雪が降っているのを最初に見つけるのは、いつも、こどもたちである。
大げさではない。本当のことだ。
今年も雪が降った。
朝起きると、ベランダにうっすらと白く積もっていた。
私はそんなことにお構いなく、書きものをはじめた。
つぎに起きてきた妻も、こどもの登校や登園、要するに時間の算段ばかりだった。
でも、こどもたちは、ちがった。
目を輝かせ、空中でワルツを踊る小さきものを見つめた。
ドアを開けてふかふかの地面を踏みしめ、きゅっきゅっと鳴るのを楽しんだ。
こどもの心が反応した。
心が応答したとき、ひとははじめて、何かを見つける。
◇◇◇◇◇◇
雪が降っているのを最初に見つけるのは、いつも、こどもたちである。
大げさではない。本当のことだ。
ユリ・シュルヴィッツの絵本、『ゆき』に書いてある。
灰色の空にひとひらの雪片が舞う。
ひょろなが帽子をかぶった紳士は「どうってことは ないな」という。
毛皮のコートを着込んだ婦人は「すぐに とけるわ」という。
テレビもラジオも「ゆきは ふらないでしょう」と口をそろえる。
でも、こどもたちは、ちがった。
口を大きく開き、窓から乗り出すようにして雪に手を振った。
こどもの心が反応した。
心が応答したとき、ひとははじめて、何かを見つける。
◇◇◇◇◇◇
雪だけではない。不安の影を最初に見つけるのも、いつも、こどもたちである。
大げさではない。本当のことだ。
ストックホルムの十六歳、グレタ・トゥーンベリさんは、ヨットに乗ってニューヨークへ旅をした。そして、「地球環境が危機に瀕している」とうったえた。
それを聞いた米国のドナルド・トランプ氏は、「落ち着け、グレタ」と言った。
反応するこどもと、反応しない大人。
心が応答したとき、ひとははじめて、何かを見つける。
◇◇◇◇◇◇
雪だけではない。希望の光を最初に見つけるのも、いつも、こどもたちである。
大げさではない。本当のことだ。
ユリ・シュルヴィッツの絵本、『ゆき』に書いてある。
満面の笑顔のこどもが、犬といっしょに街の中を駆け回る。
笑い声に誘われて、マザーグースの本屋から、おかしなおばさんやアヒルたちが、街へと繰り出す。雪は降り続ける。屋根が白い帽子をかぶる。街が埋もれていく。
こどもの心が反応した。
そのこどもの心に微笑み返すように、灰色の空が明るくなる。鮮やかなワスレナグサの色になる。
心が応答したとき、ひとははじめて、世界を変える。
『ゆき』ユリ・シュルヴィッツ=作、さくまゆみこ=訳(あすなろ書房)
コメント
[…] (大好きな『ゆき』については、クリスマスにこんな文章を書いたこともありました)→https://uneriunera.com/2020/12/25/yuki/ […]