道の真ん中を歩く~ふくしまレインボーマーチ~

報道

「皆さん、きょうは道の真ん中を歩きましょう!」

10月2日午後2時半、快晴。「第3回ふくしまレインボーマーチ」は、大会スタッフのこんな一言でスタートした。

レインボーフラッグを先頭に、約100人の参加者たちが福島市内の町の中を練り歩いた。片手で持てる六色の旗を振りながら、道行く人に笑顔を振りまいていく。音楽に合わせて踊りながら歩く人、通行人に「こんにちは!」と声をかける人、自作のプラカードをかかげる人……。みんな、楽しそうだ。

福島市内を歩くレインボーマーチの参加者たち。

多様な性への理解を深め、性的マイノリティを含む多様な人びとが暮らしやすい福島を目指す――。ふくしまレインボーマーチ実行委員会による、このイベントの趣旨だ。性自認や性的指向は人によって様々である。マーチは「みんなが生きやすい世の中」をめざしている。

副題は「True Colors ~さいしょの1歩~」。ふくしまレインボーマーチは3回目の開催だが、過去2回は新型コロナの影響を受けてオンラインでの開催だった。町の中を実際に行進したのは今回が初めてだ。

先頭を歩くのは実行委員長の廣瀬柚香子さん(25)だ。廣瀬さんは福島県矢吹町在住。自分のことを男性とも女性とも思えない「Xジェンダー」だと表現する。レインボーマーチを主催した理由をこう話す。

「マイノリティではない人たちに対しては、『私たち性的マイノリティが身近に存在しているんだよ』ということを知ってもらいたかったです。そして一緒に歩いてくださった皆さまには、『みんな自分らしく生きていて素敵だよ』っていうメッセージを伝えたかったです」

先頭が実行委員長の廣瀬柚香子さん。

警察に先導され、マーチが車道の真ん中をいく。廣瀬さんが「みんな、道の真ん中を歩いているよ!」と声をかけると、「イェーイ!」と歓声がわき上がった。

「性的マイノリティは、制度上も、日常生活でも、はじに追いやられた存在というか、後回しにされるというか。はじっこで生きている感覚があります。でも、今日は、道の真ん中を堂々と歩きたい。そういう気持ちがありました」(廣瀬さん)。

JR福島駅前の繁華街に着いた。折しも日曜日の午後、駅前は歩行者天国になり、商業イベントの真っ最中だった。その中を虹色の旗の群れが進む。道端で見物していた親子連れが手を振る。それに気づいた参加者の一人が、行列から離れて親子に小旗を渡した。小さな子ははにかんだような笑みを浮かべ、それを受け取った。

参加者たちが語り合う。「福島の人って、いい人たちだね!」

岐阜県から参加したVENさんは、これまでに全国津々浦々、100ヶ所以上のレインボーマーチに参加してきた。
「歩行者天国で多くの人が手を振ってくださいました。警察の方もやさしく接してくれました。とても嬉しいですね」

「でもね」とVENさんは語る。ゲイのVENさんは福島にも友人がいる。だが、その人は今回のレインボーマーチのことを知っていても、参加することはできなかった。残念ながら、セクシュアルマイノリティへの差別や偏見がなくなったとは言い切れない現状がある。

「私の友人だけではなく、『一緒に歩きたくても歩けなかった』という人がたくさんいると思います。私はその人たちの分も歩きたいと思っています」とVENさんは語る。

レインボーマーチには岩手や秋田など、東北各県でレインボーマーチを行う団体も参加した。

午後3時、レインボーマーチはゴールの「まちなか広場」に到着した。実行委員長の廣瀬さんはこう語った。
「今日歩くまではとても不安だったんですけど、みんなのパワーに支えられて緊張を吹き飛ばしてもらいました。みんなで一歩を踏み出した。そう思えるマーチでした。町の方も手を振ってくれたりして。私、今までふくしまは生きづらい場所だなと思っていたんですけど、変えていけるんじゃないかな、と今日思えました」

会場にはシンディ・ローパーのTrue Colorsが控えめな音量で流れていた。

You with the sad eyes
Don’t be discouraged

Your true colors
True colors are beautiful
Like a rainbow

あたたかい午後のひとときだった。

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