原告女性の提訴会見/馬奈木厳太郎氏による性加害事件

報道

 弁護士の馬奈木厳太郎氏から長期間にわたり性加害を受けていたとして、舞台俳優の女性が3日、都内で記者会見を開きました。女性は馬奈木氏に対し1100万円の損害賠償を求める裁判を起こしました。記者会見によると、馬奈木氏は女性の訴訟代理人という立場を利用し、執拗に性的関係を求めてきたといいます。女性は今の気持ちをこう語りました。「私は悲しんでいるのではありません。非常に怒っています

馬奈木氏による加害行為

 訴状などによると、女性は舞台俳優業の傍ら、自らのセクハラ被害を実名で告発し、「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会」(「なくす会」)を設立。会の代表として活動していました。馬奈木氏は、女性が過去に受けた演出家からのセクハラ被害についての代理人弁護士となり、解決にかかわりました。その後、「なくす会」の顧問となり、会の活動でも女性と接点をもつようになりました。2021年秋には、前述と別の裁判でも女性の訴訟代理人となり、その頃から女性への継続的な性加害が始まったといいます。
 馬奈木氏は、打ち合わせなどの名目で女性を頻繁に観劇や飲食に誘い出しました。 体を触ったり、卑猥な言葉を言ったり、卑猥な LINEメッセージを送るなどの加害行為を繰り返しました。女性が立場上抗いがたい状況だったことを利用して執拗に性的関係を求め、2022 年 1 月 31 日、女性側が不本意だったにもかかわらず性行為に及んだということです。

 精神的苦痛を受け、精神疾患が悪化した女性はその後、馬奈木氏に性的関係を拒否したい旨を伝えました。すると馬奈木氏は、担当事件への悪影響も言及しながら原告を攻めたてる LINE を深夜に連続して送りつけました。これを受け女性は22年2月、馬奈木氏を訴訟代理人から解任しました。ところが馬奈木氏はその後も、ハラスメント問題の専門家として研修や取材対応などの活動を継続し、原告をさらに苦しめました。女性は22 年11月、馬奈木氏が所属する第二東京弁護士会に懲戒請求を実施。ハラスメント問題の「権威」と目されていた人物が加害を行っていたという事態を深刻視し、今回の提訴に踏み切ったといいます。

馬奈木厳太郎氏

「エントラップメント型」の加害

 原告の女性は記者会見で今の気持ちを「非常に怒っています」と述べ、「馬奈木氏には生涯、弁護士として活動しないことを求めたい」とも話しました。さらに、このようにも言っていました。

 私と馬奈木氏の属性というよりも、環境と立場の問題だと思っています。年齢が(20歳以上)離れていることと、向こうが演劇界で権威を持っていたことです。私は上昇志向があり、演劇界で売れたいと思っていました。その気持ちを利用されたのだろうと思っています。年齢と権威勾配(力関係に明らかに差があること)が要因として大きいと思っています。

原告の女性

 女性側代理人の佐藤倫子弁護士は、馬奈木氏の行為を「エントラップメント型」のセクシュアル・ハラスメントだと指摘しています。「エントラップメント型」とは、自らの優位的立場を利用し、時には被害者の弱みにつけ込んで、性的関係から逃れられないようにする行為です。

 訴状にはこう書いてありました。

原告は、自身が高校生の時に演劇関係者からハラスメントを受けたことをきっかけに、これと闘うために弁護士に依頼したいと考え、被告(馬奈木氏)と知り合い、業務を依頼した。被告が「演劇界からハラスメントをなくす」と活動していることから、被告に弁護士を業務依頼することが、原告が強い思い入れをもつ演劇界からハラスメントをなくす活動のために不可欠であると思い、被告を信頼していたため、弁護士業務継続と引き換えに性的関係を求めるなどの加害行為には困惑させられ、その信頼を裏切られ、強い精神的苦痛を覚えた。

訴状

馬奈木氏による謝罪文公表のタイミング

 提訴記者会見の2日前の3月1日、馬奈木氏がインターネット上で謝罪文を公開しました。文面の一部を紹介します。

〈(弁護士会への)懲戒請求書を読み、私は初めてその方が私との関係を全く望んでいなかったこと、精神的苦痛を感じ困惑を覚えながら、弁護士という私の肩書や私との年齢差、人間関係への配慮から強く抗議できず、私の言動に苦しんでいたことを知りました。〉〈このような事態を起こした私は、ハラスメント講習の講師や、ハラスメント問題に関する取材を受けるといった資格がありませんので、今後はこれらの活動を一切行いません。〉〈被害者の方に対して、重ねて、深く謝罪いたします。〉

 女性側の弁護士たちによると、馬奈木氏は懲戒請求を受けた昨年11月以降、代理人を介して女性に謝罪し、関連する記事や動画をインターネット上から削除するなどしていました。それに対して女性側は昨年末、「動画や記事の削除だけでは不十分であり、事態の深刻さを踏まえた経過の報告を馬奈木氏が自ら行うべきだ」と求めていました。3月3日付で提訴することは事前に馬奈木氏側に伝えていたといいます。

 そうした中で、3月1日の謝罪文公開が行われたそうです。謝罪文の公開は事前に伝えられていたものの、文面は公表後に知ったといいます。

 ウネリウネラはこうした経緯についても、馬奈木氏側の対応には問題があると考えています。

記者会見を行った原告女性(会見者席の中央)。手前は会見に参加する記者たち=3月3日、東京地裁、牧内昇平撮影

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