ウネリウネラ本をつくる⑬意外な展開

さすがは124年ぶりの1日早い節分。うねりうねらにも椿事が起きました。重大事態なのです。これは報告せねばなりますまい――。

やはり逢魔が時のことでした。わが家の門口にも柊鰯をしつらえようかと思案しておりました矢先、例のねむ田さんから「どう~もっ」と呼び出しをくらっちまいました。小さくため息をついて印刷所に押しかけましたところ、なんとなく雰囲気がいつもと違うのでございます。どこか不穏なのでございます。

2階の制作フロアに上がりますと、待っていたのは、ねむ田、ルドルフ、工場長(=新登場!日活ニューフェイス)。3人そろい踏みでございました。役者がそろった感がありました。

さて、どんな活劇が始まるか。

と思ったら、主役のねむ田さんが見栄を切り、芝居がかった声音でこう切り出したのです。

「はじめまして。『ねむ田』です」

うっそーん。

ビックリ仰天玉手箱。ねむ田さんが「ねむ田です」と自己紹介してしまいました。

このブログを読んでくださっていたのですか。光栄です、ところどころ恐縮です。驚きとストレスで瞬時に髪が白くなり、持ち前の天然パーマがロマンスグレイになっちまいました。

なんとお返事すればいいのやら。

そうだそうだ。まずは詫びましょう。いくら仮想空間上とはいえ、これまでの乱暴狼藉を詫びねばなりますまい。“言い訳する前にまず詫びよ”と、山形生まれ高知育ちの祖父に厳しく育てられたうねりうねらです。すぐに非礼を詫びましょう。

お詫びの言葉を口にしたいのですが、緊張で舌がもつれてしまい、なかなか想いが言葉にならない。想いは想いのままで伝えたい。四苦八苦しながら、結果的にこう言ったのです。

「けっこう、評判いいんですよう~」

その文言で詫びたことになるのか。せめて「不快な気持ちにさせたのでしたら、」と今風に言うべきでございました。これは久々にカミナリが落ちると直感し、頭皮直撃は避けようと持参のニット帽をかぶりました。

すると案の上、ねむ田さんの眠気マナコが、急に大きくなりだしたのです。角膜周辺の毛細血管が肥大しまして、ついでに瞳孔までなかば散大しました。ニット帽でなくてヘルメットが必要だった……。こちらも覚悟を決めて生唾を飲み込みました。

次の瞬間でございます。ねむ田さんの甘いマスク越しの一言は、恐らく一生忘れますまい。

「いつも勉強になります」(深々とおじぎ)

呆気にとられちまいました。この文章から何を学ぼうと言うのでしょう……。比類なきセールストーク。まさしく営業の“鬼”。豆があったら投げつけてやりたくなりました。器の違いでございました。懐の深さが正代関、いえ貴ノ浪関ほどもありました。

この「ねむの一声」で場の雰囲気が異様に和みまして、あとはドンチャン騒ぎとなったのです。どんなことがあったかと言いますと、(ここからはうろ覚えになりますが、)なんと、噂していた本が「実は完成していた」と知らされました。そして工場長がおもむろに風呂敷包みを開きまして、その中に完成本が堆く、金塊のように積まれておりました。うねりうねらの片割れが出来あがった一冊を両手で戴いたその瞬間、工場長が「こんなに苦労したのは初めてです」と涙を落とし、隣のルドルフさんがそのしずくをさっとハンカチで拭いました。

盛り上がりついでで本のおまけに刊行記念のしおりまで付けていただくことになりました。お支払いも「出世払いでよろしい!」ということになりました(それは言ってなかったっけ?)。

とにかく気まずさ満点のうねりうねらは、穴があったら入りたい気分で逃げ帰ろうとしましたところ、その背中にねむ田さんから追撃の矢が飛んで参りました。

「きょうも長渕のトンボ、歌ってくれますか?」

熟読してくれてはるんですね……。ありがとうございます……。

うねりうねらは蛇ににらまれた蛙のごとく、「いいとも!」と叫ぶしかありませんでした。

ということで、今この文章を書いているのです。これを書き終わらない限り、スーパーで買った恵方巻はおあずけなのです。苦労して駄文をひねり出しても、ねむ田さんの晩酌のアテにされてしまうかと思うと、悔しいような嬉しいような、氷が溶けたカンボジアビールのような感でございます。

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