沖縄で行われようとしている「不道徳」について

報道

4月28日はなんの日でしょうか。

69年前(1952年)の4月28日は、「サンフランシスコ講和条約」が発効した日です。第二次世界大戦に負けた日本は、これによって主権国家としての独立を回復したと言われています。なので4月28日を「主権回復記念日」と言う人がいます。

しかし、沖縄などの地域には180度違った受け止め方をしている人たちがいます。「サンフランシスコ」では、いわゆる日本の「本土」の主権は回復したものの、沖縄、奄美諸島、小笠原諸島はなお、米国の統治下に置かれることになったからです。その地域の方々の中には、4月28日を「屈辱の日」と捉えている人もたくさんいます。

その「屈辱」は70年近くたった今も続いているのではないでしょうか。在日米軍基地の7割が沖縄県内に密集している現状を考えれば、それは当然というべきでしょう。

そして今、沖縄の人々の「屈辱」の傷をさらにえぐるような事態が起こっています。ある市民団体が4月27日に開いたオンライン記者会見に参加しましたので、その内容を報告します。

辺野古基地工事のための土砂はどこから来るのか?

この市民団体とは、「遺骨で基地を作るな!緊急アクション」です。

呼びかけ人(代表)は、米イエール大の学生、西尾慧吾さん。オンライン会見には大阪から参加していました。

この団体は何をうったえているのか。

いま、沖縄の辺野古沿岸部に新しい米軍基地が作られようとしています。基地を作ろうとしているのは日本政府です。ジュゴンがすむ美しい海を大量の土砂で埋めたて、基地を作ろうとしています。

辺野古新基地建設そのものが大問題なのですが、政府が強行しようとしている基地建設のプロセスに、人道的に考えて許しがたい問題があるのです。

日本政府はこれまで、沖縄本島の北部や沖縄県外から持ってきた土砂でこの埋め立て工事をする計画でしたが、新たに沖縄本島南部(糸満市と八重瀬町)の土砂を使おうとしています。

本島南部の土砂を使うことがなぜ「人道的に許しがたい問題」なのか。

それは、この地域にまだ、沖縄戦の戦没者の遺骨が残っている可能性が高いからです。

1945年春、米軍が沖縄本島に上陸しました。沖縄の人々は米軍の戦火を逃れるため、南へ、南へと逃げていきました。その結果、多くの方が本島南部で亡くなりました。追い詰められた末、集団自決を余儀なくされた人たちもおり、沖縄戦の戦没者は20万人を超えるとも言われています。

この本島南部の土地に戦没者の遺骨が残っていることは周知の事実で、政府は遺骨を拾い集める事業も行っています。にもかかわらず、その土砂を掘り起こし、辺野古新基地建設に使おうとしているのです。

記者会見を聞いていたウネリウネラは、あまりの不道徳にあぜんとしてしまいました。

呼びかけ人の西尾さんは記者会見でこう話しました。

「つい最近も、DNA鑑定で身元が特定され、北海道にいる遺族にご遺骨が返還されたというニュースがありました。現在の科学技術もあいまってみなさんの努力が実ったかたちです。骨ひとかけらだけでも返してほしいと思っている遺族のもとに実際に返せるところまできています。だからこそ、遺骨がしみこんだ土を海に投げ捨てるなどという事業は今すぐ止めないといけないと思っています。」

「沖縄では、4月28日は『屈辱の日』です。だからこの日は、日本と沖縄との関係をもう一度考え直す日にすべきだと思いますし、これ以上沖縄の方々に屈辱を覚えさせないために、行動を起こさなければいけない日です。」

金武さんの現地レポートも

また、このオンライン記者会見では、沖縄県宜野湾市出身の金武美加代さんが、土砂が掘り出されようとしている糸満市の熊野鉱山から現地レポートをしました。金武さんは、本島南部の土砂利用に抗議して、3月に首相官邸前でハンガーストライキを実行しています。

金武さんは見晴らしの良い土地に立ち、このように言いました。

「ここでは2体のお骨が見つかったそうです。私自身、今も骨を踏んでしまっているかもしれません。そんな中でユンボ(パワーショベル)で掘り返した土の中から、遺骨があって分かる(気づく)と思います? 分かんないですよ。」

政府は米軍基地をつくるために、戦没者の遺骨を辺野古の海に沈めてしまおうと考えているのでしょうか。だとしたら、これ以上の死者への冒涜は考えられません。

金武さんが少し歩くと、そこには「アブ」がありました。アブとは、土地の人の言葉で「縦穴」のことだそうです。「ガマ」が横穴なのに対し、縦穴がアブ。沖縄戦のとき、こうしたアブの中に逃げ込んだ人たちがいたそうです。

アブから視線をあげた金武さんが語ります。

「この先、すぐそこに見えるのが、『魂魄の塔』です」

魂魄の塔とは、沖縄戦が終わって間もない1946年2月、住民たちが近くに散らばっていた遺骨を集めて作った慰霊碑だそうです。

まだ、たくさんの方々の遺骨が眠っているこの場所から、政府は、基地建設に使う土砂を掘り出そうとしている……。言葉も出ませんでした。

福島と重なるものがある

沖縄の基地問題は福島の原発をめぐる諸問題につながるものがある――。特にこの土砂をめぐる問題は、原発汚染水の問題とも重なると感じました。

汚染水は本当に「きれいに」処理できるのでしょうか?

「きれいに」処理できるのだとしたら、なぜ福島の海から流さなければいけないのでしょうか?

なぜ、これ以上、福島の人ばかりが我慢しなければならないのでしょうか?

記者会見の最後に質疑応答の時間があったので、ウネリウネラは西尾さん、金武さんが福島についてどんなことを考えているか、伺いました。お二人のご回答を紹介したいと思います。

金武さん

「蟻塚亮二さん(※)は、『沖縄戦のPTSDは次世代につながる。福島の原発事故も、子どもたちや女性、弱い人に向かい、それが連鎖しないか』と指摘しています。そういう負の連鎖が、沖縄だけでなく原発事故でも起きてしまうかもしれない。沖縄と福島には深いつながりがあると、私は思っています。」

※蟻塚亮二氏=精神科医。『沖縄戦と心の傷』『3・11と心の災害』などの著書がある。

西尾さん

「特定の地域に構造的な犠牲を押し付けて、その状態を変えようとしない。その状態で、『経済』と、本来は憲法で保障されるべき『平和的生存権』とを、トレードオフの関係(どちらか一方を取ればもう片方を失うという関係)にされるという、憲法違反な状態に追い込まれている。その意味で福島と沖縄はまさに一緒かなと思っています。私は大阪に暮らしていて、基地を押し付けている側でもあるし、電気を使いまくっておいて原発を押し付けている側でもあります。まず、そういう私のような人間が、当事者意識を持って動かなければならない問題なんだろうと思っています」

関心をもった方は、ぜひ「アクション」を

日本全体で抱えるべき、考えるべき問題を、特定の地域の人びとにだけ背負わせていいのか。福島も沖縄も問題の根っこは同じであり、行動を起こさないかぎり何も変わらない。オンライン記者会見では、そのようなことを学びました。

この問題に関心を持った方は、ぜひ、「遺骨で基地を作るな!緊急アクション」のウェブサイトをご覧ください。

遺骨で基地を作るな!緊急アクション! (peraichi.com)

「緊急アクション」は、「屈辱の日」である4月28日に合わせて8つの行動(アクション)を起こしませんか、と提案しています。ウネリウネラもできることはやってみたいと思います。


※この文章を書くにあたっては、以下の記事を参照しました。

遺骨眠る土を基地に使うな 官邸前でハンスト中 沖縄の女性が辺野古新基地計画に抗議:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

辺野古に沖縄戦の遺骨残る土砂使う計画 憤る遺骨収集ボランティア 「非人道的。本土の人も知ってほしい」:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

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