【1号機圧力容器ぐらぐら問題】みんなで意見交換

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 東電福島第一原発1号機の「圧力容器ぐらぐら問題」について市民たちが心配しています。5月26日夜に福島市内で開かれた学習会では、元原発作業員の今野寿美雄さんが講師になり、参加者と語り合いました。(ウネリウネラ・牧内昇平)

※「圧力容器ぐらぐら問題」について初めての方は以下の記事を読んでください。


 今野寿美雄さんは3・11の日まで原発で働いていました。緊急時に原子炉の出力を止める「自動制御装置」のメンテナンスなどをしていたこともあります。定期点検の時には格納容器の中まで入って作業をすることもあったそうです。

 そんな今野さんを講師に招いて学習会を開いたのは、福島市の団体「大町九条の会」(代表:宍戸幸子さん)です。参加者20人が車座になって話し合いました。一方的な「授業」ではなく、参加者がそれぞれの疑問をぶつけ、今野さんがそれに答えるという形式でした。主なやりとり(一部加筆)を紹介します。

圧力容器はまっすぐ落下するのか?

――東京電力や原子力規制委員会によると、圧力容器はまっすぐ下に落ちるだけみたいだけど、本当なんでしょうか?

今野:あれはあくまで想像の話でしょ。ペデスタル(土台)が崩壊する事態になってみないと、どうなるかは誰にも分からないと思いますよ。私はまっすぐ下には落ちないと思っています。イメージ図だと分かりにくいけど、実際の圧力容器には、細いのから太いのまで合計すると数百本ではきかないくらいの配管がくっついています。それも360度均一にくっついているわけではありません。ペデスタル下部のコンクリートがなくなって鉄筋がむき出しになっているから危険なのですが、コンクリートが全周にわたって均等に剥がれ落ちているわけではないと思います。ペデスタルが崩れた時にどう落ちるのかは実際のところ分かりませんよ。

原子炉の断面図。RPVは圧力容器、PCVは格納容器=原子力規制委員会に提出された東電資料から転載

――圧力容器が横に倒れた場合、格納容器もろとも倒れるということはあるんでしょうか?

今野:格納容器というのは、圧力容器を囲む「入れ物」です。電球を逆さにしたような形をしています。そしてこの格納容器の外側は、原子炉建屋と一体化しています。建屋の床や壁と同じように、鉄筋コンクリートでできています。建屋と一体化しているので、「格納容器そのものが倒れる」という感じではありません。圧力容器が横転して格納容器の内壁にぶつかった時、「格納容器の一部がぶち破れる」のではないか、という感じです。

経産省「廃炉の大切な話2020」から転載

――そうなるとどういう事態が起きますか?

今野:分かりませんが、いろんな事態が起こる可能性はあるでしょう。当然まだ燃料デブリの取り出しは済んでいませんし、格納容器のとなりには使用済み燃料プールがあります。1号機のプールには392体の使用済み燃料が置いてあるままです。

――圧力容器が倒れても、格納容器が守ってくれるのではないですか?

今野:圧力容器というのは、通常の状態で800トン以上あります。それがゴトンとぶつかった時に格納容器の壁が耐えられるかどうかです。さっき言ったように、格納容器の壁は基本的に鉄筋コンクリートです。案外弱いです。

――圧力容器が倒壊したら、福島だけでなく世界中に被害がおよぶような事故になってしまいそうで、心配です。

今野:そうですね。全世界かは分かりませんが、日本、特に東日本には影響があるかもしれないです。

5月26日の学習会の様子=福島市内、筆者撮影

――ペデスタル(土台)が崩れ、圧力容器が横転するという最悪の事態に備えて、どんな対策があるのですか?

今野:放射性物質が飛び散らないように、外からカバーをかけるしかないと思います。

――格納容器の外側にカバーをかけるのですか?

今野:いいえ。原子炉建屋全体にです。放射線量が高すぎて人間は格納容器には近寄れません。だから建屋全体をカバーで覆うことになります。

――たしか1号機は今も、建屋にカバーを設置する作業をしているのではないですか?

今野:東電が今設置しようとしているカバーは簡易的なものです。建屋の最上階(オペレーティングフロア)にあるガレキを取り除く作業がしたい。最上階のガレキがなくならないと、下にあるプールから使用済み燃料を取り出せないからです。そのガレキ除去作業の時に、放射性物質を含むホコリが飛ぶかもしれない。そのホコリ飛散を防ぐためのカバーです。本格的に圧力容器が倒壊した場合、あんなものでは足りないでしょう。チェルノブイリ原発は事故直後にコンクリート製の「石棺」で覆われ、今はその石棺のさらに外側を鋼鉄製のシェルターで覆っています。本気で倒壊のリスクを考えた場合、それくらい分厚いカバーで守るしかないでしょう。

(おわり)

【ウネリウネラから一言】

 「ぐらぐら問題」については専門家でも予想がつかない、よく分からない部分があるのだと思います。そういう状況だからこそ考えることを放棄せず、みんなで話し合ったほうがいいと思います。

 当日は汚染水の海洋放出なども話題になりました。そもそも原発はどうやって発電するのかなど、基本的なことの解説もありました。このような学習の場があるのはすばらしいことだと思いました。こういう機会があったら今後もおじゃまして紹介したいです。

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