タブレット端末を使った小学校の授業

落書き帳

 文部科学省が「GIGAスクール構想」ということを言っています。

 2019年12月、萩生田光一文部科学大臣(当時)はこんなメッセージを発表しました。

Society 5.0 時代に生きる子供たちにとって、PC 端末は鉛筆やノートと並ぶマストアイテムです。今や、仕事でも家庭でも、社会のあらゆる場所で ICT の活用が日常のものとなっています。社会を生き抜く力を育み、子供たちの可能性を広げる場所である学校が、時代に取り残され、世界からも遅れたままではいられません。1人1台端末環境は、もはや令和の時代における学校の「スタンダード」であり、特別なことではありません。これまでの我が国の 150 年に及ぶ教育実践の蓄積の上に、最先端の ICT 教 育を取り入れ、これまでの実践と ICT とのベストミックスを図っていくことにより、これからの学校教育は劇的に変わります。

文科省ウェブサイト

 要するに、生徒一人ひとりにタブレット端末を配って授業で使わせる、ということのようです。

 ウネリウネラの子2人は、福島市内の公立小学校に通っています。1人1台iPadを持たされています。いま現在これを授業でどのように使っているか、聞いてみました。一例を紹介します。主に上の子(4年生)についてです。


タブレット端末をどう使っているか、一例

算国理社全般

 インターネットにアクセスすると、教科書会社が作った自習用のサイトがあります。そこをクリックすると、クイズ形式で問題が解けるようになっています。これを時々、自習の時間などに使うそうです。

 サイトを見せてもらいました。たとえば「社会」では、 

問題「江戸幕府を開いたのはこの中のうち誰ですか? A 織田信長 B 豊臣秀吉 C 徳川家康」

と出てきます。

回答すると、答え「C 徳川家康」となって、家康のイラストが表示されます。

10問終わると、「あなたの正答率は100%!」みたいなのが出ます。

社会の調べもの

 福島市内にあるダムの「調べ学習」をまとめるのに使っていました。まず、1枚のシートにタイトルを書き込みます。「●●ダムの歴史」みたいな感じです。あとは、水道局のホームページからコピーしたダムの画像を貼り付けたり、そこに書いてあった説明を短くして書き入れたり、していました。パワーポイントの資料を1枚つくる感じですね。

理科

花の授業です。校庭に咲いていたサクラをタブレットで撮影し、教室に戻る。タブレットの画像を見ながら、その花をスケッチし、花びらやおしべめしべの様子を学ぶ、という授業をしていました。

音楽

 いわゆる音楽アプリを使っていました。アプリを開くと、「ギター」「ピアノ」「ドラム」などのアイコンがあり、そこをクリックすると、ギターの六弦やピアノの鍵盤が画面に出てきます。そこを手でおさえると、実際の楽器に似せた音が鳴ります。これをみんなで使って曲を「合奏」したりするそうです。このアプリを使うと簡単に「作曲」もできるそうです。

・・・・・

どう思いますか?

 こんな感じです。皆さん、どう思いますか? 以下はウネリウネラの感想です。

 自習サイトに関して言えば、まあ、「遊び感覚で学ぶ」みたいなことなのでしょうか。タブレットを持ち帰ってきた日、子二人は「アチョー!」とか「デヤー!」とか言いながら回答し、正解したらガッツポーズしていました。

 社会の「調べ学習」について言えば、「ダムについて詳しく知る」ことよりも、「いかにきれいなプレゼン資料を作るか」という授業になっている気がしました。子どもに感想を聞いてみたところ、「タイトルの位置を変えたり、写真の大きさを変えたりするやり方が難しかった」などと言っていました。「説明をもっと長く書きたかったけど、短くするのが大変だった」とも。そして当然のように、「分からないことはGoogleで検索して」ということになっています。インターネットの世界にあることが全て、ではないはずですが……。

 理科や音楽の授業については、「実物」に触れる機会を子どもたちから奪っているような気がします。

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追加で

 ここまで書きましたが、ウネリウネラはもちろん、学校の先生たちを責めたいのではありません。先生たちは、文科省や教育委員会から指導され、やむを得ず、タブレット端末を授業に取り入れようとしているのだと思います。

加えて、子がタブレット端末を使い始めて感じていることを3つ挙げます。

1)教育格差の拡大につながらないか

 自宅でタブレット端末をネット環境につなぐ必要があります。福島市はネットに接続するための費用補助もしていたはずです。しかし、費用負担がなければすぐにネット環境につなげられるものでしょうか。プロバイダとの契約などは、簡単な人には簡単ですが、人によってはとても億劫です。そんな心の余裕を持てない保護者もたくさんいるはずです。タブレット端末が教育格差をさらに広げる結果にならないかと心配です。

2)登下校の荷物が重くなる

 配られたタブレット端末はiPadですが、子どもにとってはかなり重いです。登校する子どもたちを見ていると、普段から「荷物が重そうだな」と思います。ランドセルの中は教科書や体操着などでいっぱいです。それにiPadが加わると、一段と重みが増します。

 また、先生から「これはすごく高いものだから大事に使ってね!」と言われたという下の子は、かなりおっかびっくり扱っていました。そんな高価なものを子どもに使わせるのは……と思います。

3)「ゲーム漬け」「スマホ漬け」を危惧していたのではないの?

 学校では「家族ふれあい週間」といった期間が設けられています。SNSやテレビゲーム、スマホいじりなどで親子の会話がなくなっている。この1週間はそうしたものの利用を控え、”家族でふれあおう”ということのようです。※正式名称は忘れましたが、趣旨はそういうことだったと記憶しています。上の子が以前いた小学校にも同様のものがあったので、今はどこも慣例的になっていることなのかもしれません。

 しかし、学校からはタブレット端末を持ち帰ることがあります。ほぼスマホですよね。ゲームはできなくなっているのかもしれませんが、先ほど書いた通り、ゲーム感覚で学べる教材などは入っています。インターネットは使えるのでYouTubeを見たりはできます。ゆったり会話したり遊んだりする「ふれあい」とは、少し矛盾するのではないかと思います。

・・・・・

そもそも教育とは

 以上、GIGAスクール構想がある公立小学校の教室でどのように実施されているかを紹介しました。もちろん、タブレット端末をすべて否定している訳ではありません。リモート授業などは一定の利用価値があるとも思います。タブレット端末でなければできない授業も、(今のところ子どもたちからそういう授業があったとは聞いていませんが)あるのかもしれません。ただ、功罪どちらが大きいかを考えた場合……と思っています。

 蛇足になりますが、教育とは本来、「今の社会のかたちに適応させるため、子どもたちに鋳型をはめる」ことではなく、「子ども一人ひとりが持って生まれた個性を十分に伸ばす環境をつくり、そうして自由に育った子どもたちに今の社会の悪いところを変えてもらう」ということだと、ウネリウネラは思っています。


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 以前から書きたいと思っていたこのテーマ。さまざま思うところはありますが、ぜひ読者のみなさんの考えをお聞かせいただきたいです。

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