わたしはこどもたちと話をするのが好きです。たとえばついさっき、こんな話をしました。居間でわたしが本を読み、こどもたちがビデオにとったアニメ『ドラえもん』を見ていたときのことです。
わたし「ジャイアンって、こんな声だったっけ?」
こども「そうだよ。きむらすばるさん、ていう人だよ」
わ「お父さんが見ていたころはたぶん、ちがう人だったんだよな」
こ「だれだった?」
わ「おぼえてないなあ」
こ「なんとなくでいいから、言ってみて」
わ「そうだなあ。ちばがきてつや、とかそんな感じだったな」
こ「ふーん。ちばだてつや、ではなくて?」
インターネットで調べたら、ジャイアンの声優をしていたのは、たてかべ和也さんという方でした。わたしは少しだけかすっていましたかね。こどもは『あしたのジョー』のちばてつやさんのことを小耳にはさんでいたのかもしれません。
テレビでは、きむらすばるさんのジャイアンが、スネオにジャーマンスープレックスをしていました(マネしないでくださいね!)。スネオの「オ」は、「夫」だったかな、「男」だったかな、などと考えていると、こどもが話しかけてきました。
こ「お父さん、さっきの話、おもしろかったよ」
わ「どんな話だった?」
こ「父の日のプレゼントで、のび太がパパに、ぼうけんができるお茶をプレゼントする話だよ」
わ「アドベン茶ア、ってか?」
こ「そうだよ。どうしてわかったの? 聞いてたんでしょ」
わ「聞いてないよ。なんとなく分かるんだよ、藤子不二雄さんの考えることだから」
こ「ふじこふじお、ってだれ?」
わ「まんが家だよ」
こ「ふーん。それはいいとして、ことのわか、って知ってる?」
わ「琴ノ若ね。知ってるよ。古いこと話すね」
こ「古くないよ。いま、人気の人だよ」
わ「新しい琴ノ若がいるんだな。まわしの色は?」
こ「水色と青色がまざったような色だよ」
わ「マーブルなまわしか?」
こ「ちがうよ。水色と青色がまざった『ような』色だよ」
わ「そうか。お父さんが知っている琴ノ若は、えんじ色のまわしをしめていたと思うよ」
こ「ふーん。そうなんだ。好きだった?」
わ「まあまあね」
わたしはこどもたちとこんな話をするのが好きです。「父の日」と設定されているきょうではなく、他愛のない会話を積み重ねていく日々を愛おしく思っています。
こどもたちはいま、わたしに「内緒で」手紙を書いてくれているようです。手紙には、えんじ色のまわしをしめたお相撲さんの絵が、書いてあるかもしれません。
わたしもそのうち、自分の父に手紙を書かなければと思います。手紙を書いてくれる人、送れる人がいることが、当たり前のことではないことを、かみしめながら。
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