きのう福島地裁で判決があり、原告(福島の親子たち)の敗訴が言い渡された「子ども脱ひばく裁判」の関連です。判決後、原告団・弁護団は、福島市内の会議室で集会を開きました。
集会では、記者の一人から「今日の判決結果を受けて、お子さんにどう声をかけるか」との質問が出ました。その際の原告の皆さんの言葉が印象的だったので、お伝えしたいと思います。
・長谷川克己さん
15歳になりました息子と、原告として参加しております。
裁判所に来るまでは、「世の中こんなに不実不正なことが起こっても、正しいことが通ることもある」ということを息子に伝えられるのかなと思っていたんですけども……。
いま彼に伝えたいことは、先ほどちょうど、手元の紙に書いておりました。
「『正直すぎるとバカをみる世の中』ということは決してあってはならない。お父さんはこれからもそうやって生きていく」
こういうことを伝えたいと思っております。
・佐藤美香さん
「勝利」ということしか目の前になかったので、正直、体の力がぬけました。私は病気を患っていますが、いま現在14歳と、17歳の息子がおります。今日の結果はとても残念ですが、「お母さんはこれからもがんばるよ」と息子に伝えます。
・荒木田岳さん
私は、この裁判はそんなに難しいことを語っていないと思っています。法令に従った対応を適切に行っていなかった。それによって私たちは大量に被ばくさせられた。あるいは被ばくさせられた可能性がある。避けることができた無用な被ばくをさせられてしまったんだということ。それが本来、大筋としてあったはずなんです。判決は、そこに対して全く答えるものがなかったわけです。
少なくとも健康への影響の有無については、「まだ知見が一致していない」などと逃げるかなというのはありました。でも、少なくとも法律に定められた手続きがあって、それを守らなかったために私たちが被ばくしたという事実がある。これは逃れられないと思うんですよ。本来、言い逃れできないはずなんですよ。にもかかわらず、ああだこうだ言って結局本筋に踏み込まなかった、というのが今回の判決の本質だろうと思います。「こういう不正義を許してはいけないんだ」ということをこれからも言い続ける必要があると思う。
だから、「重箱の隅をつつくのではなくて、大きな道をちゃんと指し示して進んでいかなければダメだ。今回の判決は、そういうことの薬にしたいな」という風に、子どもたちには伝えたいと思います。
・橋本俊彦さん
現状、なにも原発事故は終わっていませんし、次の事故が起きることも十分考えられる。その中で、こういう判決が出た。子どもを含めた私たちの健康が本当に脅かされているということを、つくづく認識させられます。これから原発なき社会を作っていかなきゃいけないけれども、予防原則という考え方が必要なことを改めて認識しました。それを子どもに伝えたいと思います。
※予防原則=科学的に見解明な部分が残っていても、健康や環境に重大な影響を及ぼすようなことはしないでおく、という原則
・横田麻実さん
希望をもって今日の判決に臨んだのですけども、とても残念というか悔しいというか、正直、言葉が見つからない感じです。先ほどちょっと息子と話をしました。「仕方ない、という言葉では済まされない。真っ当な判決ではないんじゃないか」というのが息子の感想でした。私も本当に、悔しいとか悲しいとか怒りというか、ポッカリ穴が開いちゃったような感じというのが、正直な気持ちです。ただ、自分たちの思いが正しいというのは、これからも続けて言葉に出していきたいなと思います。
加えて、集会の最後にマイクを握った原告団長、今野寿美雄さんの言葉を紹介します。
・今野寿美雄さん
今日はこんな判決が出ましたけども、子どもを守るということは、これからも続けていかなければなりません。今日は不当判決で、腹が立ってしょうがないですけども、子どもたちへのさらなる愛情と支援、応援を、みなさんにお願いしたい。大人の責任として、子どもたちを守っていきましょうよ。高裁に移るかどうかはまだわかりませんが、いま市民の間でできることをやりましょう。(裁判で原告側が主張した被ばくリスクなどについて)、「事実は事実だ」ということを広めて、子どもを守れる施策を少しでも考えながら、みなさんの力を借りて進んでいきたいと思います。
【ウネリウネラから一言】
3月1日時点での「子ども脱被ばく裁判」の原告は、合計160人です。
裁判の原告として闘うのは、大変なことだと思います。金銭的、時間的なこともありますし、何よりも心理的な負担が大きいでしょう。国や県を相手取って裁判を起こしていることが周りに知られたら、白い眼で見られるかもしれません。
そうした負担に耐えながら、原告の人たちは7年間裁判を続けてきたのだと思います。一緒に闘いたい気持ちはあったけれど、原告団に加われなかった人もたくさんいるでしょう。
原告たちの気持ちを、国や県、裁判所は正面から受け止めたのか。疑問に思えてきます。
今回は以上です。
原告団は控訴する方向で考えているようなので、その動向を見ていきたいと思います。これからも、この裁判のことを考えます。
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