【生業訴訟】「最高裁第2ラウンド」に向けた原告団総会

新着情報

 原発事故を起こした国・東電の法的責任を問う「生業を返せ、地域を返せ! 福島原発訴訟」(生業訴訟)の第10回原告団総会が5月13日、福島県内で開かれました。原告団は昨年6月17日の最高裁判決を覆す運動を続けていくことを確認しました。また、新しく弁護団の事務局長に就任した渡邊純弁護士は元事務局長の性加害事件の経緯を報告し、今後の決意を述べました。(文・写真/ウネリウネラ牧内昇平)


「弁護団として責任を痛感」

 原告団総会は二本松市の男女共生センターで行われ、南相馬市内に用意されたオンライン会場と合わせると約100人の原告が参加しました。

 生業訴訟については、弁護団の元事務局長だった馬奈木厳太郎氏による性加害問題が発覚しています。関連記事は以下。

 性加害の事実が公表された3月上旬、生業訴訟弁護団はウェブサイトに「おわび」を掲載しました(詳しくはこちら)。新しく弁護団事務局長になった渡邊純氏はこの日の総会で、原告たちに改めてこう話しました。

悪質なセクハラ、性加害事件と言わざるを得ません。生業訴訟や当弁護団の活動とは直接関係のない場面でのことです。ただし、馬奈木氏は今まで弁護団事務局長を務め、いわば生業訴訟の「顔」として活動してきました。全国の原発関係の運動にも大きなダメージを与えたことは否定できません。弁護団としても、その責任を痛感しております。原告の皆さんにも深くおわび申し上げます。弁護団に対して、事件のことをもっと早く知ることができなかったのか。このような行為を防ぐ手立てはなかったのか。そもそもこういう人物を弁護団の要職につけていたことが問題だ。というような批判があると思います。それについては深く受け止めます。

渡邊純氏

馬奈木氏は2013年の提訴以来、弁護団の中心メンバーの一人として活動していました。多くのメディアに出演し、「広報担当」の役割を担っていたとも言えます。馬奈木氏が弁護団から抜ける影響はあるのか。渡邊氏はこう答えました。

生業訴訟弁護団の渡邊純事務局長

弁護団は「責任班」(事故原因や責任の所在を明らかにする)と「被害班」(被害実態を立証する)に分かれ、集団的に訴訟の準備をしてきました。馬奈木氏の関わりは部分的なものにすぎません。メディア対応などを通じて運動面ですぐれた力量を発揮してきた部分はあります。しかし、その功績は、悪く言えば、個人プレーという印象をぬぐえないものでした。個人に依拠していては、運動を長期にわたって継続していくことは難しいと思います。新しい事務局長は、メディアに出たり、新聞に出たりするのが好きなタイプの人間ではありません。しかし、運動をこれからも持続させて、最終的に国の責任を明らかにする。そのためには、弁護士が主役ではなくて、原告団が主役となって、集団的な運動を作っていく必要があります。事務局長となった私は裏方として、それを一生懸命、下支えしていきたいと考えています。

渡邊純氏

「苦しみや困難に立ち向かおう」

 生業訴訟(第1陣)を含む原発事故集団訴訟4件は昨年6月17日、最高裁で「国に法的責任なし」という判決を言い渡されました。現在、全国各地の同種の訴訟がこの「6.17最高裁判決」を覆そうとしています。

 生業訴訟の中島孝原告団長は、この日の総会でこう語りました。

6.17最高裁判決は全く不当なものでした。仮に対策を取っても想定外の災害だから事故は避けられないとするなら、原発の安全性について国は真剣な対策をしなくてよいと断言したに等しく、それは現在の安全規制法制を破壊し、国に住民に対する安全保護義務を放棄させることになります。そんな判決を私たちが受け入れることはできません。

中島孝氏
中島孝原告団長(画面右)

 生業訴訟原告団は今後、全国各地の訴訟を応援する方針です。どこかの高裁で国の責任を認める判決が出れば、最高裁ももう一度公開の裁判を開き、そこに勝つチャンスが生まれる――。そのように考えています。具体的には、福島地裁で審理が続いている「生業訴訟第2陣」で勝訴を目指すと同時に、6.17最高裁判決を覆すための署名活動などを行っていくといいます。

 中島氏は最後、原告団の人びとにこう語りかけました。

みなさん、苦しみや困難は人生にはつきものです。恐れて閉じこもってしまえば、ひとは困難に飲み込まれてしまいます。しかし、恐れずに立ち向かえば、少しずつでも確実に道は開けます。みなさんの裁判での継続した取り組みが国を動かし、課題は残りましたが、多くの県民への追加賠償を実現しました。みなさんの力が国を動かし、全体救済という重い扉を開いたわけです。みなさん、力を合わせた取り組みで最高裁不当判決を覆すという、より大きな仕事の一歩を始めようではありませんか。

中島孝氏

皆さまのご意見を募集します

生業訴訟について、原発事故の責任をめぐる全国各地の訴訟について、皆さまからご意見ご感想を募集します。お待ちしております!

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました