「ALPS処理水について全国規模での広報を強化いたします。」
政府はこんなことを言いだしました。実際、新聞広告だけでなくテレビCMでも、海洋放出のことを発信しはじめました。テレビCMは今月13日から2週間程度流れるようです。テレビを見る習慣がない人もいると思うので、今日はその内容を紹介します。
テレビCM・実写篇30秒Ver.
カット | ナレーション | 字幕 |
ALPS処理水って何? | ALPS処理水って何? | |
本当に安全? | 本当に安全? | |
なぜ処分が必要なんだろう? | なぜ処分が必要? | |
海に流して大丈夫? | 海に流して大丈夫? | |
ALPS処理水について国は、 | 復興を進めるために。 風評を起こさないために。 | |
科学的な根拠に基づいて、情報を発信。 国際的に受け入れられている | ALPS処理水について国は、科学的な根拠に基づいて、情報を発信。 国際的に受け入れられている考え方のもと、 | |
考え方のもと、安全基準を十分に満たした上で海洋放出する方針です。 | 安全基準を十分に満たした上で海洋放出する方針です。 | |
みんなで知ろう。 考えよう。 ALPS処理水のこと。 | みんなで知ろう。 考えよう。 ALPS処理水のこと。 | |
※画像は、テレビCMと同じ内容を閲覧できる経産省ウェブサイトから引用。
皆さん、このCMについてどう思いますか? ぜひご意見を聞かせてもらいたいです。まず、ウネリウネラが感じたことを書きます。
【ウネリウネラの意見】
①「考えよう」と言いつつ、答えが出ている
このCMのキャッチコピーは、〈みんなで知ろう。考えよう。〉です。
でも、同時に、「国は安全基準を満たした上で海洋放出します」とも言い切っています。
これでは本当の意味で「考える」ことはできません。
「海洋放出」という答えがすでに用意されているからです。
ウネリウネラが家族会議を開いたとします。
「今年は温泉に行くことに決めた。なぜ私たちがそう決めたのか、考えなさい」
親がこう言ったら、子どもたちはなんと言うでしょうか?
「なんで勝手に決めた後で考えさせるんだよ。こっちにもどこがいいか考えさせてよ」と言うでしょう。
温泉に行くと決めた後に、「なぜ温泉に行くのか?」と考える人はいません。目的地がまだ決まっていないから、「さあ、どこにしようか」「こっちもいいかな」とあれこれ思案するのです。
本当だったら、CMは「福島第一原発にたまる汚染水(政府は「ALPS処理水」と呼ぶ)をどうすべきだと思いますか? みんなで考えましょう」と呼びかけるべきでしょう。もしくは、「国は海洋放出する方針ですが、どう思いますか? みんなで考えてください」などでしょうか。
②肝心の「原発」や「福島」が出てこない
CMの前半は、海洋放出について人びとの頭に「?」が浮かぶシーンが4つ続きます。それが終わると、きれいな砂浜が出てきて、その砂浜をバックに政府が言う「科学的な情報」が入り、最後に青空が出てきます。
「情報」は2コマだけです。全体で30秒しかないので、CM放送中にじっくり読んで理解できる人は少ないでしょう。要するに、CMの目的は一定のイメージを刷り込むことですよね。
では、CM中にはどんな場面が描かれているのか。
「青い海」と「青い空」。挿入されているのはこの2つの映像です。
「きれいなもの」しか出てこない。放射性物質で汚染された水を海に流すか否かが問われているのに、「きれい」というイメージを植えつけようとしています。不思議です。
そういう疑いをもってCMを再び見ると、他のところも気になってきます。
「ナレーションは、とても清涼感のある声だなあ」
「使われている音楽も、なんだか心地よいものだなあ」
そもそも、汚染水が問題になっているのは原発事故が起きたからです。それなのに、このCMには、問題の発端となる「原発事故」「放射能」を想起させる映像は一つもありません。
「爆発した福島第一原発」、「山積みになったフレコンバッグ」。そういうものは一切出てきません。これでいいのでしょうか?
③謝罪の言葉がない
原発事故は誰のせいで起きたのでしょうか。
ウネリウネラは、原発を動かしていた東京電力だけでなく、国にも責任があると考えています。
それは国自身も認めていることです。電力会社と一緒に安全神話をつくりあげ、原発政策を推し進めてきた「社会的責任」があると、法律にも書いてあります。また、今年6月の最高裁判決は「国の法的責任」を認めませんでしたが、この判決は「おかしい」という声は多方面から上がっています。
その原発事故が起きたせいで汚染水が発生しているのです。それを海に流すというなら、まず必要なのは「謝罪」ではないでしょうか。
皆さまのご意見を募集します
海洋放出問題について、皆さまのご意見を募集します。長いものも短いものも、海洋放出を支持する意見も反対する意見も、なんでも大丈夫です。お待ちしております。
コメント
いつも有益な記事をありがとうございます。
ちょうどテレビでAlps水のCMを見ました。
美しく、害はないことを強調してました。
「風評被害」の「風評」という表現にも疑問を抱いてます。
それでは、単なる噂としか思えなくなります。
加害被害に詳しい信田さよ子先生は、加害者には謝罪責任、説明責任、再発防止が必要と述べてますが、企業や国の行ったことも同じと思います。
キレイにキラキラ表現で誤魔化しては欲しくないことです。
[…] […]