「震災支援ネットワーク埼玉」の性被害対応について

 ある女性が先日、「震災支援ネットワーク埼玉」という団体で、事務局長から性被害を受けたことをインターネットで発表しました。加害者についてはもちろんのことですが、ウネリウネラは、この団体と代表の猪股正氏による被害対応についても、厳しく批判する必要があると考えています。

 ウネリウネラはこの件を知り、二つの意味で大変ショックを受けました。一つめは、女性の置かれた状況と、ウネラが朝日新聞社時代に経験したことが、とても似ていることです。まずはその点について書きます。


女性に対する被害対応の経緯

 詳しくは女性が発表した文章(「震災支援ネットワーク埼玉事務局長による性被害について」)を読んでいただきたいですが、ここで経緯をまとめます。

  • 2017年 12月 女性が事務局長から性被害を受ける
  • 2019年 5月 女性が事務局長を提訴
  • 2020年 3月 さいたま地裁が被害行為を認める判決
  • 2020年 4月 事務局長が控訴
  •     12月 東京高裁で「和解」(双方の合意による訴訟終結)が成立
  • 2021年 4月 女性が猪股代表にメール。再発防止策などについての話し合いを求める。
  •     8月 猪股代表が返信。団体の代表としては女性と会わない旨伝える。
  •     12月 女性が再度、性被害への見解を求める書面を団体に送付。(10日付)
  • 2022年 1月 書面への回答がないため、女性がインターネットで文章を発表。(26日)

 「ウネラの経験と似ている」と書いたのは、2021年4月以降、女性が話し合いを求めたのに、団体の猪股正代表がそれに応じなかった点です。女性は4月のメールから3か月が過ぎても返答がなかったため、猪股代表に再度連絡したそうです。すると、女性の最初のメールから4ヶ月後の8月になってようやく返信が届いたそうです。    

 そのときの猪股代表からの返信の中身というのは、要するに、“この件での正式な話し合いは行わない”ということでした。「震災支援ネットワーク埼玉の代表として女性と会うことについて、団体執行部の中で消極的な意見がある」ということを理由に、猪股代表は女性と会おうとしませんでした。

 しかもこの猪股代表からの返信は、「震災支援ネットワーク埼玉代表」としてではなく、猪股氏が「個人的な立場で」送ったものでした。「非公式な返答」ということです。団体として、女性に対して正式な回答を行わなかったということです。これは、被害にあった女性に対して失礼な行為でしょう。

 この対応に納得がいかなかった女性は、12月に再度文書を送り、団体としての正式な見解を求めました。その文書への回答がなかったため、女性は先月末、インターネットでこの件を公開することにしました。


被害者と誠実に話し合うことが、被害対応の第一歩である

 性被害事件が起きた時、周囲がどう対応するかはとても大切な問題です。周囲の対応しだいで、被害者の苦しみ方はだいぶ変わってくると思います。

 被害者が事件を引き起こした人物や団体に話し合いを求めるのは当たり前のことです。関係するすべての人物や団体が誠実に対応する責任があります。

 もちろん、被害者と話し合うのは簡単なことではないでしょう。直接会って不用意な言動をとれば、それは被害者を二重に苦しめることになります。性被害の当事者と話をするのはとても難しく、慎重な配慮が必要です。

 しかし、だからと言って、「被害者をこれ以上傷つけたくない」ということを口実にはできません。会わなければ会わないほど、被害者は傷ついていくでしょう。被害者が求めている限り、「話し合い」から逃げることはできません。準備に準備を重ね、配慮に配慮を重ね、話し合いに応じる必要があります。

 震災支援ネットワーク埼玉は、東日本大震災の被災者支援を目的とした団体です。猪股代表は貧困問題に取り組む弁護士として、暮らしに困った人への相談・支援を日頃から行ってきた人です。今回のようなケースで、話し合いのテーブルにつかないことが被害者をどれだけ苦しめるか、過去の経験から分かっていたことではないでしょうか。被害者側から要望があったにもかかわらず話し合いに応じなかったことは、きちんと批判すべきと考えました。


ウネラと重なった点

 ウネラの経験に触れたいと思います。ウネラは朝日新聞の記者時代に取材相手から性被害を受けました。直接の被害経験はもちろんのことですが、朝日新聞社の被害直後の対応も、本人を深く傷つけるものでした。被害から十年ほどが経ったころ、ウネラはようやく覚悟を決め、朝日新聞社に対して、「当時の対応は不十分だったのではないか」という問題提起(調査の申し入れ)をしました。

 しかし、朝日新聞社はウネラ本人(もしくは代理人であるウネリ)ときちんと話し合いをしようとしませんでした。「調査する」と言いながら、調査のプロセスに被害者側は参加させず、いつ調査結果が出るかも伝えてきませんでした。そして四か月以上たった頃、一方的に、「会社には非がなかった」旨をメールで送ってよこしてきたのです。私たちは再調査を求めましたが、朝日新聞社はそれを拒みました。

 今振り返ると、朝日新聞社が一方的な調査を始めてから一方的な回答をよこしてくるまでの数か月間が、ウネラにとって一番苦しい時期だったのではないかと思います。ウネラはこう言います。

 「調査申し入れ」を行ってから、回答がくるまでの数か月間が地獄だった。いつ回答するか、会社は全く伝えてこなかった。「今日回答が来るかもしれない」「回答はいつ来るのか。まさか、このまま無視するのか」と混乱させられた。そういう状態が数か月続いた。そうやって誠実に対応されず、何も分からない状態で待たされた人間の地獄を想像してみてほしい。応答が返ってこない一分一秒に、どんどん追いつめられていった。毎日、生きていくのがやっとの状態だった。「私が死ねば会社はコメント出すのか」。そういうことを何度も考えた。

 筆者(ウネリ)が想像するに、猪股代表に話し合いを求めるメールを送ってから、10カ月くらいのあいだ、女性はウネラと同じように苦しんでいたのだと思います。ウネラは朝日新聞社のことを一定程度信頼していました。筆者の知る限り、今回被害を発表した女性も、代表の猪股氏のことを信頼していました。信頼を寄せる相手から対応を拒まれるのは、とてもつらいことだと思います。

 ウネラはこの被害の件を知り、大変大きなショックを受けました。自分の経験のフラッシュバックも起きていることと思います。あらゆる組織・団体がもっと真剣に性被害に対応することを強く求めます。


ウネリウネラも信頼していた団体だった

 ウネリウネラがこの件にショックを受けた理由の二つめは、この「震災支援ネットワーク埼玉」という団体については、ウネリウネラも信頼していたということです。

 この団体は長く、東日本大震災の被災者支援を行ってきました。福島第一原発が立地する双葉町の人びとが「さいたまスーパーアリーナ」(さいたま市)に避難してきて以来のことです。ウネリウネラの知る限り、「3・11」から10年以上たった今も、福島に住む人でこの団体の活動を評価する人は相当数います。

 また、筆者ウネリは、団体の代表である猪股正氏とつながりがあります。猪股氏は生活保護問題、貧困問題に長く取り組んできた弁護士です。ウネリは新聞記者時代にさいたまの支局に勤めており、当時かなり頻繫に猪股氏が行う活動を取材していました。今でも交流はあり、年賀状も出しています。

 こうした関係の深い人が代表を務める団体で、性被害に対するきちんとした対応が行われなかったことを、大変遺憾に思います。

 猪股氏は筆者に対し、「もっと早く対応すべきだったのに時間がかかってしまいました。そのことは謝罪させていただくほかありません」と話しています。


「良きもの」の中での性被害について

 ウネリウネラはこれまで、社会的に「良きもの」とされている組織が、組織内で性被害の問題をおざなりにしている点を追及してきたつもりです。たとえば、以下のような文章を書いています。

「良きもの」の中の性被害について

 先ほど書いた通り、自分たちも信頼していた団体で同様のことが起きてしまいました。しかし、信頼していた団体だからと言って、黙って見過ごすようなことはできません。「いいことをしているから」というのは言い訳になりません。大きな社会問題に挑戦したいのならば、まずは一人の人の心の苦しみに真剣に向き合わなければいけません。ウネリウネラはこの件について、「震災支援ネットワーク埼玉」(猪股正代表)に抗議し、被害者の女性に対する誠実な対応を求めます。

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