【原発事故汚染水の海洋放出】みなさんの声⑬:「事故でどれほどの放射性物質を放出したか」

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 東京電力福島第一原発の事故で発生している汚染水の海洋放出について、読者のみなさんからいただいたご意見をもとに考察を深めていきます。今回のテーマは、「2011年の原発事故でどれほどの放射性物質を放出したか」です。


【PAZさんのご意見】

事故でどれほどの放射性物質を放出したか忘れていませんか?

 これから強行されようとしている汚染水海洋放出。目先のことばかりが議論されていることに強い違和感を覚えます。

 「基準値以下の処理水」を海水で薄めて放出することが盛んに強調されています。「諸外国でも同じことをしている」、さらに自民党・茂木幹事長は、「中国において放出をされている処理水、この濃度がさらに高いというのも事実」と発言しています。

 一般に、発電用軽水炉施設の通常運転時における放射性物質の放出管理は、ALARA(合理的に達成できる限り被曝線量を低減する)の原則に従い、「線量目標値」を設定したうえで行われます。すなわち、一般公衆の被ばく線量評価で「線量目標値」を超えることのないよう務めることとされています。この目標値は、法令で定められる許容被ばく線量(1ミリシーベルト/年)を遥かに下回る値になっています。具体的に言うと、放射性液体廃棄物による内部被ばく、放射性気体廃棄物による内部及び外部被ばくの合計で、0.05ミリシーベルト/年です。

 それでは、福島第一原発事故により実際に放出された放射性物質の量はどうだったのでしょうか。公表されている値から、放射性液体廃棄物についてセシウム137だけに注目し計算すると、「線量目標値」を満たす量のなんと約7万倍が放出されています。

 これが、何を意味するかというと、福島第一原発ではすでに低く見積もって約7万年分の放射性物質が放出されているのです。「もう一滴たりとも放出しない。これこそが、本来東電や国が示すべき姿勢ではないでしょうか。言い換えれば、仮に放出するのなら7万年経ってから、ということです。

 過去を振り返らない。福島第一原発事故をなかったことにして、更なる放射性物質を海洋に放出すること。その濃度の濃い、薄いなど議論しても全く意味はありません。絶対に行ってはならないのです。

【ウネリウネラから】

 原発は通常運転中から放射性物質を出します。ただし周辺の人々への影響を考えて、一年間の放出量には「管理目標値」というものが設けられています。東電福島第一原発については以下のような目標値がありました。

  • 放射性希ガス(キセノンなどを含む)=8800兆ベクレル
  • 放射性ヨウ素=4800億ベクレル
  • 放射性液体廃棄物(トリチウムを除く)=2200億ベクレル
  • トリチウム=22兆ベクレル

 上2つは気体、下2つは液体の放射性廃棄物です。PAZさんが指摘しているのは、「原発事故が起きてから、この管理目標値を大幅に上回るレベルの放射性物質がすでに環境中にばらまかれている」ということだと思います。

事故でどれほどの放射性物質を放出したか

 この点について詳しく知りたい。そう思っていたところ、原子力市民委員会が7月23日に開いた公開フォーラムで、同委員会事務局の細川弘明氏(京都精華大名誉教授)がちょうど解説してくれていました。

 福島原発事故が起きた2011年に大量の放射性物質が流出しました。その中には直接海に流れたものもありますし、空に出たものも(その多くは)海の方向に流れ、(時間の経過後に)海に落ちました。9割がたの放射能は海を汚してしまったわけです。

細川弘明氏

 では、事故後どのくらいの量の放射性物質が出てしまったのか。細川氏が各種論文をチェックしたところによると、トリチウムは2011年4月の1か月間だけで50~1000兆ベクレルも流出したようです。最近の論文では110兆ベクレルと書いてあったそうです。

 先ほど書いた通り、トリチウムの管理目標値は22兆ベクレルでした。それに基づいて、いま問題になっている汚染水の海洋放出についても、トリチウムの放出量には「年間22兆ベクレル」という上限が設けられています。その上限を大幅に超える量のトリチウムが、事故直後の1カ月間だけで環境中に出てしまっていました。

 事故前の福島第一原発からは、だいたい年間2兆ベクレルのトリチウムが放出されていました。事故翌月の1か月だけで、50年分のトリチウムを出してしまったことになります。ほかにもセシウムやストロンチウムなどが、とんでもない量で流れ出てしまっています。

細川弘明氏
原子力市民委員会の公開フォーラム(YouTube動画から転載)

すでに7万年分の放射性物質を放出?

 PAZさんの指摘する「目標値のなんと約7万倍」というのも気になります。ご本人に返信して聞くと、環境省の公表データを紹介してくれました。

 下記のデータです。「環境中に放出された放射性物質のうち、代表的なものを(チェルノブイリと福島第一で)比較して示した」と書いてありました。

環境省ホームページの一部を転載 https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h29kisoshiryo/h29kiso-02-02-05.html

 福島第一原発からの放出量について、一部を抜き出して書いておきます。

  • キセノン133=11000ぺタベクレル
  • ヨウ素131=160ぺタベクレル
  • セシウム137=15ぺタベクレル

 単位の「ぺタ」とは「10の15乗」なので、「1千兆」です。たとえばセシウム137の放出量は15000兆ベクレル(1.5京ベクレル)ということになります。

 先ほど、福島第一原発の「年間管理目標値」を紹介しました。これと事故後の放出量を比べてみます。キセノン133は放射性希ガスに含まれます。セシウム137は、放射性液体廃棄物にカウントされる代表的な核種です。

年間管理目標値事故後の放出量
放射性希ガス8800兆ベクレル11000ぺタベクレル
放射性ヨウ素4800億ベクレル160ぺタベクレル
放射性液体廃棄物(トリチウム除く)2200億ベクレル15000兆ベクレル

 希ガス、ヨウ素、液体廃棄物、どれを見ても年間の管理目標値を大幅に超える量が放出されたことが分かります。セシウム137だけでも「15000兆÷2200億=約7万」ですから、通常の管理目標値から考えればすでに約7万年分の放出枠を使い切ってしまったことと同じです。

これ以上海を汚すのか?

 残念ながら、原発事故はすでに、海を含めた地球環境にとても良くない影響を及ぼしてしまっている。海洋放出の問題を考える際には、この点をどう受け止めるかが重要だと思います。

紹介したのは「事故後に防ぐことができなかった放射性物質の流出」ですが、これから行おうとしている海洋放出は「意図的に放射性物質を流してしまおう」というものです。流そうとしている汚染水の中には、トリチウムだけでなくセシウム137なども含まれています。

 これまでの経緯を見る限り、日本政府の見解は「今まで海を汚したことは考慮しない。これから流すものは低濃度だからいい」というものになるでしょう。

 しかし、原子力市民委員会の細川氏はこう指摘します。

 もうすでに、大量の放射能の流出で海を汚している。もちろん陸も汚している。それらの状況を踏まえて、さらに追加的、かつ意図的に「流させてください」というのは、果たして許されるものなのでしょうか。

細川弘明氏

 本サイトに投稿をくださったPAZ氏も、このように書いています。

 「もう一滴たりとも放出しない」。これこそが、本来東電や国が示すべき姿勢ではないでしょうか。

PAZ氏

 ウネリウネラはPAZ氏や細川氏と同意見です。

 PAZさん、ご意見ありがとうございました!

備考:
 原子力市民委員会の公開フォーラムはYouTubeのサイトで見ることができます。よろしければ以下の記事もご参照ください。

 きょう紹介した細川弘明氏は本サイトに以下の投稿をくださったことがあります。

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