テラスハウス問題に関するBPOの見解について

※自死や自傷行為についての記述があります。読むとつらくなる心配がある方は、読まないでいてください。

フジテレビの番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレス選手の木村花さん(当時22)が、昨年5月に自死しました。番組の放送をきっかけとしたSNS上での誹謗・中傷に傷ついたのが、自死の理由です。この件で、木村さんのご遺族がBPO(放送倫理・番組向上機構)に検証を求めていました。

その検証結果が、きのう3月30日に発表されました。

BPOとは、テレビ局の番組づくりや放送内容に問題がなかったかを調べるための組織です。結論から言うと、BPOは「出演者の健康状態への配慮が欠けていた」としながらも、「人権侵害があったとまでは断定できない」という判断を示しました。

私はこの判断はまちがっている、フジテレビ側の対応は人権侵害である、と思っています。

まずは、テラスハウス問題の「経緯」を紹介します。

・2020年3月31日、フジテレビは、木村さんが出演した回の「テラスハウス」を、動画配信サービス「ネットフリックス」で先行配信した。配信後、SNS上で誹謗中傷が相次いだため、木村さんは自傷行為におよんだ。
・5月14日、フジテレビが、この回に関連する3本の未公開動画をYouTubeで配信した。
・5月19日、フジテレビが、先行配信のときに誹謗中傷がわきおこったにもかかわらず、問題の部分をカットしたりせずに同じ内容を地上波でも放送した。
・5月23日、木村さんが亡くなった。

このような流れがあります。

「テラスハウス」とは、初対面の男女6人が共同生活する様子を映した番組です。台本があり、役を演じる「ドラマ」ではなく、出演者は“自分”のまま登場し、お互いに話したりします。いわゆる「リアリティ番組」です。

上に書いたような「経緯」の中で、人権侵害にあたる対応がなかったかが問われたわけです。BPOの出した結論は以下でした。

・フジテレビ側では、木村氏に対する精神的ケアや、SNSを通じての再度の誹謗中傷被害の防止について一定の対応はなされていた。これによって再度の深刻な被害の具体的な予見可能性(※この場合、自死が起きる可能性)は低下していた。
・(地上波での放送の判断は)一応の慎重さをもってなされたことがうかがえるため、漫然と本件放送を決定したものとは言えない。
・具体的な被害が予見可能であるのにあえてそうした被害をもたらす行為をしたとは言えず、人権侵害があったとまでは断定できない。

では、フジテレビ側のどんな精神的ケアが「一定の対応」だったのか。地上波放送をめぐる「一応の慎重さ」とは何か。見ていきたいと思います。

BPOの発表によると、木村さんの自傷行為を知ったあとの番組制作側の対応は以下です。

・フジテレビと一緒に番組をつくっていた制作会社のスタッフが、LINEや電話で木村さんと連絡をとり、「落ち着いているので大丈夫」という返信があった。
・番組制作会社のスタッフが、木村さんの自宅を2回訪問した。
・精神科医を受診するよう提案した(コロナもあり、結局実現しなかった)。
・木村さんに対し、SNSアプリを消去するよう提案した。

これが本当に、一定の「精神的ケア」でしょうか。

地上波放送を行った理由については、フジテレビ側は以下のような説明をしています。

・プロレスラーの友人が一緒にいて落ち着かせるということで安心していた。
・コロナのために受診は実現しなかったものの、医師からの助言を得て精神的にかなり落ち着いたという報告があった。
・木村さんはいったんSNSのアプリを消去したものの、所属プロレス団体からの要請もあり、本人の意思で再開していた。そのことを回復の兆候と理解した。
・問題の回で、木村さんはほかの出演者とトラブルになった。その出演者から木村さんに連絡があり、そのことで木村さんも前向きな気持ちになっていた。
・今後のプランについてスタッフに提案をするなど、撮影続行にも前向きだった。
・問題になった回の描写のしかたは、放送基準等に抵触するものではなかった。

5月19日の地上波放送後の対応については、こう書いてありました。

スタッフは木村氏とLINEでやり取りを行った

つまり、直接会ったり、電話で声を聞いたりはしていないということです。

これらの対応が、地上波放送を決断するための「一応の慎重さ」でしょうか。

私は納得がいきません。

素人でも一つ言えることは、「フジテレビ側もBPOも、自死問題についての認識が甘いのではないか」ということです。

木村さんは3月末のネットフリックス先行配信後、自傷行為に及んでいます。

自傷行為は、自死に至る一歩手前の行為です。自分がいつ命を落としてしまうかも分からない状態だということを伝える、繊細で大事なサインです。

ちょっと自宅を訪問したり、LINEで連絡をとったりしただけで、「もう大丈夫だ」と安心できると考えているとしたら、認識を改めるべきだと思います。

私が憤りを感じるのは、木村さんと直に接していたスタッフというよりも、あれほど危険なサインが出されていたにもかかわらず、予定通り地上波での放送を決めた、フジテレビの幹部です。出演者が自傷行為に至った番組を、もう一度放送することなど、常識的には考えられません。

私には、「人の命を軽んじた行為」という言葉しか浮かびません。

フジテレビを含む番組制作側の対応は、「配慮が欠けていた」などという生易しい表現では済まされないものだと思います。

BPOは見解を改めるべきだと思います。

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