福島第一原発事故による汚染水の海洋放出についての考え

報道

 先日ウネリウネラは、福島第一原発からの原発事故汚染水海洋放出について海外の人から尋ねられる機会がありました。その際のウネリ=牧内昇平の回答を一部ご紹介します。


―汚染水の海洋放出についてどう思いますか

仮に政府、東電の方針通りに実施されても(ALPS処理→IAEAレビューを経ても)海洋放出には反対です。

―そう考える理由は

政府、東電は100%安全かのように言っていますが、それはあくまで「基準」を満たしているに過ぎません。その「基準」というのは「原子力発電所がこの世界に存在すること」を容認もしくは積極的に支持する機関(ICRPやIAEA)により作られた基準であり、現にその基準の甘さも指摘されており、100%鵜呑みにすることはできません。(※IAEA元事務局長のハンス・ブリックス氏は福島の原発事故後、「フクシマは道路の凸凹に過ぎず、原子力のさらなる安全強化につながる」と述べていました。)

また、彼らのいう「基準」を満たすのは、すべての物事が想定通りに進んだ場合のみであり、想定を超えたことが起きるのが現実です。

現在福島第一原発に溜まっている汚染水の約7割は彼らのいう「基準」を大幅に超える放射性物質を含んでいます。大半の放射性物質を取り除くというALPSは、これまでも故障を繰り返しており、想定通りに機能する保証はありません

そもそも自然条件も含めてすべてがコントロールされるならば、原発事故自体が起こり得なかった、ということも忘れてはなりません。

日本政府は海洋放出の代替案を真剣に検討していません。

第一原発敷地内の汚染水貯蔵タンクが満杯になる時期が近く、また、廃炉作業を進めるためには、既存のタンク群を撤去する必要がある、従って、海洋放出は不可避だと政府や東電は言います。

しかし、廃炉作業の進捗は遅々としているため、既存のタンクを急いで撤去する必要もありませんし、タンクの敷地を広げる余地もあるでしょう

トリチウムを分離する技術はたくさん提案されているのに、政府はその検討を東京電力に任せ、自らは検討をやめてしまいました。

大型タンクに入れたりコンクリートとして固めて保管したりする案も国内外から提案されていますが、政府はまったく耳を貸そうとしません。

こうした代替案が真摯に検討されない限りは、海洋放出を許すことはできません

仮に代替案の真摯な検討がされた後、海洋放出が不可避であるという結論になったとしても、もうひとつ条件があります。

汚染水の問題は原発事故直後から指摘されてきました。現在まで対策を講じることができなかったのは、日本政府の明らかな失策です。もし海洋放出を強行するならば、日本政府としてはその失敗を認め、首相以下閣僚が真摯に謝罪し、少なくとも担当閣僚は辞任すべきです。そして原子力を推進してきたこれまでの政策の転換も必要です。汚染水の問題すら解決できない政府に、本質的に危険な原子力を扱う資格はないからです。

日本政府はこれまでの失策を隠すためマスメディアと結託して「海洋放出は安全」というプロパガンダを続けています。日本の国民は福島の事故前に「原発安全神話」を信じ込まされていたことを思い出し、「海洋放出安全神話」に対しても、疑いの目を向けなければならないと思います。

※参考資料:
world nuclear news(2011年5月19日)
・『汚染水海洋放出の争点ーートリチウムの危険性』(渡辺悦司、遠藤順子、山田耕作著、緑風出版)

      

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