ウネリ旧知の小学校教諭、有馬佑介さんの寄稿、2本目です!

有馬さんは東京都国立市にある桐朋学園小学校の1年生のクラスを担任する先生です。前回は、3学期が始まった日の教室の様子を書いてくれました。記事はこちら↓

寄稿エッセイ・小学校の先生から

今回も、教室での何気ない日常をやわらかなタッチで書いてくれています。どうぞ!


【有馬佑介さんからいただいた文章】

 東京の郊外の小学校の1年1組での、ある日のひとこまです。

 それは木曜日の午後のことでした。天気予報より早く、お昼過ぎに降り出した雨。それを横目に見ていた子どもがひとこと、「アリック、雪になった。」と言いました。窓の外に目をやると、雨がいくぶんか大粒になっていましたが、雪には見えませんでした。「雪ではないんじゃない。雨だよ。今日は雪にはならないんじゃない。降ってほしいけどね。」そう言いながら、一度止めた手をもう一度動かしながら、黒板に算数の式を書いていきました。予定していたところまで算数がすすむか心配だったのです。

 しばらく授業をすすめていると、また子どもの声。「やっぱり雪だよ。」子どもたちの目が一斉に窓の外に向きます。お願いだから授業に集中してくれよと思いながら、ふたたび窓の外を見ましたが、やっぱり大粒の雨に見えました。「雨でしょう。今日は降らないよ。さあ、授業に集中しよう。」

 「いや、やっぱり雪だって。」授業に戻ろうとした僕を引き留めるような大きな声がしました。声の主はみきさんでした。驚きました。普段は授業中に大きな声なんて出さない子です。みきさんまで、と少し苛立ちながら、仕方なくまた窓の外を見ました。さっきの雨よりどこか白く見えました。

 「まさか」と思ったことが表情に出たのでしょう。子どもたちも一斉にまた窓の外を見ました。するとさっきまで雨だったはずなのに、空から降ってくるそれは、だんだんと雪に変わっていきました。時間にすると短い時間だったことでしょう。でも、雨が雪に変わっていく様子は、まるでスローモーションのように見えました。見とれてしまいました。

 「ほんとうだ、雪だ」僕がつぶやくのと同時に「雪だ!雪が降ってきた!」と教室のあちこちから声がしました。子どもたちの目は窓の外にくぎ付けです。みるみるうちに雪は勢いを増しました。

 初めに席を立ったのは、ふだんはおとなしくて目立たない小柄なのりくんでした。飛び上がるように席を立って、一気に窓際に走っていきました。それはあっという間の出来事でした。窓に両手をついて、大きな目をさらに大きく真ん丸に開けて、彼はこう言いました、「学校でみんなで雪を見るのは初めてだね!」

 その言葉がすごくうれしくて、僕はもう白い雪に白旗をあげました。算数はおしまいです。あきらめました。「残りの時間はみんなで雪を見よう。」教室に大歓声があがりました。子どもたちがテラスに出ていきます。35人の子どもたちはみんな空を見上げて、空から落ちてくる雪を眺めていました。僕はそんな子どもたちの横顔を眺めていました。

 東京の郊外の小学校の1年1組での、ある日のひとこまでした。


【ウネリウネラから一言】

ウネリウネラからの感想は要らないですね。ユリ・シュルヴィッツの絵本『ゆき』を思い出しました。

(大好きな『ゆき』については、クリスマスにこんな文章を書いたこともありました)→https://uneriunera.com/2020/12/25/yuki/

有馬さんは教室でこどもたちに本を読むそうですが、『ゆき』は読んだことあるかな、こんど読んだら盛り上がるだろうな、などと思いを巡らせました。

今回も心温まる文章をありがとうございました。


寄稿へのご意見、ご感想をお待ちしています。

コメント欄への書き込みのほか、uneriunera@gmail.com まで、どうぞお寄せください。

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