原発事故避難者の住まいの問題③賃料2倍請求

報道

 原発事故が起き、避難指示が出なかった地域からもたくさんの人が、被ばくから身を守るために福島県内外へ逃がれました。区域外避難者(自主避難者)です。福島県はいま、首都圏の国家公務員宿舎などに暮らす避難者に対して、宿舎からの立ち退き圧力を強めています。

 首都圏の国家公務員宿舎に暮らす避難者4人が裁判を起こされていることは本シリーズ①で、その裁判が広がりつつあることをシリーズ②で書きました。

原発事故避難者の住まいの問題①「あべこべ裁判」
原発事故が起き、避難指示が出なかった地域からもたくさんの人が、被ばくから身を守るために福島県内外へ逃がれました。区域外避難者(自主避難者)です。福島県はいま、首都圏の国家公務員宿舎で暮らす避難者に対して、宿舎からの立ち退きを求める裁判を起こ...
原発事故避難者の住まいの問題②相次ぐ民事調停
原発事故が起き、避難指示が出なかった地域からもたくさんの人が、被ばくから身を守るために福島県内外へ逃がれました。区域外避難者(自主避難者)です。福島県はいま、首都圏の国家公務員宿舎などに暮らす避難者に対して、宿舎からの立ち退き圧力を強めてい...

3回目の今回は、裁判以外の形での「立ち退き圧力」について紹介します。


経緯

 まずは、おなじみの時系列表を少し書き換えて紹介します。

2011年3月福島第一原発で事故発生。福島市や郡山市など避難指示区域外からの避難者たち(区域外避難者、自主避難者)に対しても、都営住宅や国家公務員宿舎などが無償提供される。
2011年~原発事故の影響が長期化したため、福島県、区域外避難者たちに対する住宅の無償提供を続ける。
2015年6月福島県が2016年度末での区域外避難者への住宅無償提供の打ち切りを発表。
2017年3月末福島県が自主避難者への住宅無償提供を実際に打ち切る。
2017年4月福島県は国家公務員宿舎で暮らす避難者に対して、公務員と同額の賃料支払いを条件に入居継続を許可する「セーフティネット」事業(上限2年)を始める。
2019年3月末県による「セーフティネット事業」が終了。
2019年 4月~セーフティネット事業が終わった後も退去できていない避難者に対して、福島県が賃料の2倍にあたる「損害金」を請求。

 県による「セーフティネット事業」が終わった2019年3月末が、福島県が設定した「最終締め切り」だったのです。ほかの住まいを見つけることができず、2019年4月以降も住み続けざるを得ない避難者たちに対して、福島県は驚くべきペナルティを科しました。

 それが、「賃料の2倍請求」です。


2倍請求の実態

 たとえば、東京都江東区東雲にある国家公務員宿舎(36階建て)の場合、2017年の家賃は部屋数によって月1万5千円~5万3千円くらい、駐車場代が1万5千円~2万5千円くらいでした。「セーフティネット事業」の期間中、避難者たちはこれくらいの金額を支払っていました。

 福島県は2019年4月以降、この「正規料金」を払うだけではダメで、この料金の2倍にあたる「損害金」を支払えと避難者たちに請求しています。広い部屋に住んでいた場合、損害金は月10万円を軽く超えます。

 避難者たちを支援する「避難者の住宅追い出しを許さない会」の熊本美彌子代表によると、損害金を請求された避難者が、「2倍請求されるのは納得いかない」として、これまで通り通常の賃料を支払おうとしたところ、福島県は受け取ってくれなかったそうです。

 10万円以上も請求されて簡単に支払える避難者がどのくらいいるでしょうか。そういう人はすでに公務員宿舎を退去していると思いますし……。「2倍請求」は「裁判」に匹敵する強硬手段であり、すぐにやめるべきだと、ウネリウネラは考えます。

 次回は「親族への圧力」について書きたいと思います。


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    コメント

    1. […] 原発事故避難者の住まいの問題③賃料2倍請求 […]

    2. 福島県民 より:

      冒頭の写真に「住まいの強制立ち退きは人権侵害」と記されていますが、地元に残った人たちは、当時、地元から逃げていく自主避難者と称する人たちから聞くに堪えないような悪口雑言を浴びせられましたが、それは人権侵害ではないのでしょうか?
      そういったことの反省もないのに、いざ自分たちが困れば助けてくれとはずいぶん虫がいい話。そういう体験をした県民は、到底この人たちを助けようなどとは思いませんよ。

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