【せっかくタンクにためたのに、なぜ海に流すの?】海洋放出めぐり市民と政府・東電が意見交換会@福島

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 東京電力福島第一原発で生じる汚染水(※)の海洋放出をめぐり、福島の市民たちは19日夜、政府・東電の担当者を招いた意見交換会を開きました。会場は福島市内にある福島県文化センターでした。

 経産省の山口雄三氏(原発事故収束対応室長)、原子力規制庁の南山力生氏、東電の佐藤暢秀氏らが登壇。約80人の市民たちは2時間にわたって、担当者の説明を聞き、自分たちの意見・質問をぶつけました。やりとりの一部を紹介します。

※ALPS(多核種除去設備)で処理後の汚染水です。政府・東電は「ALPS処理水」と呼ぶように促しています。処理後も放射性物質が含まれていることから、筆者(牧内昇平)は「汚染水」と呼んでいます。


「理解を得られていない中で、なぜ放出するのか?」

市民:海洋放出に納得していない人はたくさんいると思います。国・東電は「一定の理解は得られた」と言って海洋放出を始めましたが、これはどういう意味なのですか?
経産省:8月21日に岸田総理らが全漁連(全国漁業協同組合連合会)の坂本会長らとお会いした際、坂本会長から「生業継続に寄り添った政府の姿勢と安全性への対応について我々の理解は進んできている」という言葉をいただいております。「約束は果たされていないが、破られたとは考えていない」との声もいただいております。
市民:8月21日の同じ日、全漁連の会長が最初に言ったのは、「漁業者や国民の理解を得られない海洋放出に反対だ」ということだったと思います。この最初の言葉を無視していいのですか?
経産省:全漁連の言葉として「我々の理解は進んできている」という言葉をいただいていると認識しています。
市民:一番最初の「反対だ」というところは無視された、と受け取っていいんですか?
経産省:「反対」というところも承知はしております。そのうえで、必要な対策を求めると全漁連会長はおっしゃっていまして、そうした面で政府の対応について「理解は深まっている」とおっしゃっていただいたのだと考えています。

「国や東電を信用できない」

市民:10月にALPS配管の洗浄作業中に作業員2名が被ばくし、入院されました。事故の責任の所在はどこにあるのでしょうか?
東電:廃炉実施主体である当社には、適切な作業環境を維持する責任がございます。作業内容に応じた適切な装備を行うように、指示を徹底しております。
市民:これからもいろいろ起きてくると思うんですね。私たちも国と東電を信用したいのですけれど、これまでの十二年以上の経過を考えると、東電はなんか隠しているというか、嘘をついているというか、本当に信頼できないんですよ。国と東電が発表することを信頼できるように、きちんとした情報公開をやっていただくようにお願いします。
(会場から拍手)

「私たちを馬鹿にしないでください」

市民:ALPS処理した水は安全なんでしょう? それなら私に飲ませてください。
原子力規制庁:放射能の濃度の基準は下回るようにして放出しています。一方で、飲料水というのは飲料水の基準というのがありますので、今コップに持ってきて「飲めるか?」と聞かれれば、私は「飲めません」と答えています。
市民:きょうの経産省の資料には「トリチウム濃度が1500ベクレル/㍑」という基準はWHO(世界保健機関)の飲料水基準の7分の1であると書いています。しかし、先ほど「飲めない」と言いましたよね? だったらこういうことは書かないで下さい。はっきり言ってデタラメです。私たちを馬鹿にしないでください。
経産省:「1500ベクレル/㍑という数字だけではよく分からない」という声をいただいておりましたので、飲料水基準の7分の1であると記載しております。
市民:それは誤りです。勘違いします。
経産省:いや、勘違いしません。

「本当に廃炉できるのかを心配している」

市民あなた方はどういう状態が廃炉だと考えていますか?
経産省:国が定めた中長期ロードマップで「2041~51年に廃炉措置を完了させる」とあります。廃炉、いわゆるエンドステートの状態なんですが、これから取り出していくデブリの性状などを分析した上で、地元の皆さんの意見も踏まえながら検討しなければいけないと思っています。今この瞬間に「これがエンドステートだ」という答えは出しておりません。
市民:デブリ取り出しは未だにできていませんよね。本当に50年ごろに廃炉できるのか、とても心配しているんです。
経産省:世界でも前例のない作業です。安全第一で確実に進めなければいけません。非常にチャレンジングなことだと思うのですが、一歩一歩進めなければいけません。おっしゃったように2号機のデブリの試験的取り出しは2年遅れております。しかし年明けからは、デブリ採取に使うロボットアームを通すための堆積物除去が始まります。デブリ取り出しは遅れておりますが、着実に進んでいます。

「せっかくためたのに、なぜ海に流すんですか?」

市民:「廃炉に向けて着実な努力をいたします。東京電力」と書いてありますけど、廃炉って何なのか分かってもいないくせに、こんな風に書くのはおかしいと思います。事故で漏れちゃったものはしょうがないと思いますよ。それをせっかくタンクに詰めたのに、なんでわざわざ海に流すんですか? どう考えてもすごくおかしいです。「薄めたからいい」とここに書いてありますけど、たとえば医者に「減塩してください」と言われて、「はい。お味噌汁は薄めていっぱい飲んでます」と言ったら怒られますよね。同じだと思うんですよ。すごく人を馬鹿にしているとしか思えません。
※意見表明という形だったので、政府・東電からの回答はありませんでした。

※この日の意見交換会は市民有志による「国・東電住民説明会 県北実行委員会」の主催で行われました。主催者は「会場費などの諸費用について国と東電に折半を求めたが、断られた」と話しています。


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