憲法と社会問題について考えるウェブサイト「マガジン9」で続いている連載「映画から考える3・11」、第5回『たゆたいながら』の後編が本日配信されました!

記事はこちら↓

『たゆたいながら』は、低線量被ばくの状況下に置かれた福島・中通りの人びとの姿を丁寧にすくい取った映画です。きょう配信の記事後編では、自主避難した人としなかった人との間に生まれた「亀裂」と、その亀裂の「修復」について、フォーラム福島の名物支配人、阿部泰宏さんに語ってもらっています。

自主上映会を受け付けています!

この映画、DVDなどは流通していませんが、できるだけ多くの人に観てほしいです。監督の阿部周一さんご自身が上映会の開催などの相談を受け付けていますので、ご興味もった方はぜひ連絡してください!

問い合わせは shuichiabe1007@gmail.com

光栄なことに、記事の配信にあたって阿部周一監督からメッセージをいただきました。なぜこの作品を撮ろうと思ったのか、監督自身が語ってくれています。こちらもぜひお読みくださいませ。

阿部周一監督メッセージ

 阿部さんと牧内さんの対談は私の制作した当時の意図を超えており、私自身多くの発見がありました。「映画は作者の元を離れ公共のものになる」という言葉を聞いたことがありますが、今回ほどそれを感じたことはありませんでした。多くの方に取材に協力いただいたことに改めて感謝すると共に、自分の編集の稚拙さを痛感しております。 

 阿部さんが「そもそも彼自身が、多くの人にこの映画を観せたいという考えで作っていないと思うんです。」と仰っておられます。自分ではそんなつもりではなかったのですが確かに説明不足な部分があったと思います。誰に観てもらうイメージで編集したかといえばそれは震災を経験しそれぞれの選択を迫られた福島の人たちでした。この映画が分断について考えるきっかけになれば、という思いでした。映画を観に来る方々は福島についてよく知っている方が多かったこともあり背景説明は簡潔にしましたが、 福島について知らない方々にリーチする努力は足りなかったかもしれません 。

 指導を担当した原一男監督からも 「もっと福島の置かれている状況、線量の値などを説明しろ。もっと国、東電にもカメラを向けろ。もっと怒りを表現しろ」と言われましたが、福島の状況を伝える映画はすでにたくさんあり、僕はそういった映画とどう差別化できるかを考えていました。原監督は当時大阪泉南アスベスト訴訟や水俣病の映画を制作していました。運動を外に広げていくことと映画作りが同義であった原監督は、むしろ内側に向かっていく僕の映画を歯がゆく見ていたのだと思います。

 専門家の解説など科学的に説明する必要を考えたこともありましたが、やはり数値を指し示したところで今福島で起こっていることは何も伝えられません。この映画の主人公は福島の「土」ではなくその上に立つ「人」です。同じ土の上に立っても皆それぞれの葛藤を抱えているのです。私自身が撮り始めたのも「福島に残ったわけでもなく明確な意志を持って避難したわけでもない自分とは?」という個人的な思いからでした。まさに阿部さんのご指摘の通りです。出発点と着地点でもだいぶ思惑が変わりねじれの生じた構成になりました。「一番たゆたっているのは監督だね」なんて言われたこともありました(笑) 

  阿部さんが文中でおっしゃっていますが、福島市内で開かれた上映会で「全く分からなかった」という感想を述べた人がいたのは僕もとても驚きました。質疑応答で「なぜこの人たちは避難したんですか?」という質問があり「放射能が怖くてですよ」と答えると「え?」という反応が返ってきました。東京での上映ならこういうやり取りは理解できるのですが、まさか福島の人に聞かれると思いませんでした。福島の人が低線量被曝の問題を当然のように皆知っている前提で作品を作った僕としては青天の霹靂でした。避難した人、心配だけど残った人という視点とは別に「無自覚な人」(この言葉が適切かわかりませんが)の存在がいたこと。そして福島に住む人々のほとんどがこのような方であること。この視点が映画の中で抜け落ちていました。まだまだこの映画を上映していく意味がある、僕自身もさらに福島の問題に向き合って行かなくてはならないと思います。

 新型コロナウイルスにより厳しい局面に立たされていますが、来年は震災から10年という節目を迎えます。本作は配給もついておらず商業展開もされてはおりませんが少しでも上映の輪が広がっていけたら幸いです。

 幼い頃よりフォーラム福島で映画を観て育ってきた私としては、支配人の阿部さんに映画を取り上げてくださったこと、とても嬉しく思います。たくさんの映画を観てきたあのスクリーンでいつか自分の映画が流れることを目標にさらに映画作りに努めたいと思います。改めまして、映画を取り上げてくださった牧内さん、阿部さんに感謝申し上げます。

(周一監督のメッセージ、終わり)

メッセージありがとうございました。周一監督の謙虚なお人柄が伝わってまいります。原一男さんとの軋轢のくだり、「原監督ならそう言うだろうな」という気がして少し笑ってしまいました。

こちらこそ、大切な作品を世に残していただき、感謝いたします。

映画企画、年明けも続きます!

「映画から考える3・11」は、年内はこれで打ち止めですが、年明けも続きます! 誰もが見るべき証言ドキュメンタリー、世界的巨匠と福島との交流……。来年も阿部さんにパワフルに語ってもらいます。

乞うご期待!

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