伝承館は何を伝承するのか~今春以降の「変化」について①(おおざっぱ編)

報道

 昨年9月、福島県内に「東日本大震災・原子力災害伝承館」(伝承館)という施設がオープンしました。この施設については議論が必要だなと思ったウネリウネラは、本サイトで「伝承館は何を『伝承』するのか」という企画を始めました。(企画の狙いについては昨年の記事「企画のはじめに」をお読みください。)

 これまでにたくさんの方々から伝承館についてのご意見・ご感想をいただきました。誠にありがとうございました。ウネリウネラの伝承館ウォッチは今も続いています。今年は4月上旬と7月末に見てきました。昨年のオープン時から少し変わった点がありますので、2回に分けて紹介します。まずはおおざっぱに、ポイントを4つ挙げます。


変わった点①原子力広報看板

 これは報道でもよく取り上げられていたので、ご存じの方も多いと思います。「原発安全神話」の象徴とも言えるような巨大な原子力広報看板ですが、伝承館のオープン当初は館内に写真パネルが設置されているだけでした。

原子力広報看板の写真パネル展示(館内)

この点は、今年の春に変化がありました。具体的には、看板の実物展示が始まりました。

新しく設置された原子力広報看板の実物(屋外)

 実物になり、大きさは実感できました。しかし、展示場所が建物の「外」なのが気になりました。南側に入り口がありますが、それとは反対の北側の角に看板はあります。建物の周りの芝生のところを歩かないと展示場所までたどり着きません。「伝承館に行ったけど看板には気づかなかった」という人がいてもおかしくありません。

 写真の通り、もともとは道路の上の高いところに掲げられていた看板は、地面に直接置かれています。見上げるのと見下ろすのとでは、ずいぶん印象が違うように思いますが、いかがでしょうか。また、屋根があるとは言え、建物の外では風雨にさらされます。保存に適しているのかも、少し疑問に思いました。

伝承館の館内の様子。原子力広報看板を館内に掲示するスペースはあるように思いますが……。

 ちなみに、7月末に行くと看板の標語は<原子力郷土の発展豊かな未来>に変わっていました。標語は4種類あり、あと2つは、<原子力豊かな社会とまちづくり>、<原子力正しい理解で豊かなくらし>です。

変わった点②写真撮影OKに

 オープン時は建物内に「写真撮影NG」と書いてありましたが、この点は変わりました。現在は、「一部の展示を除き館内写真撮影OK」となっています。

 ウネリウネラはオープン当初から、この「撮影NG」が問題だと考えてきました。一般来館者が写真を撮れないため、実際にどんな展示が行われているかが広まらず、改善のための具体的な議論が起こりにくくなっている、と考えていたのです。撮影OKとなったのはよかったと思います。

変わった点③語り部の口演スケジュールが発表された

 伝承館で最も大事なものの一つは、「語り部」の方々による口演ではないでしょうか。災害の直接の被害者の方が語る言葉は何よりも重い、と感じます。

 ところが、オープン直後に見学した時、ウネリウネラが最も気になった点の一つが、この「語り部」の方々への待遇でした。口演は「ワークショップスペース」と書かれた小部屋で行われていました。

奥の部屋が、語り部の方々が口演を行う「ワークショップスペース」

 ワークショップスペースとはさまざまなイベントをやる所でしょうから、語り部専用の場所ではないということです。これには驚きました。部屋の中には、「放射線量を測るための機材」や「『除染作業中』と書かれたのぼり」など、口演とは直接関係のない展示品も置かれていました。また、その日にどんな方がどのようなテーマで話すのか、そういった大事なことも発表されていませんでした。語り部の方々が軽視されているのではないかと心配になりました。

 これに関連して、一つ変わったのは、今年4月の訪問時に「口演スケジュール」と書いたチラシを見つけたことです。

「ワークショップスペース」の入り口に置かれていたチラシ

 これを見ると、その日の口演のテーマは分かるようになっていました。たとえば、3月29日の口演テーマは、午前が「震災体験と動物たち、福島第一原発5日間の攻防」、午後が「防災意識・防災訓練の大切さについて」でした。

 ただ、口演に使う部屋は依然として「ワークショップスペース」のままでした。これはまだ再考の余地があるのではないかと思いました。

変わった点④展示内容が少し追加された

伝承館、館内の様子

基本は同じですが、SPEEDI取り扱いの顛末や避難生活の状況を説明する展示パネルが、少し増えました。この点は次回の「今春以降の「変化」について②(資料編)」で紹介したいと思います。

たとえばSPEEDIについては、こんな説明用パネルが加わりました。内容は次回お伝えします。

皆さんの意見が、伝承館を少し変えたかもしれません

 以上が、おおざっぱな変更点の紹介です。一つ言えることは、
「みなさんが建設的意見を積み上げた結果として、伝承館の中身は少し変わってきている」
ということです。

 伝承館についてはマスメディアなどもこぞって批判を行ってきました。館内にある「感想ノート」にもたくさんの批判的意見が寄せられていました。そういったものの積み重ねが伝承館の改善を促したのだと思います。その動きの一つには、ウネリウネラのこの企画も入ることができたと思っています。意見を寄せてくださった皆さまに感謝いたします。

 しかし、少なくとも「100点満点の伝承館」というのは、そもそもあり得ないと思います。これからもさまざまな意見を届け、もっとよい施設に変えていく努力が必要です。

 ということで、またまた読者の皆さまのご意見ご感想を募集します。今日の記事に関連しなくてもOKですので、もうすぐオープンから1年になる「伝承館」について、もしくは、より広く「東日本大震災と原発事故の『伝承』」について、考えていることや知りたいことを教えてください。お待ちしています!


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