【原発事故汚染水の海洋放出】首相官邸前で「反対」の声

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 東京電力福島第一原発にたまる汚染水(※)について、政府・東電による海洋放出が秒読み段階だと言われています。一方で、反対する市民たちの活動は続いています。8月18日金曜日には200人を超える人びとが首相官邸前に集まってスピーチ。日本政府に思いとどまるよう求めました。その後は国会議員会館に場所を移し、経済産業省と東京電力に対して要請書を提出しました。福島から上京した人の言葉を中心に紹介します。(ウネリウネラ・牧内昇平)

※政府の定義では、ALPSで処理する前の液体が「汚染水」で、処理後の液体は「ALPS処理水」です。しかし、実際はALPSで処理後もトリチウムを筆頭にさまざまな放射性物質が含まれています。そこでウネリウネラは処理後の液体もあえて「汚染水」と呼びます。


8.18首相官邸前アクション

武藤類子さん(福島県三春町)
 きょう、岸田首相は日米韓首脳会談のためにアメリカに行ってしまっています。しかしながら、岸田首相が聞くべき声は、バイデン大統領やユン大統領の意向ではないと思います。
 聞くべきは、漁業者をはじめとする原発事故の被害者、国内の市民の声、そして海でつながる他の国々の市民の声だと思います。
佐藤和良さん(同県いわき市)
 全国の漁業者が一丸となって反対し続けているではありませんか。そしてまた、福島県民はじめ多くの原発事故被害者が、この放射性液体廃棄物の海洋投棄に反対しているんです。東日本大震災で塗炭の苦しみを味わって12年、ここまできました。沿岸漁業もようやく震災前2割の水揚げに至ったばかりです。ここで汚染水を流されたら生業が成り立ちません。会津には「什の掟」というものがあります。「ならぬことはならぬものです。嘘(うそ)を言うことはなりませぬ」と。岸田首相にはこの言葉を贈ります!
千葉親子さん(会津坂下町)
 3・11のあの危機感を忘れたのでしょうか? 放射能汚染水は処理して薄めて流せば心配ないと。国も東電もそう言っております。ほかの原発も、ほかの国も、流しているではないかと。しかし、決定的に違うのは、福島第一原発は事故を起こし、燃料デブリが残っていることです。7月6日、私たちは国と東電を呼んで住民説明会を開きました。その場で農業を営む男性は言いました。「海に汚染水を流すということは、俺の田んぼや畑、りんごの木に汚染水をばらまくのとおんなじだ。それがいつまでばらまかれるのか、どんな結果が出るのかは誰も説明しないじゃないか。本当にがまんならない。許さんに」と。汚染水の海洋放出を絶対に許すことはできません。
三瓶春江さん(浪江町津島地区から福島市へ避難)
 原発事故のときは10人家族で暮らしていて、3歳と5歳の孫がいました。私たちが住んでいた自然豊かな津島地区は、放射能で汚染されてしまいました。
 こんどは海までも、汚染水で汚すというのは、大変怒っていいことだと思います。子どもたちの命を守るために、頑張っていきたいと思います。

午前11時、国会議員会館

米山努さん(いわき市)
 私は海産物が好きですから、毎日のように近くの海で獲れたアイナメとか、いろいろな魚を食べています。きょう私からは、トリチウムは有害であるということをはっきりと言っておきたいと思います。政府は「トリチウムは問題ない」と宣伝していますが、資料を調べれば調べるほど、トリチウムの有害性にどきっとします。たとえば、トリチウムは人体の臓器の中では脳にとどまることが多いようです。また、有機物に結合したトリチウムが体内に取り込まれた場合、生物学的半減期(代謝や排せつによって放射性物質の量が半分に減るまでの期間)は100日~600日くらいだそうです。長く体内にとどまり、細胞のごく近くでトリチウムのβ線を放出し続けるわけです。
織田千代さん(いわき市)
 何をいつまで流すのか分からない「海洋放出」は、それが続く限り、人びとを傷つけ続けることになるでしょう。海は世界につながる豊かな命のかたまりです。放射能を流し続けるという無謀なことを日本政府が行っていいはずがありません。事故を経験した大人の責任として、未来の子どもたちにきれいな海を手渡したい、約束を守ることの大切さを伝えていきたいと思うのです。「海洋放出はやめて」と叫び続けましょう。

首相宛て要請書を提出

理解と合意なき汚染水の海洋放出をやめ、代替案の検討を求める要請書(抄)
 政府は、福島第一原発事故により発生したタンク貯蔵汚染水を「ALPS処理水」として、この夏、海洋放出を強行しようとしています。これは、『関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない』という政府と東京電力の福島県漁連や全漁連に対する2015年の文書約束を破るもので、あってはならないことです。
 政府は、IAEA包括報告書を盾にして強行突破を図ろうとしていますが、そもそもIAEA包括報告書は、「処理水の放出は、日本政府による国家的決定であり、この報告書はその方針を推奨するものでも支持するものでもない」としています。IAEA包括報告書は、汚染水の海洋放出の科学的根拠とはならず、海洋放出を正当化できないのです。
 福島第一原発事故から12年、依然、原子力緊急事態宣言は解除されず、燃料デブリ取り出しは不確実で、廃止措置の完了形態も法的に定められていない現状にあり、「復興と廃炉の両立」の美名のもと、汚染水の海洋放出のみを強行することは無理があります。
 ふるさとの海、日本の海、世界の海を放射能でこれ以上汚してはなりません。政府はいったん立ち止まり、理解と合意なき海洋放出をやめ、代替案の検討を行うよう強く要請し、8月31日までに誠意ある回答を求めます。
 これ以上海を汚すな!市民会議 共同代表織田千代、佐藤和良
 さようなら原発1000万人アクション実行委員会 呼びかけ人鎌田慧

皆さまのご意見を募集します

海洋放出問題について、皆さまのご意見を募集します。長いものも短いものも、海洋放出を支持する声も反対する声もすべて歓迎です。お待ちしております。

※これまでにもたくさんのご意見をもらっておきながら、「みなさんの声」シリーズの更新が遅れております。誠に申し訳ありません。また、いただいたご意見に対しては、ウネリウネラから掲載の可否を聞くメールを送っています。メールで直接意思確認できた人のみ、サイトへの掲載・編集作業をしています。もし「投稿したのにメールが来ない」という方がいましたら、恐れ入りますが、uneriunera@gmail.comにご一報ください。

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