入院患者の感染が判明した福島市内の病院は「院内感染の爆発」を防げるか?

 福島県福島市内の「一陽会病院」で、入院患者の新型コロナウイルス感染が判明してから1週間以上がたちました。幸いにも新たな感染者は判明していませんが、いつ院内感染が広がってもおかしくない状況は続いています。

 私は勤務している新聞社に「感染判明1週間」の原稿を出しましたが、掲載される見通しが立っていません。もちろん、記者が出す原稿のニュース価値を判断するのは編集者(デスク)の仕事であり、その判断に異論をさし挟むつもりはありません。

 しかし、個人的には、仮に新聞に掲載されなくても、世の中の人、特に福島に住む人びとに知っておいてほしい事案です。

 全国で相次ぐ「医療機関のクラスター化」を防ぐ一助となるために、あえて本ブログで紹介することにしました。

私が書いた原稿

以下が私の書いた原稿です。新聞掲載用なのでパサッとした文面になっていますが、お読みください。


 感染判明1週間

 福島市内の一陽会病院に入院中だった30代女性の新型コロナウイルス感染が判明してから1週間が経った。新たな感染者は出ていないが、女性への感染経路も未解明のままだ。感染拡大の心配は依然として残っており、病院側や保健所は神経をとがらせている。

 ほかの患者、職員に陽性者なし

 「院内での感染が医師に波及すれば、通常の医療にも多大な影響が出る。最悪の事態を想定した対応をしていきたい」

 福島市の木幡浩市長は24日の記者会見でこう話し、病院内での感染拡大を注視していく考えを示した。

 今月22日に入院中の女性の感染が判明して以降、市保健所は数日のうちに同じ病棟の入院患者全員と医師や看護師ら職員の計64人にPCR検査を行った。結果はすべて陰性だったが、早い段階で検査したため、今後体内でウイルスの量が増え、陰性だった人が陽性に転じる可能性もある。市保健所の中川昭生所長は「現時点での検査をもって感染が否定されたわけではない」とし、病院側と協力して患者や職員たちの健康観察を続けている。

 感染経路は不明

 女性への感染経路は不明なままだ。女性は2月中旬から一陽会病院に入院していた。直近2週間は外出や外部からの面会者はなかったという。このため市保健所は、医師ら職員やほかの入院患者などから感染した可能性があるとみて調査を続けたが、解明に至っていない。感染経路が不明な限り、今後の広がりを予測できない状況が続く。

 一陽会病院の担当者によると、病院は27日から外来診療を再開した。当初は医師を含む10人の職員が自宅待機していたが、保健所から女性の濃厚接触者と確認された2人の看護師をのぞき、すでに勤務を再開しているという。同病院の菊地勝彦経営企画室長は「本来であれば職員たちをもう少し自宅待機させたいが、待機が長引けば現在入院している患者の治療ができなくなる」と実情を明かす。

 クラスター化を防げるか

 焦点は、今後新たな感染者が出た時に病院全体のクラスター(集団感染)化を防げるかどうかだ。厚労省のまとめによると、3月末時点でクラスターと認定された医療機関は全国で10カ所。その後も病院内での患者や職員の集団感染は相次いでおり、都内の永寿総合病院では約200人が感染。神奈川県では精神科病院の「相州病院」で4月21日までに8人が感染した。

 愛知県立大の清水宣明教授(感染制御学)は「状況を考えれば入院患者や職員の中にある程度感染者が出てくることを想定した上で、爆発的な感染拡大につなげない努力が必要だ」と指摘。「医師や看護師たちは高性能の『N95マスク』やゴーグルで感染を防いでほしい。入院患者は全員個室で管理するのがベストだが、難しければマスク着用と病棟内の換気を徹底すべきだ」と話す。病院単独で必要な資材を集めるのは難しい状況だが、福島市保健所の担当者は「感染者が集中する感染症指定病院や帰国者・接触者外来でも物資は不足しており、総合的に判断せざるを得ない」と話している。


新聞原稿の補足 院内感染のリスクは続いている

 大事なことは原稿に書いたつもりですが、少し補足します。

 一陽会病院のケースが心配なのは、入院患者への感染経路が不明な点です。感染した女性はここ2週間外出しておらず、面会者もいませんでした。病院全体で言っても、3月半ばからは全入院患者に対して面会が禁止されていたそうです。

 すると、ほかの入院患者か、医師らスタッフからの感染が推測されます。女性の病棟にはほかに27人の患者さんが入院しており、少なくとも37人のスタッフが看護などで関わっていました。この64人を中心に感染が広がるリスクがある状況です。

 原稿では、この64人のPCR検査結果はすべて陰性と書きましたが、ポイントは、女性の感染判明直後、4月23日ごろに行った検査である、ということです。

 新型コロナウイルスは人体に入ってからだんだん増殖していくことが分かっています。ある程度体内のウイルス量が増えた段階でないと検査で「陽性」は出ません。

 もしも女性から感染した人が院内にいる場合、直後の検査では「陰性」になったものの、その後ウイルス量が増えていき、発症することは十分に考えられます。福島市保健所も同様の危機感を持っています。

現状のスタッフで医療行為を続けるしかない

 一方、現時点でこの病棟を閉めたり、関わっていたスタッフを全員自宅待機にすることは得策ではありません。医師や看護師らを全員休ませれば、入院患者に対して通常の医療・看護を行う人がいなくなります。地域の医療人材はもともと逼迫しており、数十人単位で代わりのスタッフを連れてくることはできません。

 現在入院している患者さんを転院させるのも現実的ではありません。もともと病床数が十分でないうえに、「コロナに感染しているかもしれない」患者さんを受け入れる病院はほとんどないでしょう。

 結論としては、「感染しているかもしれない」医療スタッフが、「感染しているかもしれない」患者さんをこれまで通り診るしかない、と思います。

 ここでのポイントは、原稿で清水教授が言っている通り、「今後も院内である程度の感染者が出ることを想定した上で、クラスター化につなげない努力をすること」です。

 これから入院患者や職員らがポツポツと発症したとしても、その人がほかの人に感染させなければ、集団感染は防げます。

 入院患者には、個室管理できなくても、少なくともマスク着用を徹底してもらい、自らの体内にあるウイルスが他の人に移動しないようにする。いろんな患者と接する医療従事者たちは、自分を媒介してウイルスが拡散するのを防ぐため、より高性能のN95マスクなどで完全防備する。

 病棟全体に対してこれくらいの感染防止策が徹底できれば、クラスターの根は断てると清水教授は言います。

深刻な物資不足

 しかし、現実は厳しいです。

 病院側によると、N95、ゴーグル、ガウンといった防護具の数が足りていません。少なくとも27人の入院患者に対応するだけの装備は用意できていない、と言います。

 県や市の担当者にも問い合わせましたが、感染者を専門に診る「感染症指定病院」や「帰国者・接触者外来」でもこれらの物資は不足しており、一般病院である一陽会病院に優先して提供できるかどうか、は未定のようです。

 出口の見えない話ではありますが、私はなんとかして一陽会病院に十分な物資を提供し、数十人単位での大規模クラスターの発生を防ぐべきだと考えています。

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