「これはいかがなものか」と思いましたので、少し書きます。12月9日付の地元新聞(福島民報、福島民友)1面に以下のようなニュースが載りました。
来夏の参院選本県(福島県)選挙区で、自民党(福島)県連は、県医師会副会長で星総合病院(郡山市)の理事長の、星北斗氏を擁立する方針を固めた”
10日付毎日新聞にはこうありました。
星氏は毎日新聞の取材に「これまで命や健康に携わってきたことを評価して頂けたのならうれしいし、大変光栄なこと。正式に出馬要請があればきちんと検討した上で返答したい」と話した。
星氏ご本人も乗り気のようです。
しかしこの星氏、病院の理事長というだけではありません。もう一つ重要な職務を担っています。
福島県の「県民健康調査・検討委員会」で、座長を務める人なのです。
「県民健康調査」は、原発事故後の福島県民の健康状態を調べるためのものです。
代表的なものとして、子どもたちの「甲状腺検査」があります。放射性ヨウ素は甲状腺に集まり、がんになりやすいといわれています。特にその影響を受けやすい子どもたちの甲状腺を調べ、小さな腫瘍などがあるかないかを調べます。
「県民健康調査」の調査結果を吟味するのが、星氏が座長を務める「検討委員会」です。
では、放射線被ばくの健康影響(特に甲状腺検査)について、星氏が座長を務める検討委員会はどんな結論を出したか。県のホームページが大きく紹介しているのは、2016年3月発表の「中間とりまとめ」です。エッセンスはこれです。
〈総合的に判断して、放射線の影響とは考えにくいと評価する。ただし、放射線の影響の可能性は小さいとはいえ現段階ではまだ完全には否定できず、影響評価のためには長期にわたる情報の集積が不可欠であるため、検査を受けることによる不利益についても丁寧に説明しながら、今後も甲状腺検査を継続していくべきである。〉
「完全には否定できない」というものの、〈放射線の影響はない〉〈検査のデメリットは軽視できない〉というのが、検討委員会の基本軸なのは明らかです。
甲状腺検査は現在も継続中で、少なくとも200人以上が「がん」またはその疑いと診断されていますが、筆者(ウネリ)が検討委員会を取材したり、星氏のインタビュー記事を読んだりする限り、星氏の考え方は変わっていないように思います。
ここで言いたいのは、検討委員会の結果が正しいかどうかではなく、「その座長を務める人には中立性が求められている」ということです。
甲状腺検査の結果(放射線の影響があるかないか)は、福島の人びとにとって非常に重要です。また、 福島県だけでなく、日本政府・自公政権にとっては〈影響なし〉という結論のほうが好都合なのは明らかです。
放射線の影響があるかないか。それを判断する検討委員会はたとえて言えば「裁判所」であり、その座長の星氏は「裁判長」です 。
裁判長が、訴訟の一方当事者と極めて仲がいいことが発覚したら、どう思いますか。「あの裁判の判決は本当に適切なのか?」ということにならないでしょうか。
そして実際はどうかというと、
いわば「裁判長的存在」として中立性を求められている星氏が、自民党から立候補要請を受けそうで、本人もまんざらではないという状況のようです。
これでは、先ほど紹介した検討委員会の「中間とりまとめ」なども、中立性が疑われ、「政府や自民党に都合がいいように書かれている」と思われても、致し方ないと思います。
そんなことであれば、いっそのこと、検討委員会のメンバーを刷新して、もう一度「放射線の影響があるかないか」を吟味した方がいいのではないでしょうか。
今日の話はこれで以上です。
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