先日、「福島の歌人・俳人たち」というブログ記事を書きました。
その中で紹介した歌人齋藤芳生さんについて、朝日新聞福島版で記事を書きました。
写真は、福島市内の阿武隈川にかかる「天神橋」という橋のたもとで撮影しました。モノクロでわかりませんが、ぬけるような青空の日でした。ヨシキリの鳴き声が聞こえ、菜の花やシロツメクサのあいだをハナアブが飛び回っていました。
このあたりは齋藤さんの散歩ルートだと言います。川の流れや河川敷の草花に目を配りながら、長い日は数時間歩くとのこと。この「川辺歩き」からさわやかな歌がいくつも生まれていることは、先日も書きました。
「『水』というのは、私の中で大切かなと思います。特に川の流れですね。きれいなものも汚いものも、一緒になって海に注いでいく。そういうのがいいなと、私は思います」
撮影中も印象深い話を聞かせてくれました。
印象に残ったことをもう一つだけ。齋藤さんは現在、福島市内の学習塾で子どもたちを教えていますが、この生活がとても楽しそうなのです。第三歌集『花の渦』には、子どもたちの生き生きとした姿と自分の感性との化学反応を楽しんでいるような歌が、たくさん見つかります。
あ、まちがえた、とつぶやく子どもの鼻濁音嬉しくてぽんと咲く木瓜の花
てわすらを叱れどもてわすらは大事 春の子どもがもの思うとき
(てわすら=手遊び。消しゴムかすを丸めたり、シャープペンシルを分解したり。)
齋藤さんは三十代のころ、福島→中東→東京→福島と、居を転々としてきました。人生を模索していたのだと思います。第二歌集『湖水の南』まではそうした気持ちの揺れが歌に込められていますが、『花の渦』はもっとどっしりと、心の居場所が定まり、地に足がついた印象です。充実した日々の中で、これまで以上の秀歌が生まれる予感があります。
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