ダマリーさんは来日できるのか?

 突然ですが、みなさん。

 日本は「人権を守る国」でしょうか?

 「はい」と答えたいところですが、福島原発事故の取材をしていると、残念ながらそう言い切れなくなります。

 たとえば「避難者の住まい」の問題があります。政府・福島県は、2017年3月をもって区域外避難者(※)に住宅を無償で貸すのをやめました。住む場所を失った避難者はとても困った訳ですが、それに対して福島県がやったことはなんでしょう。避難先を退去しない人たちに対して、立ち退きを求めて裁判を起こしているのです。
 ※事故避難者のうち、国が定めた「避難指示区域」の外に住んでいた人。

 こうした行政の対応は果たして正しいのでしょうか? きちんと検討したいところです。そこで期待されているのが「国連」です。国連の人権理事会には「特別報告者」がいます。人権問題の専門家で、各国の人権が守られているかを調べる役割があります。

 この特別報告者のうち、「国内避難民の人権」を担当しているセシリア・ヒメネス・ダマリー氏が、3年前から再三にわたって「日本で避難者の問題を調査したい」と申し込んでいます。それなのに、日本政府は今のところ応じていません。外務省は「各省庁と調整中」と言うばかりです。

 ダマリー氏が来日できるかどうかは、「日本が人権を守る国かどうか」を考える際の一つのポイントになると思います。ウネリウネラはすぐにでも、来日を実現すべきだと考えます。以下、詳しく紹介します。

3年以上も実現しないダマリー氏の訪日調査

 ダマリー氏が最初に「訪日リクエスト」を出したのは2018年8月のことです。それがいつまでたっても実現しないため、その後2回にわたって、日本政府に対して調査実現を求める「催促」をしてきました。しかし、訪日はまだ実現していません。

 この状況にしびれを切らしているのが、原発事故で避難した人びとやその支援団体です。ダマリー氏がどんな調査結果を出すかは分からないけれど、少なくとも調査はしてほしいと切望しています。

 そこで、原発避難者の問題に詳しい田辺保雄弁護士を中心に、83の市民団体・企業が「国連特別報告者の訪日を実現する会」を作りました。「実現する会」はきょう1月4日、外務省の担当者と面会し、ダマリー氏の訪日実現を求める「要望書」を渡し、記者会見を行いました(※要望書提出は昨年8月に続き2回目)。

 田辺氏によると、ダマリー氏の任期は今年までです。今年6月にある人権理事会までに報告書をまとめなければいけません。そのためには、遅くとも3月くらいまでには来日が実現しなければ時間的に難しくなります。

 田辺弁護士は「残念ながら今日の時点では具体的な見通は立っていないが、粘り強く要望していきたい。ダマリー氏は『裁判』をしにくるのではない。『対話』をしにくるのだ。そのことをきちんと分かってほしい」と話しています。

記者会見を開く 「実現する会」(ウネリウネラはリモートで参加)

日本政府はダマリー氏の来日を実現させなければいけない

 日本政府がダマリー氏の来日要求を拒否するのはおかしいです。理由は二つあります。

日本政府は「スタンディング・インビテーション」を宣言している

 国連から調査などの要求があった場合、日本政府は「すべて受け入れる」と宣言しています。この方針を「スタンディング・インビテーション」と言います。つまり、日本政府にはダマリー氏の訪日調査を受け入れない、という選択肢はもともとないのです。

日本は「避難者の人権を守る」ことを表明している

 国連は以前から原発事故避難者の人権に注目しています。2017年11月には、日本政府に対して国連が定めた「国内避難民に関する指導原則」(※)を守ることを求めました。

 それに対して日本政府は18年3月、「はい。守ります」と返事をしています。

 となると、本当に日本政府は「指導原則」を守っているのかどうか、国連が調べたくなるのは当り前だと思います。日本政府としても「守ります」と返事をしているのだから、特別報告者から要請を受けたらすぐに応じるのが当り前のように思います。

特別報告者への対応は、日本の人権の状況をはかる「リトマス試験紙」である

 くり返しになりますが、日本政府は「国連の調査はすべて受け入れる」と宣言しています。

 しかし実際には、特別報告者の訪日リクエストが出ているにもかかわらず、調査が実現していないケースがほかにもあります。

 ウネリウネラが国道人権高等弁務官事務所を調べたかぎり、合計9件の訪問リクエストがまだ実現していません。実現していないのは、以下の調査です。

・恣意的な拘禁に関する問題
・先住民の権利に関する問題
・人種差別に関する問題
・アフリカ系の人々に関する問題
・性的志向と性自認に関する問題
・有害物質に関する人権の問題
・国内避難民に関する問題(これがダマリー氏の要求)
・ビジネスと人権に関する問題
・女性と少女に対する差別に関する問題

 調査要求が出てから何年も待たされているケースが、「国内避難民」のほかにもいくつかあります。

 上の項目の中には、ウネリウネラも関心を寄せ、「すぐ調査してほしい」と思うものもあります。日本政府がこれらの調査要求にすぐ応じるかどうか。それは「日本は人権を守る国なのか」ということを考える指標になると思います。日本政府には早急な対応を求めます。関連原稿:

(おわり)

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