子ども脱被ばく裁判判決(福島地裁)

本日午後1時30分、「子ども脱被ばく裁判」の判決が、福島地裁(遠藤東路裁判長)で言い渡されました。結果は、原告(福島の親子たち)の「敗訴」でした。

法廷を出てきた原告団は二つの旗をかかげ、裁判所の外で待っていた仲間たちに結果を伝えました。

「不当判決」

「子どもの未来を閉ざす」

原告団長の今野寿美雄氏が、裁判所の建物をふり返って叫びました。

「非常に、残念な結果です。裁判官、なにを見ていたんだ! 子どもを守らない未来なんか、ありゃしないんだよ。ふざけんな!」

原告が裁判を通じて、被告(国や福島県、県内の市町村)に求めたのは、以下の2つです。

①いま現在、放射線被ばくの心配をしなくていい安全な場所で学校教育を行ってほしい。

②3・11当時、子どもたちを無用に被ばくさせた行政の責任を問いたい。(具体的には、原告たちが受けた精神的苦痛への賠償として、一人につき10万円を求める)

判決はどちらの訴えも退けました。

原告の訴えを退けた理由を、一文で書くと、以下のようになります。

訴え①について)

「いま現在、人の健康維持に悪影響を及ぼすほどの放射線に被ばくする“具体的な危険”が存在するとは認められないから」

訴え②について)

「国や県の事故後の対処は、違法とまでは言えない」

SPEEDIの情報を伝えなかったことも、安定ヨウ素剤を飲ませなかったことも、「違法であったとはいえない」そうです。

詳細は後日書きますが、ウネリウネラが判決文のエッセンスをまとめた「判決要旨」を読んだ印象は、これです。

「福島の親子たちの不安や苦悩を、正面から受け止めていない判決」

判決要旨から、象徴的なところを二つ挙げてみます。

その①「不溶性セシウム」の危険性をどう受け止めるか。

原告は、被ばくの健康リスクを訴える理由の一つとして、以下のようなことを主張してきました。

・放射性物質の一つ、セシウムは水に溶ける「水溶性」と考えられてきたが、実は水に溶けない「不溶性」にもなることが分かってきた。水溶性のセシウムは、体に取り入れてしまっても(内部被ばく)血液などに溶けて、割と早く体の外に出ていく。だが、不溶性はいつまでも体に残り、健康に害を及ぼす。だから、より一層の注意が必要であり、福島の親子が健康に不安を抱くことには、科学的根拠がある。

これに対し、判決はこう指摘しています。

・不溶性のセシウムの健康に与えるリスクの程度は、現状では科学的に解明されていない。したがって、引き続き調査研究などの状況を注視する必要があるとしても、ただちに現行の措置が不当だとは言えない。

注目すべきは、水に溶けないセシウムの健康リスクがどこまで高いのか、今の段階で確固たることは言えない、ということです。それは、判決も認めています。リスクが未知数であるならば、悪い事態の場合を予想して、いっそう子どもを守る方向に舵を切るべきだと思うのですが、判決はそういう判断をしていません

この点、判決後の集会で、原告側弁護団長の井戸謙一氏はこう話していました。

「裁判所には、子どもの健康と今後の人生にかかわる問題であるという位置づけを自覚して、検討してほしかった」

その②山下俊一氏の発言について

原告である福島の親子たちは、原発事故が起きた後、自分たちを被ばくから守らなかった国や県に対して怒っています。特に怒っていることの一つが、「山下俊一氏の発言問題」です。

山下氏は原発事故後、放射線健康リスク管理の専門家として福島県に招かれ、県内各地で講演をして回りました。その時、いくつかの会場でこんな趣旨の発言をしたことが、大問題になりました。

「(放射線量は)毎時100マイクロシーベルトまでなら全く心配いりませんので、どうぞ胸を張って歩いてください」

原告は、この山下氏発言について、以下のように主張してきました。

・国際機関の評価によれば、毎時100マイクロシーベルトだと、福島県民200万人のうち17万5千人がガンで死ぬことになり、それを「安全」と言うのは明らかに誤りだ(その証拠に、山下氏を招いた福島県はその後、「あの発言は10マイクロシーベルトの誤りだった」と訂正している)。専門家である山下氏がなぜ、こんな事実と違うことを、県内各地で言い続けたのか。それは、単なる言い間違えではなく、福島の住民を避難させず、経済復興を最優先させるためだった。

この山下氏の発言などによって福島県内は混乱し、住民は無用な被ばくを強いられた、と原告は訴えましたが、判決はこう指摘しました。

・山下氏の発言は、一般聴衆に対する誤解を招く内容や不適切な表現を一部に含むものではあったが、科学的知見を一般の参加者向けに平易に説明したものであり、一部の発言については訂正もしていて、積極的に誤解を与えるようとする意図はうかがわれない。

 アドバイザーとして福島県に招かれるほどの専門家が、こんな単純な言い間違えを、複数の講演会場でくりかえすでしょうか? 一般の参加者向けなら、科学的知見をねじ曲げてもいいのでしょうか? 

原告側代理人の柳原敏夫弁護士は、判決後の集会でこう話しました。

「とにかく山下氏の応援団のような判決だ……」

以上、ウネリウネラが

「福島の親子たちの不安や苦悩を、正面から受け止めていない判決」

と考えた点を二つ書いてみました。

地裁判決を不服として控訴するかどうかは、今後原告団と弁護団で話し合って決めるそうですが、原告団長の今野寿美雄氏は「個人的な意見としては、最後まで闘う」と語っています。「子ども被ばく裁判」がこれからどのような展開になるか、取材したいと思っています。

2021年3月1日 福島地裁前=牧内昇平撮影

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