【原発事故汚染水の海洋放出】福島県への「アメとムチ」~福島「復興」再生基本方針へのパブリックコメント~ 

報道

 福島「復興」再生基本方針の改定案が示され、これに対するパブリックコメントが明日7月14日午前11時まで募集されています。ウネリウネラは原発事故汚染水の海洋放出と結びつけてコメントを書いてみたいと思います。 


福島県への「アメとムチ」 

 福島「復興」再生基本方針とは何か。県内に広がる避難指示区域の解除に向けた考え方などが書かれたものですが、結局は「国の予算を福島県のどの分野にどのくらい落とすか」という話になります。 

 たとえば基本方針の改定案77ページ以降には、今年4月に設立された「福島国際研究教育機構(F-REI、エフレイ)」について、こう書いてあります。 

国内外に誇れる研究開発を実施し、その研究開発成果の産業化、これらを担う人材の育成を実施する福島国際研究教育機構は、福島の創造的復興に不可欠な拠点となることから、機構が長期・安定的に運営できるよう、復興財源等で必要な予算を確保するとともに、復興特会終了以降も見据え、外部資金や恒久財源による運営への移行を段階的・計画的に進める。 

福島「復興」再生基本方針

 エフレイは2023~2029年度の7年間で合計1000億円を投じる予定の一大プロジェクトです。内堀雅雄知事率いる福島県政はこれを成功させようと必死になっていて、国の方針に〈必要な予算を確保するとともに、外部資金や恒久財源による運営への移行を進める〉と書かせていることは、内堀県政にとって一定の「成果」なのかもしれません。 

 「国から予算を引っぱってくる」ことに関して、福島県民の中に内堀氏を評価する声があるのは事実です。しかし、「予算(=金)」の代償として福島県民が支払わされているものはないでしょうか? 

福島県庁前で汚染水の海洋放出反対をうったえる市民たち=6月20日、筆者撮影

 原発事故汚染水の海洋放出が問題になっています。多くの福島県民が反対していますが、海洋放出が秒読み段階に入っている今でも、内堀氏は自らの考えを明らかにしません。 

 ALPS処理水の取り扱いについては、これまでも国に対し、関係者への丁寧な説明や、情報発信の充実・強化、万全な万全な風評対策に責任をもって取り組むことなどを強く求めてきました。国においては、理解醸成に向けた具体的な取り組みを自ら示しています。そうした取り組みをさらに徹底し、最後まで責任をもって取り組むべきであると考えております。

 ALPS処理水の取り扱いについては、漁業者の皆さんをはじめ、県民の皆さんも様々な葛藤を抱えながら、それぞれの立場から意見を述べられています。そのような中、県は広域自治体として、そうした葛藤なども含め県民の皆さんの様々な思い、ご意見などを機会あるごとに国および東京電力に強く訴えてきました。国においては、県民の皆さんの思いをしっかり受け止め、引き続き丁寧かつ十分な説明を重ねるとともに、自らが示している取り組みをさらに徹底していくことが重要であると考えております。  

7月10日、内堀氏定例記者会見
福島県の内堀雅雄知事

 汚染水を海に捨てなければ、漁業者らが新たな営業損害に苦しむことはありません。広告代理店と一緒になった「安全」プロパガンダを行わなくても、金を湯水のごとく注ぎこんだ水産物キャンペーンをしなくても、海洋放出をやめればいいだけの話です。 

 しかし、内堀氏はそのように「ものを申す」ことはありません。日本政府に対して「十分な説明」と「『風評』対策」を求めるだけです。十分な説明と「風評」対策(という名の事業者支援)は、日本政府も「やる」と言っているものです。

 それを「やってくれ」と言い続けるだけでは、政府の海洋放出方針をアシストしているにすぎません。「説明」と「『風評』対策」が足りないと感じるならば、「現段階では海洋放出に反対だ」と言うべきではないでしょうか。 

 なぜ内堀氏は政府にものを申さないのか。「金を引っぱってくる」ためだと考えざるを得ません。基本方針の改定案20ページにはこのように書いてあります。 

令和3年4月、風評影響を最大限抑制する対応を徹底することを前提に、ALPS処理水について、2年程度後を目途に海洋放出する方針を決定した。引き続き、国が前面に立ち、関係省庁が連携して各取り組みを着実に進めていく。 

福島「復興」再生基本方針

 福島「復興」再生基本方針には、エフレイのような「アメ」と、汚染水の海洋放出という「ムチ」との両方が書いてあるのです。 

 国家プロジェクトに金を投じてもらうには、政府の機嫌を損ねてはいけない。だから海洋放出について言うべきことが言えない。内堀氏はそのように考えているのかもしれません。 

 金の使い道が適切かどうかはさて置くとして、原子力災害の被害地である福島県に資金を投じるべきなのは当然です。これは本来「アメ」として使われるようなものではありません。 

 たとえば基本方針の改定案4ページにも、このように書いてあります。 

原子力災害に対する福島の住民の怒りや悲しみに共感し、福島の住民に寄り添いながら、誇りと自信を持てるふるさとを取り戻すことができるまで、その責務を真摯に、かつ、国の威信をかけてあらゆる知恵と力を結集し、総力で実行していくものである。 

福島「復興」再生基本方針

 政府はこの言葉を忠実に守るべきです。大規模予算という「アメ」の代わりに汚染水の海洋放出という「ムチ」を引き受けさせる。そういう政策はやめるべきです。(加えて言えば、内堀氏もこの状況に甘んじることをやめるべきです。) 

 基本方針の改定案から〈海洋放出を着実に進めていく〉との記載を削除し、汚染水の処分方法について一から議論することを求めます。 

福島県庁に向かって海洋放出反対をうったえる市民たち=6月20日、筆者撮影

 以上がウネリウネラのパブリックコメントです。はじめに紹介した通り、パブコメの提出期限は「明日7月14日午前11時」です。ご関心のある方はぜひ書いてみてください。

「福島復興再生基本方針」の改定案に対する意見募集について

(※募集開始が7月7日で提出期間が1週間しかなく、とても短いことを書き添えておきます。しかもインターネットにアップされている入力フォームの文字数は300字が上限です。ほんとうに国民の意見を参考にする気はあるのか、疑問です)

皆さまのご意見を募集します

海洋放出問題について、皆さまのご意見を募集します。長いものも短いものも、海洋放出を支持する意見も反対する意見も、なんでも歓迎です。お待ちしております。

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