【3・11政府追悼式】首相が交代しても変わらない「式辞」の中身

報道

3月11日、政府は「東日本大震災十周年追悼式」を東京・国立劇場で開きました。昨年の今ごろ、ウネリウネラは例年の政府追悼式で安倍晋三首相(当時)が読み上げてきた「式辞」の問題について記事を書きました。

3.11政府追悼式について

3.11政府追悼式 首相の式辞はこれでいいのか?(上)

3.11政府追悼式 首相の式辞はこれでいいのか?(下)

3.11 首相の追悼の辞に入った「五輪」という言葉

首相は菅義偉氏に替わりました。今年はどうしようかなと思っていましたが、式辞の内容を確認した結果、やはり何か書かなければいけないと感じました。


2021年政府追悼式の首相式辞

まずは、菅首相が読み上げた式辞の全文を紹介します。首相官邸のHPにアップされています。なお、わかりやすいようにウネリウネラのほうで、①などの段落番号と、各段落の「テーマ」を書き加えておきました。

①「哀悼
 本日ここに、天皇皇后両陛下の御臨席を仰ぎ、「東日本大震災十周年追悼式」を挙行するに当たり、政府を代表して、謹んで追悼の言葉を申し上げます。
 かけがえのない多くの命が失われ、東北地方を中心に未曾有(みぞう)の被害をもたらした東日本大震災の発生から、10年の歳月が流れました。
 最愛の御家族や御親族、御友人を失われた方々のお気持ちを思うと、今なお哀惜の念に堪えません。ここに改めて、衷心より哀悼の誠を捧(ささ)げます。また、被災された全ての方々に、心からお見舞いを申し上げます。

②「復興
 震災から10年が経ち、被災地の復興は、着実に進展しております。地震・津波被災地域においては、住まいの再建・復興まちづくりがおおむね完了するなど、復興の総仕上げの段階に入っています。
 原発事故によって大きな被害を受けた福島の被災地域では、昨年に、帰還困難区域を除く全ての地域の避難指示が解除されるとともに、帰還困難区域でも初めて一部で避難指示が解除されるなど、復興・再生に向けた動きも着実に進んでいます。
 一方で、いまだ2千人の皆さんが仮設住宅での避難生活を強いられるなど、長期にわたって不自由な生活を送られています。
 また、被災地では、被災者の心のケア等の課題が残っていることに加え、一昨年の台風19号、昨年来の新型コロナ感染症に続き、先般も大きな地震が発生するなど、様々な御苦労に見舞われています。特に、新型コロナ感染症により、地域の皆様の暮らしや産業・生業(なりわい)にも多大な影響が及んでいます。
 政府として、新型コロナ感染症対策に万全を期すとともに、今後も、被災者の生活再建のステージに応じた切れ目のない支援を行ってまいります。中長期的な対応が必要な原子力災害被災地域においては、帰還に向けた生活環境の整備や産業・生業の再生支援などを着実に進めます。来年度からの第2期復興・創生期間においても、福島の本格的な復興・再生、そして東北復興の総仕上げに、全力を尽くしてまいります。

③「国土強靭化
 震災による大きな犠牲の下に得られた貴重な教訓を決して風化させてはなりません。国民の命を守る防災・減災を不断に見直し、あらゆる分野において国土強靱(じん)化に取り組み、災害に強い国づくりを進めていくことを、改めて、ここに固くお誓いいたします。

④「感謝
 震災の発生以来、地元の方々や関係する全ての方々の大変な御努力に支えられながら、復興が進んでまいりました。世界各国・各地域の皆様からも、多くの、温かく心強い御支援を頂いており、心より感謝と敬意を表したいと存じます。

⑤「国際貢献
 震災の教訓と我が国が有する防災の知見や技術を、世界各国・各地域の防災対策に役立てていくことは、我々の責務であり、今後も防災分野における国際貢献を、一層強力に進めてまいります。
 新型コロナ感染症を克服し、一日も早く安心とにぎわいのある日常を取り戻せるよう、全力を尽くしてまいります。

⑥「前を向く
 我が国は、幾度となく、国難と言えるような災害に見舞われてきましたが、その度に、勇気と希望を持って乗り越えてまいりました。今を生きる私たちも、先人たちに倣い、手を携えて、前を向いて歩んでまいります。

⑦「祈念
 御霊(みたま)の永遠に安らかならんことを改めてお祈り申し上げますとともに、御遺族の皆様の御平安を心から祈念し、私の式辞といたします。


過去の首相式辞と比べてみる

つぎに、上の2021年首相式辞を、過去の3・11政府追悼式で読み上げられた首相式辞と比べてみます。

2020年の追悼式(※正確には、昨年は「献花式」)の式辞をベースに、21年式辞をつくってみようと思います。削除した部分には傍線で取り消し線を入れ、加筆部分は(赤字)で示します。

①「哀悼
 本日、東日本大震災発災9年を迎えるに当たり、政府を代表して、謹んで追悼の言葉を申し上げます。最初に、本年の政府主催東日本大震災九周年追悼式の開催中止について申し上げなければなりません。追悼式については、規模縮小など新型コロナウイルスの感染拡大を防止する措置を講じた上で実施する方向でぎりぎりまで模索を続けてきましたが、現下の状況を踏まえ、今が国内における感染拡大を防止するためにあらゆる手を尽くすべき時期であることから、誠に遺憾ながら、開催を断念するのやむなきに至りました。御遺族を始めとした関係者の皆様にお詫(わ)び申し上げます。

 本日ここに、天皇皇后両陛下の御臨席を仰ぎ、「東日本大震災十周年追悼式」を挙行するに当たり、政府を代表して、謹んで追悼の言葉を申し上げます。
 かけがえのない多くの命が失われ、東北地方を中心に未曾有(みぞう)の被害をもたらした東日本大震災の発生から、10年の歳月が流れました。
 最愛の御家族や御親族、御友人を失われた方々のお気持ちを思うと、今なお哀惜の念に堪えません。ここに改めて、衷心より哀悼の意を捧(ささ)げます。また、被災された全ての方々に、心からお見舞いを申し上げます。

②「復興
 震災から10年が経ち、被災地の復興は、着実に進展しております。地震・津波被災地域においては、住まいの再建・復興まちづくりはおおむね完了し、産業・生業(なりわい)の再生も順調に進展しているなど、復興の総仕上げの段階に入っています。
 原発事故によって大きな被害を受けた福島の被災地域では、3月14日、JR常磐(じょうばん)線が全線開通の予定であり昨年に、帰還困難区域を除く全ての地域の避難指示が解除されるとともに、一部地域では帰還困難区域としてでも初めて一部で避難指示解除が行われるなど、復興・再生は新たなステージに入りに向けた動きも着実に進んでいます。
 一方で、いまだ千人の皆さんが仮設住宅での避難生活を強いられるなど、長期にわたって不自由な生活を送られています。
 また、被災地では、被災者の心のケア等の課題が残っていることに加え、一昨年の台風19号、昨年来の新型コロナ感染症に続き、先般も大きな地震が発生するなど、様々な御苦労に見舞われています。特に、新型コロナ感染症により、地域の皆様の暮らしや産業・生業(なりわい)にも多大な影響が及んでいます。
 政府として、新型コロナ感染症対策に万全を期すとともに、今後も、被災者の生活再建のステージに応じた切れ目のない支援を行ってまいります。中長期的な対応が必要な原子力災害被災地域においては、帰還に向けた生活環境の整備や産業・生業の再生支援などを着実に進めてまいります。来年度で終了するからの第2期復興・創生期間の後においても次なるステージに向け福島の本格的な復興・再生、そして東北復興の総仕上げに、全力で取り組みを尽くしてまいります。

③「国土強靭化
 震災による大きな犠牲の下に得られた貴重な教訓を決して風化させてはなりません。国民の命を守る防災・減災を不断に見直してまいります。あらゆる分野において国土強靱(きょうじん)化を進めに取り組み、災害に強い故郷(ふるさと)をつくり上げて国づくりを進めていくことを、改めて、ここに固くお誓いいたします。

④「感謝
 震災の発生以来、地元の方々や関係する全ての方々の大変な御努力に支えられながら、復興が進んでまいりました。世界各国・各地域の皆様からも、多くの、温かく心強い御支援をいただきました。いており、心より感謝と敬意を表したいと存じます。世界の多くの方々に、復興五輪と言うべき本年のオリンピック・パラリンピックなどの機会を通じて、復興しつつある被災地の姿を実感していただきたいと思います。

⑤「国際貢献
 震災の教訓と我が国が有する防災の知見や技術を、世界各国・各地域の防災対策に役立てていくことは、我々の責務であり、今後も防災分野における国際貢献を、一層強力に進めてまいります。

⑥「前を向く
 我が国は、幾度となく、国難と言えるような災害に見舞われてきましたが、その度に、勇気と希望を持って乗り越えてまいりました。今を生きる私たちも、先人たちに倣い、手を携えて、前を向いて歩んでまいります。

⑦「祈念
 御霊(みたま)の永遠に安らかならんことを改めてお祈り申し上げますとともに、御遺族の皆様の御平安を心から祈念し、私から追悼の言葉式辞といたします。


首相式辞はこれでいいのか?

いかがでしょうか。

①「哀悼」について
昨年は正式な「追悼式」ではなく「献花式」だったので、冒頭のあいさつは変わっています。

②「復興」について
「情報のアップデート」といった感じです。「新型コロナ」への言及がときどき挿入されました。

④「感謝」について
「復興五輪」のくだりがなくなりました。

20年式辞から21年式辞で変化した点は以上です。
「式辞から『復興五輪』という言葉が消えた」といった報道も目にしましたが、本質はそこでしょうか。

毎年同じ段落構成で、少し数字を新しくしただけ、という状態が続いています。これが(式辞の言葉を借りれば)「かけがえのない多くの命が失われ、東北地方を中心に未曾有(みぞう)の被害をもたらした東日本大震災」の式典の言葉として、ふさわしいのでしょうか。

しかも、今年は式辞を述べる首相が、安倍晋三氏から菅義偉氏に替わっています。しかし、式辞の内容は少しも変わりません。

新旧首相2氏は、スピーチライターがコピペでつくった式辞を唯々諾々と読み上げるだけなのでしょうか。

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