【汚染水海洋放出】反対する市民たちと福島県庁との話し合い

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 東電福島第一原発にたまる汚染水の海洋放出に反対する市民たちは、20日午後のデモ行進後、福島県の内堀雅雄知事宛てに海洋放出をやめるよう求める要請書を渡しました。

 実際に要請書を受け取ったのは県庁原子力安全対策課の課長です。市民たちと課長は短時間だけ話し合いを行いました。その時のやりとりで興味深かったところを紹介します。(文・写真/ウネリウネラ牧内昇平)

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「海に流さなければ風評も起きない」

 県知事宛ての要請書を渡したのは市民グループ「これ以上海を汚すな!市民会議」(共同代表・佐藤和良氏、織田千代氏)のメンバーたちです。原子力安全対策課との話し合いには20人ほどが参加しました。

県原子力安全対策課と話し合う市民たち=6月20日、福島県庁

 市民たちと原子力安全対策課長とのやりとりを紹介します。

参加者:海洋放出しかもう手がないと福島県が考えているのか。それを知りたいです。

課長:政府が2年前に海洋放出の方針を決めました。それに対して風評をはじめとして懸念する声が大きいですので、そこは我々として国に対して、「取り組んでいただきたい」と言っております。

参加者:海に流さなければ風評も起きないんじゃないですか?

別の参加者:そうです!

課長:国の説明としては、やはり処理水を…。

参加者:国じゃなくて県の意見が聞きたいです。

課長:処理水を地上に保管することが難しくなっていると…。

佐藤和良共同代表:課長、それはそうではないんだよ。実際には燃料デブリは取り出せないわけで、デブリ保管庫をあんなに広大な土地に建てる必要はないわけだ。さらに言えば現状でも(汚染水をためる)タンクは来年6月までは満杯にならないわけだし。なにも急いで、「夏に放出する」という国の言いなりになる必要はないと思いますね。もうあと1年くらい待って、そのあいだにちゃんと説明したらいいでしょうと。積極的に説明会を開いて住民に説明してよと、県が国に対して言えないんですか?そうすればもっと議論も深まるし、納得するところもあるかもしれませんよね。

課長:……。

 残念ながら予定していた時間が終わったようで、この大事なところで面談は打ち切りになってしまいました。最後にはこんなやりとりもありました。

参加者:あなたはどう考えるの? あなたにも子どもさんがいるでしょ? 国や福島県の考えではなくて、自分の考えはないの? あなた自身は海洋放出に賛成なの?反対なの?

課長:私自身の考えはないです。仕事上の意見は言いますけれども、私個人の考えというのはありません。皆さまとの話し合いの内容は知事にきちんと伝えます。

【ウネリウネラから一言】

 筆者は県と市民との話し合いをもっと聞きたかったです。市民の側は自ら調べてきたことをぶつけ、海洋放出が本当に必要なのか、安全なのかを問いただしました。話し合いは途中で終わってしまいましたが、課長が返答に窮する場面もあったと筆者は考えています。

 本当に地上での保管は難しいのか。少なくともあと1年くらいは時間の余裕があり、そのあいだに議論をもっと深めることは可能ではないか。佐藤和良氏の指摘に筆者は共感します。この佐藤氏の発言の直後に面談が終わってしまったのですが、県の課長は返答に窮したのでなければきちんと回答すべきだったと思います。

(※面談に参加した県議が「時間が来ましたので…」と打ち切りました。その県議も海洋放出には反対意見を述べており、県をかばうために面談を打ち切ったのではありません。)

 もしも本当に返答に窮してしまう部分があったとしたら、その点について県庁は早急に調べ直すべきです。国や東電の説明を鵜吞みにするのではなく、反対意見も聞くことを強く求めます。

 市民たちとの面談で課長が話していたのは主に東電や国の説明です。本来であれば、福島県が自分たちで汚染水の問題を検討し、海洋放出すべきか否かを判断すべきでしょう。「国が考える問題」とだけ言い、判断を国に全面委託してしまうのは県民に対して無責任な態度ではないでしょうか。

 追加でもう一つ。「これ以上海を汚すな!市民会議」が中心になり、内堀雅雄知事宛てに「ハガキ作戦」というものを行っています。県知事宛てにハガキを出し、「海洋放出をやめて」とうったえる活動です。これについてこの日、こんなやりとりがありました。

参加者:私たち県民の気持ちはきちんと受け止めてくださっているのでしょうか? ハガキを出したりしているんですけれども、県からの答えが全然返ってきていないんですよ。それについては、どうお答えいただけますか?

課長:皆さま方からハガキをいただいたり、こうやって要請を受けたりしております。私もハガキには目を通しております。県内だけでなく県外の方も、放射性物質について心配されているんだなと受け止めております。『反応がない』ということなんですが、知事が国や東電に対してこういった意見があるということで要請をしております。

参加者:国への要請だけですか?

課長:県民の声を我々が確認して、国への要請の中に。

参加者:県民は『放出に反対だ』と言っているんですよ。県知事にはそれを国にちゃんと伝えてほしいですよね。伝えてくださっているんでしょうか?

課長:いろいろな意見があるということは伝えております。

参加者:いろいろではなくて、『反対だ』と伝えてくださっているのでしょうか?

課長:当然、反対もあれば賛成もありますし…。

参加者:県民の多くは『反対だ』と言っているんですよ!

 昨年の筆者の取材によれば、県知事宛てに出した手紙は県庁秘書課に届きますが、そこから知事に直接渡るのではなく、内容に応じて担当部署のほうに回されます。海洋放出に関する手紙は恐らく原子力安全対策課に届くことでしょう。

 原子力安全対策課の課長は自分が目を通すだけでなく、内堀氏にハガキの現物を渡してほしいです。直筆の文章に目を通すのと、「おおむねこんな意見がありました」というざっくりした報告を聞くのとでは、だいぶ印象が異なると思います。

 事態は急を要しています。国は海洋放出の時期を「春から夏」とし、東電は海洋放出設備の試運転まで始めました。福島県は早急に海洋放出の是非を自ら検討すべきでしょう。

福島県庁に向かって海洋放出をやめるようにうったえる市民たち=6月20日、福島県庁前

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