東京電力福島第一原発にたまる汚染水(政府・東電は「ALPS処理水」と呼ぶ)について、日本政府が海洋放出の方針を決めたのは2021年4月13日でした。それからちょうど2年になる23年4月13日に合わせて、国内外で放出に反対する街頭行動が行われました。国内だけでなく、パリやニューヨークでも…。筆者は福島県いわき市内で行われたスタンディングを取材しました。当日の様子と参加した方々の印象深い言葉を紹介します。(ウネリウネラ・牧内昇平)
放射能のことを気にせずに、健康に毎日を暮らし、子どもたちが元気に遊び、大きくなっていってほしい、そんな不安のない毎日がやってくることが望みです。しかしここにきて、政府はまた原発利用を復活、推進しはじめようとしています。事故を経験した私たちの、「ありえないことだ」という声を打ち消しながら、原発事故をなかったことのようにしながら進めようとしています。どうやらこの度の海洋放出はその流れを進めるためのスタートになりそうだ、という気がしてなりません。しかし、どんな理由があろうと私たちは二度とあのような事故はこりごりです。あのような思いは誰にもしてほしくないです。これ以上の放射能の拡散を許してはいけないと思います。これ以上放射能を海にも空にも大地にも広げないで!
市民団体「これ以上海を汚すな!市民会議」共同代表の織田千代さん
私には小学生の子どもが2人います。将来子どもたちから、「危険だと分かっていたのにママは何もしなかったの?」と言われないように、子どもたちに対して恥ずかしい気持ちにならないように、私もみなさんと一緒にがんばっていきたいと思います。
双葉郡の出身です。汚染水を流すことに反対です。もっと双葉郡の人たちに声を上げていただけるように私もがんばります。みんなで子どもたちの未来を守りましょう。きれいな海を守りましょう!
私は4歳の娘がいます。子どもを産む前に、「福島で子どもは産むな」と親戚から言われました……。子どもは今元気に育っています。でも、これから海が汚されようとしています。汚染された海で魚を食べて、娘や子どもたちの世代には何にも関係のないことなのに、風評も含めて被害を受けるのかと思うと、親としてすごく悲しい気持ちになります。
いわきに住んでいる、ただのおばさんです。私のような本当に何でもないただのおばさんの参加者が、地元の子どもたちのために、一人また一人と増えてくれることを願っています。
私はこないだ自分の子どもたちに「大人は嘘ばっかり。政府は日本という国をなくそうとしているんじゃないか」と言われてしまいました。このまま海洋放出されたら、私はたぶん子どもたちから怒られると思います。なので、自分がいまできる行動をみんなと一緒に起こしていきたいと思います。
会津生まれの私がいわきに住み着いたのは、魚がうまいからでした。それが原発事故になりまして、どうも落ち着いて魚を食べられなくなってしまいました。こんなことをやられたんでは、本当に、安心して酔っぱらいきれない思いでおります。早く、心から酔っぱらいたいと思っています。
津島から兵庫に避難しました。このまえ、GX(※1)の説明会で経済産業省や環境省の人がきました。その中の一人が、「私は福島に何度も通って、福島と共に歩んでいます」なんてことを言った挙句に、「『ときわもの』の魚を私たちは……」と言いました(※2)。あほかおめぇって。そういう風に、国はちゃんとこっちを見てません。私たちしかがんばる者がいないなら一生懸命がんばりたいと思います。
※1政府がかかげる「GX基本方針」とは、要するに原発推進への方向転換のこと。これまでは「最長でも60年」だった原発の運転期間を延長しようとしている。
※2福島県沖でとれた魚は「じょうばん(常磐)もの」。
海外にまでこの問題は広がっています。特に太平洋の国々が反対しています。太平洋諸島フォーラム(PIF)が、日本政府に対して「海洋放出を延期しろ」と言っている。そのことを無視することはできなくて林外務大臣がソロモン諸島に行ったりした。それでも、ODA(政府開発援助)の金をちらつかせても、PIF諸国は納得しているわけではありません。私たちはそういう海に生きる人びととも一緒になって、この海を守っていきたいと思います。
市民団体「これ以上海を汚すな!市民会議」共同代表の佐藤和良さん
原発汚染水、海洋放出問題へのご意見、ご感想をお待ちしております。
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