東北地方でも後を絶たない過労死・パワハラ死

私はパワハラを含む過労死問題を重要な取材テーマの一つにしています。

4月から福島で働くようになってからも、この問題については機会を見つけて書き続けたいと思っていましたので、まず一本新聞に記事が載り、少しほっとしています。

http://digital.asahi.com/area/fukushima/articles/MTW20200605070430001.html

 

2020年6月5日付 朝日新聞東北共通面

記事に書いたお二人(児玉さんと五十嵐さん)の労災申請や裁判の代理人を務めるのが、後半にコメントを紹介した大阪の松丸正弁護士です。松丸さんの紹介により、お二人のご遺族の取材が実現しました。

ご遺族にとっては、こうした取材を受けること自体がとてもつらいことだと思います。

「世の中に伝えたい」という気持ちがあるとしても、同時に、思い出したくないものまで思い出させてしまうこともあります。取材者として細心の注意を払いますが、それでも取材によってご遺族を傷つけてしまう側面はあると思っています。

そうした心のダメージを引き受けてまで協力してくださった児玉さん、五十嵐さんのご遺族に心から感謝します。

記事では「どのように過労死・パワハラ死を防ぐか」という点については書いていません。

理由は二点。与えられた紙幅では到底書ききれないというのが一点目です。

もう一つは、これ以上の犠牲を防ぐうえで最も大切なのは、「みんなが過労やパワハラ問題を【自分事】として考えること」だと思っているからです。

長時間労働を防ぐ法律ができても、パワハラ防止策が企業に義務づけられても、結局そうした制度を運用するのは、人間です。経営者は当然として、働く者やその家族一人ひとりが「他人事」ではなく「自分事」として考えなければ、過労死・パワハラ死をなくすことはできないと思っています。

この二点により、私は亡くなった方とご遺族の声を取り上げることに最大限力を注ぎました。

この記事に関連して、東北の労災認定の件数について少し紹介します。まず、過去5年間(2014年度から18年度)の認定件数です。

  心の病 脳・心臓疾患
  申請 認定 認定率 申請 認定 認定率
青森 36  23 64% 18  7 39%
岩手 45    28   62% 21 18 86%
宮城 176     45 26% 81 31 38%
秋田 48   14 29% 12   3 25%
山形 52  26 50% 20   5 25%
福島  88      34 39% 60 18 30%
東北6県 445  170 38% 212   82 39%
全国 8109   2438 30% 4100 1279 31%

全国では「心の病(精神障害)」の認定が2400人、「脳・心臓疾患」が1200人を超えます。東北6県でもそれぞれ170人、82人と、決して少なくない数字でした。たった5年間でこれだけの人が労災認定されているという現実に、愕然とさせられます。

もちろん、仕事が原因で病気になった人がすべて労災を申請しているとは限りません。制度を知らなかったり、会社に説得されて申請を控えたりするケースはたくさんあるはずです。労災申請・認定に至ったケースは「氷山の一角」にすぎないことも書き加えておきます。

少し注目してもらいたいのは、「認定率」です。五年間の認定数を申請数で割りました。

東北6県は全国平均よりも若干高いことが分かりました。サンプル数が少ないのであくまで参考ですが、岩手県の認定率がとびぬけて高いのに驚きました。5年以上前から続く傾向なのか、理由はなんなのか。調べる必要があると思っています。

 つぎに、「働き手10万人に占める労災件数」がどのくらいかをグラフにしました。労災申請・認定件数を、総務省「労働力調査」にある「雇用者」(※雇い主ではない就業者)の数で割っています。南関東(埼玉・千葉・東京・神奈川)の数字も出しました。

  心の病 脳・心臓疾患
  申請 認定 申請 認定
東北6県 11.5人  4.4人 5.5人  2.1人
南関東 15.2人 4.6人  7.7人  2.0人
全国 14.1人  4.2人  7.1人 2.2人

東北6県の労災認定は、「心の病」が働き手10万人中4.4人。「脳・心臓疾患」が10万人中2.1人です。

正直に言えば、これまで漠然と「東北は労災認定が少ないのではないか」と思っていましたが、働き手の数で比較すると、首都圏や全国平均と比べて大差ありませんでした。

一方、申請件数は東北6県が少ないなと感じました。首都圏の申請が多いのは、労災事件に取り組む弁護士ら専門家の数と関連するのかもしれません。

このあたりは全国的に分析してみる必要があるかもしれないと思いました。

データの詳しい分析はまだ途中ですが、記事に関連して調べたことを書きました。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。