寄稿エッセイ・小学校の先生から③

 ウネリ旧知の小学校教諭、有馬佑介さんの寄稿です。

 有馬さんは東京都国立市にある桐朋学園小学校の2年生のクラスを担任する先生です。前回は、都内に雪が舞った日の子どもたちの様子を書いてくれました。記事はこちら↓

 今回は、緊急事態宣言下でさまざまな選択を迫られる学校と子どもたちの様子を綴ってくれています。ぜひお読みください。


【有馬佑介さんからいただいた文章】

 新年度が始まって、早くも1カ月がたちました。休校中だった1年前に比べ、今年の始まりはおだやかに迎えることができました。始業式はテレビ放送で行われ、入学式は以前に比べぐっと参加者をしぼって行いました。それでも、始業式、入学式ができなかった去年の4月を思えば、それは本当にうれしいことでした。

 新年度を迎えるにあたって、おぼろげだけれど、どこか希望を持っていました。あたたかくなっていけば、少しずつ状況が良くなり、できることが増やせるようになると考えていたのです。

 僕のその希望は、まったくあまいものでした。結局、この1カ月も学校は大混乱の中にいました。状況は良くなるどころか、悪くなる一方で、まん延防止等重点措置が出されたことで、多くの行事を縮小や延期する決断を余儀なくされました。

 子どもたちが学校行事をどれだけ楽しみにしているか、その経験がどれだけ子どもたちに残るものなのかを、日々実感しているだけに、ひとつずつの行事について決断を下していくことは、とても苦しいことでした。

 そしてまた、緊急事態宣言が出されました。僕の受け持っている2年生の子どもたちにとって、このことは、大きな意味を持っていました。本校では、コロナの感染を抑える観点から、「緊急事態宣言が出された場合は異学年の交流活動を見合わせる」と決めていたからです。子どもたちが待ちに待っていた、1年生との活動ができなくなるのです。

 4月の終わりには、2年生が1年生に学校を案内し、様々な教室を紹介する活動が予定されていました。「学校案内はいつやるの?」「パートナーの子はいつ分かるの?」「いつ会えるの?」受け持つ2年生の子どもたちから、何度聞かれたでしょうか。2年生の子どもたちは本当にそれを楽しみにしていたのです。「もうすぐ学校案内だ」そんな日記を書く子もたくさんいました。

 緊急事態宣言が出されたことを受け、この学校案内をはじめとする1・2年生の交流活動は延期としました。それを伝えたときの子どもたちの落胆ぶりは、それはそれは大きなものでした。

 せめてできることはないかと考え、1年生に向けて自己紹介カードをかくことにしました。子どもたちは一生懸命にそれを仕上げました。かわいいイラストを描いたり、学校に関するクイズを加えたり、カードの形を工夫したり……。手作りのカードに子どもたちがどれだけ心をこめたかが伝わってくる、力作ぞろいでした。

 「今からカードを渡しに行くよ」本当だったら学校案内をする予定だった日、子どもたちにそう伝えると、いっせいに歓声があがりました。手を洗って、消毒をして、鼻までマスクをしっかりつけて、1年生のパートナーに会いに行きます。念には念を入れ、教室は開けっ放しにし、時間は5分以内と決めました。

1年生の机には、名前シールが貼ってあります。事前に伝えていた名前を頼りに、パートナーを探します。楽しみにしていたものの、やっぱり初対面の1年生と話すことは緊張するようで、歓声をあげていたはずの子どもたちの表情は、少し硬くなっていきました。

 それでも、たった5分間ですが、心のやりとりはできたようです。渡したカードをはにかみながらうれしそうに読む1年生のとなりで、2年生はもっとうれしそうでした。

 クラスで1番体の大きいふうたくんは、大きな体を小さく縮めて、1年生の隣に膝をついて目線を合わせていました。時間が来て立ち上がった彼のひざこぞうは赤くなっていました。その赤いひざこぞうを見て、僕は心があったかくなりました。

「学校案内ができる日が楽しみだね」教室に帰ってきたみさとさんが、うれしそうにつぶやきました。その小さなつぶやきに、みんなが大きくうなずきました。

 状況はかんばしくないように思います。ここにきて、「休校」や「オンライン授業」といった言葉を再び目にする機会が増えてきました。もちろん一番に守るべきは子どもたちの安全と安心ですから、その必要があるときには、舵をきろうと思います。ただ、学校で子どもたちを見ていると、当たり前のことですが、人と関わることの良さを感じることが多くあります。

 葛藤と苛立ちの日々が続いていく覚悟はしながら、それでも子どもたちの日々は、あたたかさに満ちたものにしたいと思うのです。

(子どもたちの名前は仮名です)


【ウネリウネラから一言】

 難しい状況のなかでも躍動する子どもたちの姿と、アリック先生の葛藤が伝わってくる文章でした。長期にわたり収束しない新型コロナの問題は、子どもたちの心と体に大きな影響を及ぼしているはずです。ウネリウネラの子どもたちにも時々、不安や心配の影が見えかくれします。

 安全を確保しながら、子どもたちが人と心を通い合わせる場を持つためには、どうしたらいいのでしょうか。みなさんと一緒に考えていきたいです。

⇒寄稿へのご意見、ご感想お待ちしています。コメント欄への書き込みのほか、uneriunera@gmail.com まで、どうぞお寄せください。

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