ウネリウネラが住む福島県の県立高校では、新年度の入学生から、家庭がタブレット端末を買わなければならないことになりそうです……。本シリーズ「タブレット端末を使った小学校の授業」を読んでくれた方からのご連絡で知りました。驚いたので、紹介します。
昨年12月23日、福島県教育委員会がホームページにこんな発表を出しました。
・令和4年度県立高等学校入学生から、個人所有のキーボード付き端末により生徒1人1台端末の環境を実現します。
福島県教委ウェブサイトでの発表「生徒1人1台端末環境について」
・使用端末は各家庭で準備していただきますが、新たに端末を購入する生徒のために、県立高校入学生専用の購入用Webサイト(「ECサイト」)を、令和4年3月下旬に開設します。購入を希望する生徒は、入学する学校の推奨OSを考慮し、いずれか1機種を購入することになります。
・ECサイトで購入する場合、税込50,000円をお支払いいただくことになりますが、ECサイトに必要事項を入力することにより、4,000円から10,000円のPayPayモールのポイント還元を受けることができます。
・次の家庭が新たに端末を購入する場合は、県費による補助を行います。
非課税世帯・生活保護世帯 補助上限4万5千円
上記以外で年間世帯所得が620万円以下の世帯 補助上限2万円
1人につき4万5千円というのは、かなり大きな出費ではないでしょうか。たとえば筆記用具やノートを家庭が用意すべきなのは分かります。教科書も必要に応じて買うのは仕方ないと思いますが、ここまで高額なタブレット端末を、みんなが自腹で用意しなければならないのでしょうか。大いに疑問です。
もちろん、福島県だけの話ではないようです。
「1人1台」はいま全国で進められていますが、「タブレット端末の購入費用をどうするか」については、都道府県によって考え方にばらつきがあります。文部科学省がGIGAスクール構想の関連会議に出した資料によると、2021年8月の時点では以下のようになっていました。
「公費負担」……18自治体(秋田、群馬、福井、岐阜、和歌山、山口、徳島、愛媛、佐賀、長崎、大分、青森、富山、大阪、高知、熊本、石川、岩手)
文部科学省が関連会議に使った資料「公立高校における端末の整備状況(都道府県別)」
「保護者負担」……21自治体(千葉、長野、茨城、広島、北海道、福島、東京、新潟、山梨、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、鳥取、島根、岡山、埼玉、静岡、宮城、神奈川)
「検討中」……8自治体(福岡、鹿児島、山形、宮崎、栃木、愛知、香川、沖縄)
全国一律で進めようとしているのに、その費用をどうするかは自治体任せであると……。こういうことでいいのでしょうか?
誰が得をするのか?
考えなければならないのは、このGIGAスクール構想が「誰のためになるのか?」でしょう。もちろん「子どもたちのため」と考えたいですが、たとえば「購入費用4万5千円」と聞くと、金銭的に儲けている人たちがいることを考えてしまいます。タブレット端末を作っている会社、売っている会社、専用の購入用Webサイトを作っている会社、授業で使う教育ソフトを開発している会社、先生たちに「タブレット端末の活用の仕方」を教える会社……。
先日紹介した深瀬幸一さんのご意見「現実世界だって豊かだ」には、こうありました。
子どもに端末を与えたのは別に教育政策じゃなくて、子どもをダシにした経済政策なんだろうけど。
そう言えば、ウネリウネラは昨年3月、「こどもファーストな教育を考える会のこと」という文章を書きました。「こどもファーストな教育を考える会 in Kobe」という団体が主催したオンライン交流会に参加しました。そこで教育研究者の鈴木大裕さん(高知県土佐町議でもある)が紹介したデータに驚き、感想をこのように書きました。
GIGAスクール予算が加配教員予算の57.3倍であるということ(出典:高橋哲「新型コロナウイルス臨時休業措置の教育法的検討(2):学校再開後の子どもの「学びの保障」をめぐって」『季刊教育法』2020年9月)には、正直、開いた口がふさがりませんでした。
2021年3月29日付ウネリウネラ「こどもファーストな教育を考える会のこと」
教員の数を増やし、少人数学級を実現することは大事だと思います。そのために必要な「加配教員予算」の57.3倍のお金が、「GIGAスクール構想」に使われているようです。
そんなにお金をたくさん使っているのに、「保護者負担」とする自治体もたくさんあるという……。「お金を使うべきところが違う!」と言いたくなります。
ですが、小学校と高校では、タブレット端末の必要性も変わってくるかと思います。そのあたりも含めて、皆さまからご意見を伺いたいです。
みなさんのご意見をお聞かせください
読者のみなさんの考えを募集しています。タブレット授業やGIGAスクール構想全体について、思うところを書いていただければと思います。以下の投稿フォームから、コメント欄などでも、お気軽にご意見をお寄せください。ペンネームOKです!
コメント