されている食品について、合理的な基準を検討することなどを盛り込んだ政府への提言をまとめました。提言では、地域の直売所や観光など、なりわいに大きな影響が出ていると指摘したうえで、野生のきのこや山菜といった、消費量の少ない食品は、国際的な食品規格では、基準が一般の食品の10倍とされていることを例に挙げ、データに基づいて合理的な基準を検討すべきだとしています。

現在、食品の放射性物質の基準は、「1キログラムあたり100ベクレル」ときまっています。しかし、自民党のプロジェクトチームは、食べる量の少ない野生のキノコや山菜は100ベクレルより高くても出荷できるようにしよう、と言っています。国際的な規格と合わせて、1000ベクレルにしよう、ということのようです。

復興庁は当然、このような自民党の動きも織り込んだうえで、先ほどの文言を「福島復興再生基本方針」に盛り込んでいます。「科学的・合理的な見地から検証する」という抽象的な書き方をしていますが、実際には「基準値を100ベクレルから大幅に引き上げる」という方向性がベースにあります。

食品の放射性物質についての規制を緩和する動きがある

これには、いろんな意見があるかもしれません。「もっと出荷できるようにしてほしい」という人もいると思います。ウネリウネラが今の段階で書けるのは以下の2つです。

・放射性物質の健康リスクについては「しきい値」がない、と言われています。「しきい値」とは“数値がこれ以下なら健康に影響は全くない”という境界値のことです。これがないということは、被ばくの量がどんなに少なくても健康上のリスクがないとは言い切れない、ということです。

・放射性物質への感受性(どれくらい体に影響を受けるか)は、人によってちがいます。キノコや山菜を食べる量も人によってちがいます。都会では「珍味」扱いの食材も、自然豊かな地域に暮らす人びとは、日によっては大量に食べることがあります(マツタケなどが一例)。

この二つのことを考えると、食品への規制をゆるめるのは、かなり慎重に考えるべきだと思います。

いずれにしても、議論をしっかりしなければなりません。1週間のパブコメで既定路線をつくられてはならない話だと思います。

ウネリウネラはこんなパブコメを書きます

もちろん、食品の規制だけではありません。「福島復興再生基本方針」を読んでいると、いろいろ「うーむ」と考えてしまう部分が多いです。ウネリウネラがパブコメに書こうとしている主な項目を下に書きます。

・避難解除区域内にも放射線量が高い地域はある。そもそも「年間20ミリシーベルト以下」という基準は、避難指示を解除する条件としては緩すぎるのではないか。現段階で帰還・移住・定住を促進するのは拙速に過ぎると感じる。

・「方針案」では、「移住」という言葉が入っている。もちろん、すでに避難指示が解除された地域では住民の帰還率の低さが問題になっている。新しい住民が増えることは喜ばしいはずだが、元々住んでいた人が戻りたくなる地域にすることが、本当に目指すべき姿ではないのか。数字としての人口が維持されればいいのか、と感じる。

・「方針案」には、「福島イノベーション・コースト構想推進機構への国職員派遣」が追加されている。しかし、地元紙の意識調査などを見る限り、福島イノベーション・コースト構想は、多くの福島県民が期待するものでは必ずしもない。(例:福島民報の県民意識調査では、「復興に向け、行政に最も求めたい取り組みは」という質問に対し、「ロボットなど先端産業の集積」という回答項目を選んだ福島県双葉郡の住民はわずか2.6%だった。)住民ニーズの乏しいところに力を注ぐのはもったいない。

・全体として風評被害の払拭を強く打ち出しているが、「風評」ではなく「実害」として解決されていない問題も多いのではないか。「風評」という言葉の強調により、いまだ実害があるという可能性が覆い隠されてしまう危険性を感じる。

・「方針案」には、「被災者をはじめとする放射線による健康影響 への不安に対するリスクコミュニケーションに関するこれまでの取組を総点検し……」「 放射線に対し不安を抱く住民に対する説明会の開催等を進める」「 放射線による健康影響等の不安を軽減するため……」などとある。放射線による健康影響はすべて、「不安」と表現されている。不安へのケアは必要だが、それ以前の問題として、「健康影響が実際にあるのかどうか」を十分に検討しなければならない。「方針案」にそうした記載がなく、不安への対処ばかりが強調されているのは、放射線の健康影響は心の問題だと決めつけているように感じる。

以上です。長々とすみません。
みなさまもぜひ、パブコメを寄せてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、いま書いている復興庁の「福島復興再生基本方針」ができると、それに基づいて福島県が「福島復興再生計画」というものを作る流れになっています。これについてのパブコメ募集も県のHPで今月1日から始まっています。こちらは17日が締め切りのようです。

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