汚染水を流すな。未来を守れ――。東京電力福島第一原発にたまる汚染水の海洋放出について、反対する市民たちは20日、福島市内でデモ行進を行いました。その後福島県庁の前で集会を開き、内堀雅雄知事宛ての要請書を県に提出しました。(文・写真/ウネリウネラ牧内昇平)
汚染水を流すな! 漁業を守れ! 自然を守れ! 子どもを守れ!
デモ行進を主催したのは福島県内を中心とする市民グループ「これ以上海を汚すな!市民会議」です。主催者によると150人が参加し、福島市内の集会場「福島テルサ」を出発して約30分間、街の中を練り歩きました。
行進した人たちは思い思いのプラカードを掲げて歩きました。そこに書いてあった言葉を紹介します。
〈海を守りたい〉 〈海は生命の源!人間が勝手に汚していいのか!〉 〈フクシマの海に流すな! 安全ではない〉 〈漁業を守れ〉 〈これ以上福島の海を汚すな 「金目」じゃないよ〉 〈なんぼ薄めても汚染水にかわりはない〉
行進のゴールは福島県庁前でした。歩き終わった人々は県庁前に横断幕をかかげ、順番にスピーチしました。福島県の内堀雅雄知事に対して「地元の福島県こそが率先して海洋放出の中止を求めてください!」と呼びかけたのです。
福島市に住む佐々木慶子さんはこう語りました。
知事さん! あなたは私たちの気持ちをどれだけ受け取ってくださっているんですか? 福島原発事故の悲惨さ、苦しさ、悲しみ、悔しさをどれだけ受け取ってくださっているんですか? 汚染水の海洋放出はどれだけ世界に迷惑をかけるのですか? 海は一つです。そこに汚染水を流すなどということは、私たちには耐えられません。内堀県知事、「汚染水を流さないでくれ」と言ったことがありますか? 私は聞いたことがありません。国に対して「国民への理解を広げてくれ」とはおっしゃっていますが、それは責任転嫁ではないですか? 県内市町村の7割の自治体議会が「反対」「慎重」の意見書を出しています。汚染水を流してほしくないというのは「県民の気持ち」と言って間違いないと思います。内堀県知事、どうかあなたご自身で、国や世界に向けて声を発していただきたいと思います!
佐々木慶子さん
汚染水の海洋放出は国内だけでなく海外からも心配の声が上がっています。県庁前の集会では韓国の漁業者からのメッセージが代読されました。
海は私たち漁民にとって生活の基盤です。生涯、海だけを眺めて暮らしてきました。住み慣れた我が家であり、仕事場であり、家族、友人のような人生の同伴者でもあります。いつも感謝の気持ちを捧げながら生きてきました。それなのに隣国の日本が、原発事故で発生した放射性汚染水を海に捨てるというとんでもない計画を立ててしまいました。この知らせを初めて聞いたとき、私は大変驚き、あわてずにはいられませんでした。まるで自分の体に毒物をまくのと同じだと感じました。汚染水の海洋放出は、私たちのような漁民の暮らしだけではなく、この大切な海を滅ぼします。韓国の中でも海洋放出に不安を感じる人たちはすでに消費を控えるようになっています。海洋放出が現実になれば、私たち漁民の生活は完全に破綻するでしょう。私たち漁民は生きていけなくなります。韓国と日本という国境を越え、海洋放出を阻止するというたった一つの目標に向けて共に立ち上がりましょう。私たち漁民が真剣に怒るとどれほど怖いかを見せましょう。
韓国の漁業者キムヨンチョルさんからのメッセージ
集会が終わった後、市民たちは県庁に入り、内堀雅雄知事宛ての要請書を提出しました。
要請書 1.福島県は政府と東京電力に対し、原発事故および汚染水発生の原点に立ち返り、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とする福島県漁連らとの文書約束を守り、理解と合意のないまま汚染水の海洋放出を行わないよう求めること。
ほかには、▽汚染水に含まれるすべての放射性物質の総量を調べること、▽引き続き汚染水をためて管理する「大型タンク長期保管案」や「モルタル固化保管案」などを検討すること、▽福島県内はじめ全国で説明・公聴会を開いて議論すること、を求めました。
要請書を受け取ったのは県原子力安全対策課の課長です。市民たちと課長とのやりとりについては今後また紹介します。
福島では今も「反対」が相次いでいる
日本政府は海洋放出めざしてまっしぐらに進んでいます。東電は今月から、真水を流して設備の試運転を始めました。どんどん勝手に進めている印象ですが、福島では今も反対の声が相次いでいます。県漁連も反対していますし、県内市町村の今年の6月議会では、川俣町議会が反対の意見書を全会一致で可決。いわき市議会も「関係者の理解なしには・・・」という県漁連との文書約束を守るよう求める意見書を可決しました。
このまま強行していいものかどうか。政府は考えるべきです。
皆さまのご意見を募集します
海洋放出問題について、皆さまのご意見を募集します。長いものも短いものも、海洋放出を支持する意見も反対する意見もすべて歓迎です。お待ちしております。
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