2年前に書いた以下の記事が、最近よく読まれています。
子どもたちに1人1台、コンピュータ端末(タブレットなど)を使わせる「GIGAスクール構想」というものがあります。全国の公立高校では、その端末を行政が用意するか、保護者に負担させるか、判断が分かれています。
タブレット端末を1台買うためには5~6万円ほどかかるでしょう。家庭にとっては大変な出費です。子どもの入学などのタイミングでこの制度に疑問を持ち、2年前の記事を読んでくれた方が多いのではないかと思います。
ただし、あの記事は少しデータが古くなりました。現在公表されている最新のデータを紹介します。(ウネリウネラ・牧内昇平)
「自治体負担」と「保護者負担」が同じくらい
これから紹介するのは、文部科学省が昨年7月に発表したものです。
上のグラフの青い部分が自治体負担、緑が保護者負担です。一番左の青森県から大分県までは自治体負担が100%ということです。自治体がタブレット端末を購入し、生徒たちに貸して使ってもらっています。
自治体負担の府県 青森、秋田、山形、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、岐阜、愛知、大阪、和歌山、山口、徳島、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮城(92%)、香川(79%)、岩手(79%)、鹿児島(53%)
緑の部分が大きい都道府県は、原則として保護者負担ということです。ただし10~30%くらい青色になっている自治体が大半です。これは、保護者の所得などを考慮し、必要な家庭にだけは自治体からタブレットを貸し出している、などの事情からです。
広島県は保護者負担が100%になっていますが、やはり低所得世帯などに対しては購入費の補助を出しているそうです。
原則保護者負担の府県 長野、広島、茨城、山梨、三重、岡山、兵庫、京都、神奈川、宮崎、東京、北海道、鳥取、静岡、沖縄、福島、島根、奈良、滋賀、千葉、埼玉
上のグラフ全体を見渡すと、自治体負担と保護者負担がちょうど半分半分くらいです。住んでいる地域によって、数万円の出費が必要かどうかが分かれてしまっています。
政令指定都市が運営する公立高校についても、同様に「自治体負担」と「保護者負担」が半分半分くらいです。
市町村立の高校についてもデータがあります。詳しくは以下のリンクから見てください。
高等学校における学習者用コンピュータの整備状況(令和5年度当初) (mext.go.jp)
文科省「タブレットは文房具」
なぜ都道府県で判断が分かれているのでしょうか? 文部科学省の担当者によると、要因の一つは「新型コロナの交付金」でした。1人1台端末構想がはじまった2021年ごろには「新型コロナ対策の臨時交付金」というものがあり、自治体はこの交付金を使ってタブレット端末を買いそろえることができました。現在「100%自治体負担」になっている府県の中には、この交付金を使ったところが多いとのことです。
しかし、この交付金は新型コロナ対策のための臨時的なものです。今はもう使えません。タブレット端末は基本的に消耗品です。5年も使えば買い替える必要が出てくるでしょう。買い替え時期になったら今は「100%自治体負担」の府県も、「保護者負担」に移行せざるを得ないかもしれません。
文部科学省の考え方の基本は「タブレットは文房具」というものです。鉛筆やノートを個人で買うのと同じようにタブレットも自分で用意すべき。遅かれ早かれそういう時代になりますよ、というのが文科省の考えです。
家庭にとっては大変な出費です
文科省や各地の教育委員会、学校関係者の方々にぜひ思い起こしてほしいのは、とにかく家庭にとっては大変な出費だということです。ただでさえ制服なりバッグなり、たくさんお金がかかります。それに加えてのタブレットはかなり痛いです。
「保護者負担」にする場合、低所得世帯のことを考慮するのは必須です。しかし、自分のタブレットを持っている生徒と、買えなくて学校から借りている生徒が混在するのも問題ではないでしょうか。そのあたりのことを各自治体は真剣に考えているのでしょうか?
今は地域によって差がある状態です。しかも先ほど書いたように、今は自治体負担の府県でも、今後新しく入学する生徒については保護者負担に切り替わる可能性もあります。地域や入学年次によって差があるのも変です。不公平に思えてしまいます。
そもそも、1人1台端末構想が本当に必要なのか。学校で教えるべきことはそういうことなのか。そのあたりの話し合いも十分ではないように思います。
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