【原発事故汚染水の海洋放出】福島県内で子育て中の方から国・東電への問いかけ

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 東京電力福島第一原発にたまる原発事故汚染水の海洋放出について、福島県郡山市内で8月30日、市民と政府・東電の担当者との意見交換会が開かれました。筆者が最も印象深かったのは、郡山市内で子育て中の人が政府と東電に語りかけた言葉です。意見交換会の詳報に先立って、この方の言葉を紹介します。(文・写真/ウネリウネラ 牧内昇平)


「人として、傷つきを感じていますか?」

 漠然とした質問で申し訳ないんですが、郡山、この近くに住んでいる者です。このたびは、このような会をご用意いただき、ありがとうございます。二つ質問させていただきます。具体的にすぐお答えしていただくような質問ではないので、胸にお持ち帰りいただき、次につないでいただければと思っています。
 先日、この「処理水」、「汚染水」に関して対話の場を開く機会がありました。そこで感じたことは、今回の海洋放出は県民や国民、人が大切にされていない中での決定だと感じている人がたくさんいるということでした。
 24日に海洋放出が始まったとき、それはとても唐突に感じられました。震災当時0歳と2歳今では12歳と14歳になった子どもと、一緒にびっくりしながらニュースを見ていました。子どもも驚いていました。12年間かけてやっと取り戻してきたものは、目に見えないこともたくさんあり、言葉では言い尽くせないほどのものです。この知らせに、とても踏みにじられているような気持ちになり、もう何を言っても無駄じゃんと絶望しました。とても悔しかったです。

 郡山市在住の方はまずこう語りました。そして、この日の意見交換会に参加していた経済産業省と東京電力の担当者に対して、一人ひとりの名前を呼んで、問いかけました。

 木野さんは「私くらい福島に残ろうかなあ」と、これまで福島に住まわれていることを知りました。このような意見交換会、説明会のたびに、こうして様々な人たちから怒りや苦しみや悲しみ、絶望感、無力感などをぶつけられた時、木野さん、高原さん、佐藤さん、ほか今日いらしている方たちは、ご自身が人として、傷つきを感じていますか?
 長い目で見たとき、福島の海から「処理水」を流すということは、福島県民を、国民を、大切にする結果に結びつきますか? 人を大切にするということはどういうことだと思われますか?
 これはすぐに答えられないことだと思います。「大切にしています」とか言ったらまたこっちからやじが飛ぶと思いますので。お持ち帰りいただいて、また次回とか何かの機会にお話しいただけたら私は嬉しいなと思っています。よろしくお願いします。

「子どもたちに謝罪して、お願いしているのでしょうか?」

 この方はさらに発言を続けていきました。

 岸田首相は「処理水の処分に関わる風評被害などに対処すべく、処分が完了するまで政治として責任を持って取り組む。今後数十年の長期にわたろうと全責任をもって対応する」。東電の小早川社長は「地元の信頼にこたえるためにも、重い責任を自覚し、県民や国民の信頼を裏切ってはならないとの強い決意と覚悟で、私が先頭に立って対応にあたる」。お二人はこう言っていると新聞に書いてありました。
 海洋投棄は30年から40年続くと聞きました。ということは、この発言をした方たちは恐らくその時、生きておられるか分かりませんよね。すると、誰がその強い決意と覚悟、意志を受け継ぐのでしょうか? 誰かと約束はされていますか? そのあたりの具体的なお話までうかがいたいです。
 40年後、そしてその先、担うのは今の子どもたちです。子どもたちに今回のことを正直に伝えて、意志を受け継いでもらえるか確かめて、「申し訳ないけど後は頼みます」と謝罪して、お願いしているのでしょうか?
 今、「責任をもって対応に当たる」と言うなら、40年後のことも想定して、その覚悟と決意を受け継いでいくような意志を示していただけるよう、よろしくお願いします。岸田総理大臣はじめ西村経済産業大臣、東京電力の小早川社長にも、ぜひよろしくお伝えください。お持ち帰りいただいて、伝えていただきたいと思います。

「子どもたちにどう伝えればいいのか…」

 最後に、私は今一人の親として、子どもたちに今回のことをどう伝えていいかいまだに分からず、すごく困っています。こうやって反対している人もいれば、放出がされてしまっていて、「安全だ」と説明される状況を、子どもたちにどういう風に伝えていいか分からないです。
 子どもたち堂々と示せるような、嘘で嘘を固めていないような、子どもたちがこんな大人になりたいと思えるような、こんな未来に暮らしていたら幸せだという日本を、世の中を、東電や国の皆さんを含め、みんなで一緒に作っていきたいので、どうか心ある対応を継続的にお願いします。以上です。

【ウネリウネラから一言】

 参加した約150人の市民たち、そして政府・東電の担当者たちが、この方の言葉にじっと耳を傾けていたと思います。この方は「持ち帰って考えてください」と語りかけました。政府・東電の担当者が今後どのように応答するのか、注目したいと思います。

 「責任」という言葉は、英語では「responsibility」です。「全責任をもって対応する」と言うなら、政府・東電にはrespond応答する義務があります。


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