【原発事故汚染水の海洋放出】大熊町から避難している人の思い ~「海の日アクション」の一幕~

新着情報

 原発事故汚染水の海洋放出に反対する「海の日アクション」について、先日レポートしました。スピーチした参加者たちの中には、福島第一原発が立つ大熊町から会津若松市へ避難している馬場由佳子さんもいました。

 馬場さんは会津若松での避難暮らしが続いている現在も、大熊町に住民票を残しています。大熊町民として今どんな気持ちなのか。集まった大勢の市民の前で話してくれました。(文・写真/ウネリウネラ牧内昇平)

関連記事は以下:


「大熊の復興」ってなんだよ!

 心臓が飛び出しそうですが、がんばりますのでよろしくお願いします!

 馬場さんはこのように切り出してから話を続けました。

 子どもを持つ母親として、汚染水を海に流すことに反対です。7月6日に会津で、国・東電との意見交換会がありました。国の方は「汚染水をためておくタンクの容量がいっぱいなので流すしかない。廃炉のためにデブリを取り出さなければならない。そのためにはもう敷地がない」とおっしゃっていました。
 参加者の方は「大熊と双葉の中間貯蔵施設の土地があるじゃないか」と聞きました。そうしたら経産省の方は「大熊と双葉の住民の方の心情を考えると流さざるを得ない。大熊、双葉の復興の妨げになる」とおっしゃっていました。

 ここでいったん話を止めた馬場さん。あふれる気持ちの中から言葉を選び出すようにして、次のように言葉を続けていきました。

 大熊町民としては……。なんだろう……。
 大熊の復興ってなんだよ、と思いました。大熊の復興のためにってなんだよ、と思いました。
 大熊の復興のために汚染水を流すって……。それが大熊の人たちの復興の手助けになるって……。
 大熊の復興って、なんですか? 
 大熊の人たちをそういう時ばかり、そういう時ばかり……。私たちの気持ちを考えると流さなきゃいけないとか。「ふざけんな!」なんです。すみません。口が悪くて。でも本当にそう思います。ちゃんと放射線量を測ったり、除染したり、汚染水を流すのではなくて私たちの意見を聞いたり。そういうことが大熊の復興につながると思います。

 会場からは多くの拍手がわき起こり、「そうだ!その通りだ!」というかけ声が上がりました。

 この暑い中、「その通り!」と言ってくれて、きょうは本当に来たかいがありました。ありがとうございます!

 馬場さんはそう答え、一礼してマイクを進行役の人に返しました。


【ウネリウネラから一言】

 福島第一原発は大熊町と双葉町にまたがって立っています。この2つの町の中に「タンクにたまる汚染水を早くどうにかしてほしい」という声があるのは事実です。その証拠に両町の議会は2020年9月、「汚染水の処分方法を早く決めるべきだ」という意見書を可決しています。

 しかしこの意見書はもう3年近く前のものです。この間、事故をおこした原子炉の処理は予定通り進んでいませんし、逆に1号機では「圧力容器ぐらぐら問題」が発覚しています。事情が変わってきているのですから、町民のどのくらいが海洋放出に賛成なのかはきちんと調べてみなければ分かりません。

 大熊町民の一人である馬場さんは少なくとも、汚染水は海に流すよりも陸上で保管すべきではないかと考えています。「海の日アクション」が終わったあと、馬場さんは筆者にこう話してくれました。

 私も含めてほとんどの大熊町民は、国や東電が言うようにあと30年や40年で福島第一原発の廃炉が終わるとは信じていないと思います。中間貯蔵施設にある除染廃棄物が約束通り県外で処分されるかどうかについても、楽観していないでしょう。そんな中で、国は自分たちに都合がいい時だけ「大熊町民のために」と言います。私たちを口実に使うのは許せません。

 都合がいい時だけ私たちを口実に使うな――。政府は馬場さんのこの言葉を真摯に受け止めるべきです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました