伝承館は何を伝承するのか~ウネリウネラの意見①

 福島県内に昨年オープンした「東日本大震災・原子力災害伝承館」(伝承館)の「あるべき姿」を考えていきます。企画の狙いについては前の記事「企画のはじめに」をお読みください。

 議論の材料として、館内の展示フロアに掲示されている「文章」をアップしてきました。以下のページにまとめていますので、ご覧ください。

→ 伝承館は何を伝承するのか(展示資料の記録一覧)

 ブログ読者からのご意見、ご指摘と共に、私たちウネリウネラが感じたこと、気づいたことも書いていきたいと思います。。

 今回は「伝承館の展示には『人』が見当たらない」という指摘です。賛成・反対、いろいろあると思います。ぜひご意見を聞かせてください!


【ウネリウネラの意見①】

 私たちウネリウネラが伝承館を見学して気づいたことの一つは、「展示から『ひと』の声や姿が見いだせない」ということです。

 事故直後の福島第一原発の状況や、それに応じた行政の対応、住民たちの避難生活の様子。これらが展示のメーンの一つになっています。そうであれば、対応の最前線に立った政府、自治体、東京電力の代表者などの名前が展示に登場するのが当然だと思いますが、実際はどうでしょうか。

「人物」が見当たらない展示

 まずは、展示エリアにあるパネル文章について見ていきます。

【①災害の始まり】から【②原発事故直後の対応】を経て【⑤復興への挑戦】まで、展示パネルに書かれた文章を調べてみましたが、誰かの氏名が出てくる箇所は、なんと一つもありませんでした。当時の菅直人首相、枝野幸男官房長官、東電の勝俣恒久会長、清水正孝社長、佐藤雄平・福島県知事、内堀雅雄・副知事、福島県内の各市町村長。こういった方々のお名前は展示パネルには一度も出てきません。

 よくよく探してみると、個人の行動が記載してある文章が、<1-3 原子力発電所事故の発生>のパネルに一つだけありました。

「地震発生から約50分後、津波が福島第一原子力発電所を襲い、これにより、発電所は1号機から5号機までの全交流電源を喪失。この事態を受け、当時の福島第一原発の所長は、原子力災害対策特別措置法に基づき通報を行いました。」

伝承館の展示資料より

「国が……」「政府が……」という文章が続く中で、ここだけは「当時の福島第一原発の所長は」とあります。しかし、ここでも氏名は伏せられています。この人物が故・吉田昌郎さんであることは周知の事実だと思いますが、なぜ実名を出さないのでしょうか。

 次に映像関係を調べていきます。各展示エリアの冒頭には、「証言映像」というタイトルの映像資料があります。それほど大きくない液晶パネルがあり、パネルのすぐ前に立つと自動で動画が始まるようになっています。

 行政の対応を紹介する<1-4 災害対策本部の記録>エリアにある「証言映像」に登場する人は以下です。

・事故直後オフサイトセンターに詰めた福島県相双地方振興局の副部長

・3月下旬にオフサイトセンターの広報班長として派遣された経産省官僚

・川俣町の消防係長

 先ほど挙げたような行政トップ、東電トップたちの姿は、ここにも全く現れません。

 ちなみに東電関係は「イチエフの警備員」の方が一人、<1-3 原子力発電所事故の発生>パネル下の証言映像に登場し、「東電の人は熱心に頑張った」と語っています。

佐藤氏、内堀氏、新旧福島県知事の不在

 福島県について言えば、私の記憶にある限り、佐藤雄平知事は当時のニュース報道をまとめた映像資料にちらっと映るだけです。内堀副知事にいたっては一度も登場していません。あえて、隠れているのでしょうか? 

「オフサイトセンター」という施設がありました。原発の緊急事態に対処する施設として準備されていましたが、停電や通信手段の途絶のために役に立ちませんでした。このことについては、伝承館の展示パネルも「その機能をほとんど発揮することなく」と書いています。震災直後、県庁の責任者としてこのオフサイトセンターに向かったのは内堀氏ですよね。内堀氏が自ら課題になったことを語るのが当然だと考えます。また、内堀氏はその後福島県知事に就任しています。現在も県政を担っている身として、どのような気持ちで取り組んでいるのか、当時のことをどう考えているのか。当事者の一人として、伝承館を訪れる人に語るべき立場だと考えます。

 責任者を特定し、その人を個人攻撃しようと言いたいのではありません。

 ただし、大震災や原発事故は「歴史的な出来事」です。「当時は菅直人という人が首相でこういう事故指揮をとった」とか、「事故は東電の原発で起き、当時の勝俣会長や清水社長はこんな対応をした」といったことの一つ一つも、歴史的に継承されるべきことではないでしょうか。そこに人物名が入らないのはどうにも解せない。

 歴史の教科書には「徳川家康が江戸幕府を開いた」とか、「ナポレオン・ボナパルトがフランス革命後に皇帝の座に就いた」と書いてあります。「フランスではフランス革命を経て帝政が布かれた」だけでは、おかしいわけです。 

 また、ほとんど「人物」が登場しない伝承館の展示を眺めていると、「天から降ってきた禍」であるかの感覚がとても強まるのを感じます。

 津波対策にしても、原発事故とその後の避難の問題にしても、天災であると同時に「人災」の側面もあると思います。1号機のベントも、住民たちへの避難指示も、福島県によるSPEEDIのデータ廃棄も、すべて「政府」や「東電」、「福島県」が組織で行ったアクションであると同時に、それを決断した「人」がそこにはいたはずなのです。さかのぼれば福島・浜通りに原発を建てたのも、非常用電源の確保など津波対策を先送りしたのも、同じことです。それらを行った人を責めたいのではありません。ただ、この災害が「人災」であることを胸に刻みこむためには、やはり「人物」の存在が展示に必要なのではないでしょうか。

 以上のようなことから、私たちウネリウネラはこう言いたいです。

伝承館への提言①

「事故対応の最前線に立った政府、自治体、東京電力の代表者などの氏名を登場させること」

※「伝承館の展示からは『ひと』が見えない」という指摘は、オリジナルなものではありません。福島市内の高校教諭、渡部純さんへのインタビューでご指摘いただいたポイントであることを付記しておきます。渡部さんのインタビュー記事は今後紹介します。ちなみに、渡部さんはすでに本企画の読者投稿にも登場してもらっています。記事はこちら↓

伝承館は何を伝承するのか~みなさんの声③


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※各エリアの展示文章はこちらの一覧にまとめています。→「伝承館は何を伝承するのか」

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