【1号機圧力容器ぐらぐら問題】東電の対策は?

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 東京電力福島第一原発1号機の「圧力容器ぐらぐら問題」について、6月5日に開かれた原子力規制委員会の会合で、東電から説明がありました。圧力容器の土台(ペデスタル)が崩れてしまった場合にどんな対策が可能なのか。東電の説明に原子力規制庁はどう反応したのか。紹介します。
※トップ画像は東電が原子力規制委員会に提出した資料から転載

「圧力容器ぐらぐら問題」が初めての方はこちらをどうぞ。


東電「著しい被ばくリスクはない」

これまでのあらすじ
 1号機の圧力容器の土台部分(ペデスタル)のコンクリートが溶け落ち、中に入っている鉄筋がむき出しの状態になっているのが発覚。土台が崩れてしまうんじゃないか?!とおおいに心配される事態になった。
 5月24日に開かれた原子力規制委員会は、東電に対して、「圧力容器の土台が役に立たなくなった時の『評価』(どんな影響があるかの予測)を行いなさい。しかし、評価を行うだけではダメで、評価結果にかかわらず、その『対策』も検討しなさい」と指示を出した――
PCV=格納容器、RPV=圧力容器(原子力規制委員会の会合に提出された東電資料から転載)

 6月5日に開かれた会合では、東電が主に原子力規制庁の職員に対して、検討中の『評価』と『対策』について説明しました。
原子力規制委員会原子炉の安全チェックの総本山。学識経験者5人が委員をつとめる。
 原子力規制庁=原子力規制委員会の事務局となる省庁

6月5日の原子力規制委員会会合の様子(ユーチューブの画面を転載)

 まずは「評価」(どんな影響があるかの予測)です。東電は、土台(ペデスタル)が崩れた場合のシナリオをこう説明しました。

東電のシナリオ
▽土台(ペデスタル)が崩れて圧力容器が1.3メートル真下に沈む。圧力容器についていた配管が下に引っ張られて、外側の圧力容器にも裂け目(開口)ができる――
▽圧力容器の表面についていたダスト(放射性物質を含むチリ・ホコリ)がはがれて飛散する。もしくは、圧力容器内に残っている燃料デブリのうち粉状のものが飛散する――

 東電は「0.3メートルしか沈下しない」と述べてきましたが、原子力規制委員会の指摘で「1.3メートル沈下」と「想像を広げた」そうです。

 しかし、こうしてどんなに厳しい条件で考えても、東電の評価(予測)によると、建屋周辺の被ばく量は約0.04ミリシーベルトと低く、「著しい放射線被ばくのリスクを与えることはない」そうです。

原子力規制委員会の会合に提出された東電資料から転載

 しかし、これはあくまで東電の予測ですよね。実際にこれで済むとは言い切れません。5月24日の原子力規制委員会でも、委員から「(東電が)『数字はいくつです』というのをそのまま受けとめることはできない」と指摘されていました。この日の会合でも、原子力規制庁の竹内淳・東電福島第一原発事故対策室長からこのように指摘されていました。

 先日の原子力規制委員会でも指摘された通り、インベントリー(放射性核種の量)がどのくらいかは確たることが言えないので、0.03とか0.04という決め打ちで、この値が実際その通りかと言うと、なかなか妥当性が言えない。あと1桁多いとか、数ミリシーベルトになる可能性も無きにしもあらずかなと思っております。

原子力規制庁の竹内氏

 筆者も、どんな対策があるのか、が大事だと思います。

窒素封入停止、建屋大型カバー

 東電が「万が一の事態に備えて」検討しているという対策は以下でした。

東電が原子力規制委員会に提出した資料の一部を転載(赤字は筆者)

 会合の議論を聞いていると、どうやら「窒素封入停止」というのが重要なようでした。

 通常時、圧力容器には、水素爆発を予防するために窒素が送りこまれている。外から窒素が送りこまれるぶん、中にあるダストが押し出されて飛び散る。緊急対応として窒素を止めれば、ダストの飛散はほとんどなくなる――。ということが考えられているようです(短時間窒素を止めても、すぐ水素爆発には至らない、という判断)。


図では、圧力容器に1時間あたり30㎥の窒素が送りこまれている=東電が原子力規制委員会に提出した資料の一部を転載

 窒素を送り込む装置はA・B・Cと3つあるらしく、そのうちA・Bは遠隔で操作が可能。Cは「遠隔操作できるように改造を計画中。今年秋ごろに可能になる見込み」と東電は説明していました。

 一方、対策の中には「大型カバーによるPCV(格納容器)からの直接放出量の低減」というのもありました。これは新しいものではありません。もともと計画されている、建屋の最上階(オペレーティングフロア)にあるガレキ撤去用の大型カバーのことです。

東電が原子力規制委員会に提出した資料の一部を転載

 いま計画中の大型カバーについては、筆者としては元原発作業員の今野寿美雄氏が「本格的に圧力容器が倒壊した場合あんなものでは足りない」と話していたのが記憶に新しいところです。この点については、5日の会合でも原子力規制庁から指摘が入りました。

 建屋カバーはオペレーティングフロアをカバーするイメージです。しかし、天井だけでなく、近くの壁も空いています。カバーで全部フタができるんですというのは、疑問かなと思っています。どの程度カバーできるのかという詳細を今後示してほしいと思います。

原子力規制庁の竹内氏

 また、ぺデスタルが崩れた場合に「最後の砦」となるインナースカートという金属筒の耐震評価についても、原子力規制庁の竹内氏は「東電が使っている地震の大きさの想定値(600ガル)は低い。検討用地震動(900ガル)で評価してほしい」と指摘しました。

インナースカートは建屋の基礎部から格納容器を貫き、ぺデスタルの下部まで突き出している。厚さは約30ミリ金属の筒=東電が原子力規制委員会に提出した資料の一部を転載

 以上が5日行われた原子力規制庁の会合レポートです。この日の会合はどちらかと言えば、東電の検討状況を聞くのが主眼でした。恐らく今後の原子力規制委員会で、委員たちから意見が出てくると思います。また報告します。

みなさんの意見を募集します

     

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