情報公開制度を駆使して行政の原発事故対応を検証している市民団体「電通研」のメンバーが5月23日、福島県庁で記者会見を開きました。「国や福島県の情報開示の姿勢がどんどん後退している」と言います。一体どういうことでしょうか。
学識経験者の氏名「非開示」に不服申し立て
電通研の正式名称は、「東京電力福島第一原発事故に関わる電通の世論操作を研究する会」です。23日の会見者は、野池元基氏、海渡雄一氏、今野寿美雄氏、武藤類子氏でした。
4人はこの日の午前に行われた福島県情報公開審査会に参加したそうです。その目的は、福島県がある公文書の一部を「非開示」にしたことに異議を唱えるためでした。
2013年5月、福島県は「新生!ふくしまの恵み発信協議会」という会議を開きました。広告代理店の電通や県内のメディア各社が参加していたことが分かっています。この会議について電通研が情報開示請求したところ、学識経験者3人の氏名が「非開示」とされました。
3人の学識経験者の「所属」は開示されています。日本医師会と東洋大学、東京医療保健大学です。ただし職名・氏名は伏せられていました。行政が開く審議会などでは当然、委員の氏名は公表されます。これを非開示にするのはおかしい、というのが電通研メンバーの考えです。
相次ぐ「非開示」決定を問題視
電通研メンバーによると、さらに根深い問題があります。上の件だけでなく、このところ、原発事故対応に関する情報開示請求をした時、不当な理由で「非開示」にされる例が増えているというのです。電通研の野池氏が記者会見で示した資料を紹介します。
まずは環境省が作っていた「中間貯蔵等福島における環境再生に関する広報業務報告書」の一部です。野池氏が2020年に開示請求したところ、環境省は内容のほとんどを「黒塗り」にしてきました。
非開示の決定に不服がある場合、第三者機関に審査を求めることができます。野池氏が審査を求めた結果、「開示すべきである」との結論が出ました。黒塗りが解除されました。
黒塗り部分には新聞記事なども含まれていましたが、情報収集の「目的」などが伏せられるのは納得がいきません。
次は復興庁による「『海外に向けた情報発信業務』契約書の仕様書」です。これも一部が黒塗りにされましたが、野池氏によると、今年3月に審査請求を行った結果、黒塗り部分は「開示すべきである」という結論がすでに出たそうです(現在開示待ち)。
さらにおかしなことが起こったのは、環境省の「2012年度除染等に関する広報業務報告書」の情報公開でした。野池氏は2019年にこの文書の開示請求を行い、その時は全面開示されました。
それなのに、同じ文書を今年4月に再び開示請求したところ、今度は大半の部分が黒塗りになったのです。
これはどう考えてもおかしいでしょう。電通研の野池氏のコメントを紹介してこの文章を終えます。
国や福島県の情報公開の姿勢がどんどん後退している。市民の知る権利が侵されている。これは社会的に検討されるべきではないか。
野池元基氏
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