【あべこべ裁判】内堀福島県知事の証人出廷を求める

報道

 原発事故のせいで首都圏の国家公務員宿舎に「区域外避難」している人々に対して、福島県が住宅立ち退きを求めて裁判を起こしている。”行政が「原告」で避難者が「被告」だなんてあべこべだ!”との指摘があるこの裁判が、新たな展開を見せている。2017年春に区域外避難者への住宅無償提供を打ち切ったのは内堀雅雄・福島県知事であり、避難者が立ち退かねばらないかを裁判で決めるならば、内堀氏が証人として出廷し、なぜ打ち切ったのかを説明すべきだ。被告(避難者)側がそう指摘しているのだ。福島地裁が証人として採用するか注目したい。(ウネリウネラ・牧内昇平)


「福島県の住宅提供打ち切りが違法かどうかは、内堀さんを証人に呼ばなければ分かりません! すべては彼にかかっています」

 3月25日午後、6回目の口頭弁論が終わった後の集会で、被告(避難者)側の柳原敏夫弁護士がこう指摘した。

 2011年3月の原発事故以降、行政による避難指示区域の外からの避難者たち(区域外避難者)に対しても、都営住宅や国家公務員宿舎などが無償提供されてきた。(※これは当然の措置である。福島市や郡山市、いわき市などの避難指示が出なかった地域にも、放射線量が高いところ、原発から近くて不安なところはたくさんあるからだ。)

 ところが2017年3月末、福島県は区域外避難者への住宅無償提供を打ち切った。そしてその後も避難先にとどまっている人々のうち、都内の国家公務員宿舎の入居者の一部に立ち退きを求めているのが、今回の「あべこべ裁判」である。 

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 そもそもの出発点は福島県による「住宅無償提供打ち切り」なのだから、立ち退き要求の是非を決める前に、この決定が妥当かどうかを議論すべきではないか。被告(避難者)側はこう主張している。

 2017年3月末の福島県決定は、いつ、誰が、決めたのか。被告側代理人の柳原弁護士が法廷で指摘したところ、原告(福島県)側の弁護士は書面でこう返答した。

 (決定を行ったのは)2015年6月15日。第42回新生ふくしま復興推進本部会議である。上記会議の本部長は福島県知事である。”

原告(福島県)の主張

 被告側の「誰が?」という質問に対して、「新生ふくしま復興推進本部会議」という組織の名を答えるのは適当ではない。政令(災害救助法施行令3条2項)には、「都道府県知事等は、内閣総理大臣に協議し、その同意を得た上で、救助の程度、方法及び期間を定めることができる。」と書いてあるからだ。避難者たちにいつまで住まいを提供するかを決定したのは内堀知事に他ならない、ということで知事本人の証人出廷が必要だというのが、被告側の主張だ。

 証人として出廷を求めるかどうかは裁判所が決める。「あべこべ裁判」を担当する小川理佳裁判官が内堀知事を証人として呼ぶかは、今のところ分からない。法廷での言動から察するかぎり、あまり積極的ではないのかもしれない。

 しかし柳原氏はこう指摘する。

「我々は、福島県の決定は『違法である』と徹底的に主張します。もちろん原告側(福島県)も『違う』と言ってくるでしょう。これだけ原告、被告双方で対立があるならば、あとは知事本人に聞くしかない、という話になるはずです。真相解明の論点整理を徹底すれば、裁判所も簡単には、『知事を証人に』というこちらの申請を蹴るわけにはいかなくなる、と思っています」

 筆者も内堀知事の証人出廷を求めたい。

 この裁判で福島県の主張が認められれば、避難者たちは住むところを失うことになる。生きるか死ぬかの重大な問題である。裁判所は慎重に判断しなければならないし、それを強制しようとする福島県と内堀知事には、十分に説明を尽くす責任がある。なぜ住宅無償提供を打ち切らなければならなかったのか。それ以外の選択肢はなかったのか。裁判を避ける方法はなかったのか。「しかるべき者」がきちんと説明すべきだと筆者は考える。

 内堀知事は住まいが確保できない区域外避難者について、かつて記者会見でこう述べた。

一世帯、一世帯、事情を丁寧に伺いながらきめ細かく対応する

内堀知事記者会見

 知事には「有言実行」を求めたい。これは、この裁判だけの問題ではない。

 内堀知事と福島県庁は、困っている人たちに熱心に対応しているとは思えない。住宅問題だけでなく、被ばくの健康被害を心配する声に対しても、知事は冷淡な対応をとっている汚染水の海洋放出の問題にしても、知事の対応は後手後手だ。原発事故被害への賠償水準の見直し議論についても、今のところ強烈なリーダーシップはとっていない

 こうした対応でいいのかどうか。

 世界史上に残る大事故の影響下で、(避難者も含めた)福島の人びとは生きなければならない。その行政トップとして内堀氏がふさわしいのかどうかが問われている。

 証人尋問が実現しないのならば、法廷外で本件の被告側に説明してもよし。記者会見で世間に向かって話してもよし。いろいろな選択肢がある。内堀知事と福島県庁の対応を求める。

 あべこべ裁判の次回弁論は5月24日。

コメント

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