福島県は、首都圏の国家公務員宿舎で暮らしてきた避難者に対して、宿舎からの立ち退きを求める裁判を起こしています。住民側が「原告」となって行政に裁判を起こすのではなく、県が「原告」となり、避難者を「被告」として訴えるという「あべこべ裁判」です。
県に訴えられてしまった被告(=避難者)を支援する市民団体「原発避難者の住宅追い出しを許さない会」のメンバーはきょう5月13日から、福島県内でこの問題をアピールするための「福島キャラバン行動」を始めました。その狙いとは――(ウネリウネラ・牧内昇平)
避難者の住宅問題を福島県庁前でアピール
「県民の声を聞いてください。住宅追い出しは許されません。反対します!」
小雨が降る午後5時過ぎ、「許さない会」のメンバーたちは福島県庁前で裁判の内容を伝えるチラシを配りました。許さない会事務局の小林和博さんがマイクを握りました。
「福島県にはぜひ、この裁判を取り下げて、避難者の住まいの確保をしてほしいと思います!」
原発事故が起きた後、福島県内では、福島市や郡山市など避難指示区域以外のところから避難した人もたくさんいました。避難指示が出ていなくても放射線量は高かったのですから、避難する人がいるのは当たり前です。そうした避難指示区域外からの避難者に対しても、当初は公営住宅などが避難先として提供されてきました。
ところが2017年3月末、福島県は、避難指示区域以外のところから避難した人に対しての住宅無償提供を打ち切りました。一方的に打ち切られても転居先がない人もいます。そうした人たちのうち、東京都にある国家公務員宿舎に住む避難者が福島県から訴えられたのが「あべこべ裁判」です。
この裁判は福島地裁で行われていますが、実は県内ではそれほど知られていません。その理由は地元メディアがほとんど報じないからです。2020年3月の提訴以来すでに6回も裁判が開かれていますが、たとえば地元紙である福島民報は一回も報じていないのではないでしょうか?
このため、県内にはこの裁判が起きていることを知らない人も多いことでしょう。そうした中で、支援・共感の輪を広げるための活動が、今回のキャラバン行動です。
住まいの権利の侵害は許されない
子ども・被災者支援法の条文をかいつまむと、こういうことが書いてあります。
《国は、避難指示区域外から避難した人に対しても、生活の支援や住宅の確保、子どもの学習の支援などの施策を講じる責任がある》
「あべこべ裁判」はこの法律に違反しているのではないかと、ウネリウネラは考えています。
たとえどんな事情であっても、住むところを奪うというのは大変な行為です。しかもそもそも原発事故のせいで避難せざるを得なくなったという事情を考えれば、福島県にはもっとすべきことがあるはずです。
「原発避難者の住宅追い出しを許さない会」の福島キャラバン行動は今月15日までです。14日以降の予定は以下です。
14日14時~15時 南相馬市・原ノ町駅前スタンディング
15日10時~11時半 福島駅前宣伝行動
14時~15時 郡山駅西口(ヨドバシカメラ前)宣伝行動
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