先日、私立・桐朋学園小学校(東京都国立市)5年生の方々に「リモート授業」する機会をいただきました。「記者の仕事について」がテーマでしたが、40分の授業時間の半分以上、私自身がライフワークとして取材している「過労死問題」について話しました。

はじめに私が朗読したのは、「マー君」という男の子が書いた詩です。マー君が6歳のとき、彼のお父さんは働きすぎで亡くなってしまいました。

「ぼくの夢」

大きくなったらぼくは博士になりたい

そしてドラえもんに出てくるような

タイムマシーンをつくる

ぼくは

タイムマシーンにのって

お父さんの死んでしまう前の日に行く

そして

「仕事に行ったらあかん」

ていうんや

私自身、9年ほど前にこの詩を読み、過労死問題を取材するようになりました。当時1歳だったわが子の顔が頭に浮かび、マー君の言葉と重なりました。そして、「家族にこんなつらい思いをさせてはいけない」と強く思いました。自分の働き方、仕事観が180度変わるきっかけになった詩です。

授業では、この詩をまず私が朗読し、マー君のお父さんがどのような働き方をしていたかを話しました。お父さんは一か月に200時間近くもの残業をしていたのです。そのことを子どもたちに伝え、こう言いました。

ひとつだけ覚えておいてほしい。 『働くために生きる』ではありません。『生きるために働く』です

そして、半人前の身で恥ずかしさもありましたが、思い切ってこのように続けました。

記者という仕事のやりがいは、自分が『おかしい!』と思ったことを多くの人に伝えられることです。私が心の底から『おかしい!』と思うのは、

  ①ひとの命が奪われること

  ②ひとの大事なものが傷つけられること

  ③ひとが「もう生きたくない」と思わされてしまうこと

の三つです。みなさんも『おかしい!』と思うことを探してみて下さい。『おかしい!』でなくてもいい。『嬉しい!』でも『面白い!』でも、自分が心の底から感じるものを探してください。それがいっぱい見つかる人は、記者の資質を持っていると思います

リモート授業のため、その場では、こどもたちの反応はあまり分かりませんでした。数日後、担任の先生から感想の一部を読ませていただきました。


桐朋学園小学校5年生のみなさんより

牧内さんは人が死にたいと思うことになってしまうような世の中なのはきらいで、わたしもそれに対して同じ思いをしました。男の子のお父さんが働きすぎで死んでしまうというつらい話もありました。「働くために生きる」のではなく、「生きるために働く」ということも大事だと改めて話をきいて感じました。

私が一番心に残ったのは「過ろう死」についての話でした。生きるために働くのだから、働きすぎで死んでしまう、というのはあまりにもおかしいと思います。

一番ビックリしたのは、働きすぎて死んでしまう人がいるということだ。そういう人がいることは知っていたけど、残業を6~7時間もやっていて、死んでしまった人にビックリした。「働くために生きるのではなく、生きるために働くのだ」という言葉が心にひびいた。

牧内さんの仕事テーマは「過労死」です。労働しすぎて、あわれな最期をとげてしまうという意味です。私は、この言葉を知って、ばかばかしいやと思いましたが、一ぺんの詩が、この考えをくつがえしました。詩の名は、マー君の「ぼくの夢」です。私と同じように、牧内さんはこの詩に心をうたれたそうです。マー君の父は、どのようなおもいで、月に二百時間となる残業を行っていたのか。マー君の思いがこの詩から伝わります。

話をとても真剣に聴いてくれていたことが、文面から伝わってきました。

「どうすれば過労死をなくせるのか」と考える時、最終的にたどりつくのは「教育」です。なるべく早い時期から、働くことの意味や、働く人の命や権利を守るためにどんな仕組みがあるかを教えていくべきだと思います。多くの人が学校を卒業したら働くのですから、「生きる力をはぐくむ」という意味で、労働の知識は必須ではないでしょうか。

そのようにいつも考えていたので、私のメッセージがこどもたちに伝わったのは本当に嬉しいことでした。

授業では記者の仕事のやりがいや意義についてもお話しましたが、そのことについても、こどもたちは深く考えてくれていました。

おかしいと思った事をしっかりと調べて事実として世の中に出すということはとてもむずかしいと思います。あとからひはんされるかもしれないけどそれをすなおに伝えることはむずかしいです。

牧内さんにとって「おかしい!」と思ったことを世の中のたくさんの人に知らせることに「やりがい」を感じるそうです。私もおかしいと思った時に、そのままおかしい世の中でありつづけるのか、それともできるだけ改善しようと心がけるかでは世の中は全然異なると思います。わたしも「おかしい!」と思ったことには全力で改善をよびかけたいと思います。

ぼくは牧内さんの話を聞いて心に残った話が二つありました。

一つ目は記者の仕事はどんな仕事かという話の時に、牧内さんが記者は現代史を記すものだと言ったことです。責任は求められますが、歴史に関わる仕事だったと言うことを初めて知りとてもおどろきました。

記者がなまけると歴史がくずれるそうです。何十年後かにあなたの記事はまちがっていますといつ言われるかわからないので真剣に集中してやることです。私が一番心に残った事は「人の命をうばわない」「人を傷つけない」という言葉でした。「人を言葉で傷つけない」というのは大事な事だなあと思いました。言ったほうは傷つけた気はなくても言われた方は悲しく思っているという事があるかもしれないからです。

自分でしっかり考えて、自分の言葉で感想を書いてくださっていることに、とても感動しました。


桐朋学園小学校でのリモート授業は、同校教諭で旧知の有馬佑介さんの紹介で実現しました。

はじめは、もっとオーソドックスに、「記者の1日」や「新聞の作り方」などをメーンに話そうと思っていたのですが、有馬さんから「こども扱いせず、自分の思いの丈を語ってくれ」と言われたので、このような過労死の問題も話すことにしました。

有馬さんをはじめ、授業をコーディネートしてくれた大橋さん、高城さんの両教諭、そして何よりも、ぼそぼそ話す私のリモート授業に耳を傾けてくれた桐朋学園小学校5年生のみなさんに感謝します。

※有馬さんは小学1年生のクラス担任です。教室の様子を伝えてくれた文章はこちら↓

寄稿エッセイ・小学校の先生から

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