福島県でPCR検査を受けられなかった人たち

 先日、福島県内のPCR検査体制の「稼働率」について書きました。4月の1カ月間で、稼働率が50%未満の日は、合計19日間もありました。

 県の担当者は「必要な検査は実施している」と言います。

 しかし、本当にそうでしょうか? 

 コロナに似た症状で苦しんでいたのに、検査を受けられなかったと嘆く福島県在住の人を紹介します。

発熱・倦怠感・胸の痛み でも検査せず

 福島県内に住む20代女性は、3月末に37度台後半の熱が出た。倦怠感が強く、胸の痛みや息苦しさも感じた。

 わたし、コロナかもしれない…。

 症状が4日以上続いたため、4月上旬、女性は保健所に電話した。

   保健所の職員「渡航歴や首都圏に外出する機会はありましたか?」

   女性「ありません」

   保健所「では、一般の病院を受診して大丈夫ですよ」

   女性「……」

 女性が受診をためらったのは、もし自分の体内にウイルスがいたら、病院内に感染を広げてしまうかもしれないからだ。だが、保健所に「一般の病院を受診して」と言われた以上、やむを得ない。

 家族に運転してもらい、事前に電話したうえで近くの病院を受診した。診てくれた医師は血液検査を行ったうえで、こう話した。

   医師「今のところ肺炎の所見はありませんが、気管支炎の症状があります。

      現段階ではコロナであるとも、ないとも、言えません」 

 女性は不安が高まってきた。幼い子どもや高齢者と一緒に住んでいる。感染させてしまったら大変なことになる。コロナかどうか、はっきりさせたかった。

   女性「PCR検査をしてもらえないでしょうか?」

   医師「今は判断できません。解熱剤を出しますので、治らなかったらまた来てください」

   女性「……」

病院と保健所の間を堂々巡り

 帰宅後も症状はおさまらなかった。翌日も同じ病院を再受診したが、かぜ薬を処方されて帰された。帰国者・接触者相談センターや保健所に何度も相談したが、「病院を受診して」と言われるだけ。胸の痛みは徐々に強くなるようだった。

 数日後、女性は地域の総合病院を受診した。レントゲンなどの検査を受けたが、それでも結果は同じだった。

   医師「肺炎像は確認できませんが、結構重い気管支炎になっています」

   女性「コロナウイルスの可能性はないんですか?」

   医師「可能性は否定できません。 

      でも、うちの病院でしたくても、検査できるものではないんです」

   女性「でも、まわりに感染させる可能性を考えると不安です」

   医師「マスクをして、外から出ないでください」

   女性「重症化はしないんですか?」

   医師「呼吸困難になったら、すぐ救急車を呼んでください」

結局、この日受診した総合病院の医師も、PCR検査を保健所に要請してくれなかった。

 保健所に相談しても「病院を受診して」の一点張り。指示に従って病院を受診しても、医師はコロナを疑いつつも、保健所に検査を促してはくれない。女性は憤る。

「保健所と病院の堂々巡りです。どちらも責任をもって検査の必要性を判断してくれず、症状は続くのに何日経っても検査を受けられませんでした」

「家庭内感染」への不安、回復後もモヤモヤ

 女性は検査をあきらめて自宅療養を続けた。

 療養中、自らの症状に加えてつらかったのが「家庭内感染」への不安だった。

 自分だけ食事の時間を分け、別の部屋で寝た。まだ幼い子どもの世話は、仕事を休んだ自営業の夫に代わってもらった。

「精神的にとてもつらかったですね。子どもと接することはできないし、主人には悪いなと思うし。でも、いつ治るのか、本当に治るのか、まったく分からなくて……」

 3週間ほど倦怠感や胸の痛みに苦しんだ末、4月下旬になってようやく症状がおさまってきたという。

 だが、回復した今も、「感染していたのでは」という疑いは消えていない。

 4月末に私の取材に応じてくれた女性は、こう語った。

「肝心のPCR検査を受けられなかったので、コロナに感染していたのか、いなかったのか今もモヤモヤしているんです。仮に感染していたとして、私は重症化せずに治ったからよかったのですが、家族や周りの人にうつしてしまった心配が残ります。現時点ではみんな元気ですが、不安は続きます」

保健所が断った後に感染が判明した例も

 紹介した「20代女性」は結局、コロナに感染していたのか分からずじまいです。体調は幸いにも回復しましたが、検査を受けられなかったことで本人や家族の不安は続いています。このことは深刻に考えるべきです。

 本人や医師がPCR検査を求めたにもかかわらず、保健所が断り、その後、感染が判明した例も、福島県内にはあります。

 福島市内の一陽会病院では、入院中の30代女性の発熱が続き、肺炎の所見が見つかったため、担当医が福島市の保健所に相談しました。しかし、医師が感染を疑ったにもかかわらず、保健所側はいったん検査を断りました。

 同じ日に病院側が再び検査を依頼したため、ようやく検査が実施されました。

 結果は陽性でした。

 保健所の対応について、福島市の木幡浩市長は記者会見で、「医師の判断を尊重して検査すべき事案だった」と反省を述べています。

 田村市立大越中の60代男性教諭が感染した例も、検査までに時間がかかりました。

 田村市教委によると、男性は4月9日に発熱などの症状が出ました。同じ日、男性の妻が勤める福島県本宮市の保健福祉施設「えぽか」で、職員の新型コロナ感染が判明します。

 自らの感染を心配した男性は、保健所にPCR検査を求めました。しかし、2日後の4月11日に熱が下がったためもあるのか、男性の検査依頼は保健所に2度も断られました。

 3度目の依頼でようやく検査が実施され、陽性が確認されたのは、最初の発熱から10日以上経過した4月20日のことでした。男性の妻も感染していました。

PCR検査の徹底を

 5月16日現在、福島県内で判明している新規感染者数は合計81人です。

 4月下旬以降、1日の新規感染者数は0~3人で推移しており、5月9日以降は「感染者ゼロ」が続いています。

 しかし、4月末の新規感染者の中には感染経路が分かっていない人もいます。依然として水面下では市中感染が広がっている可能性もあると、私は考えています。

 少し新規感染者数が減っている今こそ、徹底してPCR検査を行い、新規感染者をどんどん掘り起こしていく。そうした取り組みが必要だと思います。

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