【ご意見ご感想】寄稿エッセイ・小学校の先生から④に寄せて

8月28日に掲載した、都内の小学校教諭有馬佑介さんの寄稿に対して、福島の県立高校で教えている渡部純さんが文章を書いてくれました。有馬さんの記事はこちら↓

新型コロナウイルスへの対処に悩む有馬さんに対して、福島の渡部さんは10年前の原発事故のことをふり返ってくれています。どうぞお読みください。

【渡部純さんからいただいた文章】

まったく有馬さんのおっしゃるとおりですね。
でも、この感覚、既視感があります。
そう、10年前の原発事故のとき、福島の教員は誰もがこのような葛藤に陥っていたことを思い出させられました。

たとえば、
「政府からは、一斉休校は考えないというメッセージが何度か出されている。その一方で、学校が感染の場となる可能性も言及されている。それでも、小学生が学校で感染する割合は低いから、休校の必要はないとも言われる。」
という文章では、「感染」を「被ばく」に置き換えてみたり、「小学生が学校で感染する割合は低い」を「直ちに健康に影響ない」と置き換えてみたりするとわかるでしょう。
その時僕らが経験したのは、まさに
「いったい僕はそれらのメッセージをどう受け取って、自分の考えをどう持てばいいのだろう。どうしろって言うんだ。早く何かを決めてくれ。命令をしてくれ」という感覚だったし、「そう考えている自分に気づいてはっとする。誰かに判断を委ねたくなっている。思考停止する自分に対する自己嫌悪を感じるのは何度目だろう。もう1年半それが続いている。疲れている」という葛藤と苦しさでした。


今回のコロナ禍において、福島県教育委員会は10年前の原発事故で教訓を得たのか、各学校の校長が独自で「休校」の判断を下そうとしても、それを絶対に許さないという統制を強化しています。
まったく、学校現場の実態を無視した県教委の姿勢に、現場教員は怒りと虚無感を抱いています。
中途半端な指示で、けっきょく学校行事や部活動を制限しろと言いながら、それは学校判断に被けて責任をとろうとはしません。何を言いたいのかよくわからない文書命令だけが下に降りてきます。このままでは、コロナ対策などどうでもいいという空気さえ学校現場に生まれかねません。


それにしても、福島県教委のこの頑なな姿勢はいったい何なのか。
これは友人の指摘で氷解しました。
文科省ができる限り学校の教育活動は停止させないという姿勢に、まさに福島県教委が同調しているだけなのです。
福島県よりも感染状況が深刻ではない他県では、既に部活動の停止やら休校措置やら何らかの対応をしている自治体があるにもかかわらず、そうしないのは中央しか見ていないからだ、という友人の指摘は腑に落ちました。


この県は全体、自分自身で判断できないのです。
それは内堀知事が、先ごろオリンピック開催において、「北海道が無観客試合と判断したから福島もそうする」との見解を述べた姿勢にも示されています。


さて、僕が懸念するのは、その大人たちの自律的思考と判断のない姿勢を子どもたちはしっかりと見ているという点です。
「なぜ、コロナ感染がひどいのに休校にならないのですか?」という子どもからの質問に対して、「自分もそう思っているんだけれど、上がねぇ…」という言い訳しか思いつかない大人たちを、子どもはいったい信用するでしょうか。


ここで問われているのは感染対策以上に、自分で考え判断するという人間を育てたいのか否かという、子どもたちに対する教育的姿勢なのだと思います。
それは10年前の福島県に決定的に欠けていました。
しかし、結局、県教委は国への同調と統制の仕方ばかりを学習しただけで、自分自身で考え判断することはまったく学べなかったようです。
とはいえ、県教育庁のお役人たちの多くは元教員が多くを占めます。その一人一人の教員としての良心に望みをかけたいと思うのは甘いのでしょうか。
そんな虚無感に打ちひしがれる2年間、いや、10年間なのでした。


【ウネリウネラから一言】

「10年前の原発事故のとき、福島の教員は誰もがこのような葛藤に陥っていた」という渡部さんのご指摘に、ハッとさせられました。原発事故をきっかけに日本人は考え方の変更を迫られたはずなのですが、結局はそれを少しもできなかったことが、この新型コロナウイルス問題でも明らかになっているように思います。

「自分自身で判断しない」「自分の頭で考えない」ことの弊害は、この国の至るところに転がっているように思います。ウネリウネラも普段から「本当に自分の頭で考えているか?」と、自問しながら暮らしています(気づくと、誰かに判断を預けようとしている自分に気づきます)。

渡部さん、ありがとうございました。有馬さんの二学期直前の正直な心情の吐露が、渡部さんのこの文章を引き出してくれたものと思います。お二人に感謝します。

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